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10年人材業界で働いたおじさんが見ている転職エージェントという世界とか、技術とか。


今回は10年間人材業界で働いて見えてきた世界やら、技術やら、感じた事やらを色々と書いてみようと思う。まとまりのない文章で申し訳ないが、今の私はどうぶつの森に心を奪われている。

あと1カ月ぐらいしたら飽きるので、その時はまたNOTEとも真剣に向き合えると思う....(多分)



歪み・偏りとの先にあるもの

若いころは振り切った正義が好きだった。バランス=中途半端という感覚があったのだろう。転職エージェントは仲介業であるにも関わらず、振り切って仕事をしていた。あの頃は若かった...


求職者に寄り添えば企業の負担が増え、企業に寄り添えば求職者の負担が増える。バランスを失った関係は歪みを生み出す。小さな歪みの連続が世界の歪みになっていく。


企業の人に関する問題の多くは、自分が生み出した歪みによって生まれている事に気付く。同時に自分の生み出した歪みが、世界の混沌となり新しいビジネスが生まれていることもわかってきた。私の仕事に価値はなく、世界の問題を大きくしているだけなんだと凹んだ。



複雑化した社会をシンプルにするために真ん中でいよう


歪み・偏りの先にあったものは「真ん中」という答えだった。しかし転職エージェントも人間だから感情がある。人事に感情移入して企業へと寄り添い、求職者に感情移入して求職者へ寄り添い、何度もブレた。真ん中でいようと意識を変えても、どちらかに寄り添い過ぎてしまう。意識だけで真ん中に立ち続けることは難しい。


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真ん中であるために

真ん中でいようとする意識だけで自分を抑え込むことは難しい。ギリシャ神話にでてくるオデュセウスの行動には、なるほどなと納得させられる。

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ギリシャ神話 セイレーン

半身女性で、半身が鳥(のちに魚)の三人の姉妹。鳥の翼を持ち、美しい歌声で船乗りたちを魅了する。この歌声を聞いた船乗りは、岩に船を衝突させてしまう。

オデュセウスはこのことを、魔女キルケから警告されていた。オデュセウスはともの水夫たちの耳に蝋を詰めて、歌声が聞こえないようにした。そして、自らは、身体をマストに縛り付けた。オデュッセウスはセイレンたちの美しい姿と歌声が聞こえるとたまらなくなり、マストを引き抜き海に飛び込んでしまいそうになった。幸い仲間が彼を押さえつけてくれたので、無事、その海域を通過することができた。


自分自身を真ん中に置くためには「経験・意識」だけでは不十分だと私は考える。技術と技術熟練度があってこそ真ん中に辿り着ける。技術は素晴らしい。熟練度が高まるほど自分が真ん中に寄っていくのを実感できる。




転職エージェントの現状

転職エージェントは仕事を分解していくと様々な知識・技術が必要になってくることがわかる。人材業界の残念なところは「技術」のある人間が1%もいないことだ。技術のない人間が組織のトップになり、仕組みをゴリゴリまわすだけの組織をつくってしまうことが問題の本質だったりする。

戦略・業務効率しか考えられない部長が生み出す組織

・離職率が高くなり、退職理由がキャリアへの不安・会社への不信感。
(それでも部長は、一定の退職はしょうがないことなんだ。むしろ健全なんだと退職理由の重さに気付けない)

・顧客からの評判が悪くなる。

・登録単価が上がる、登録の質が下がっていく。
(レッドオーションだからとか、特化型が強いですからね~などと言い訳をしてしまう。問題の本質はあなたがつくってるサービスの質です)

・採用で優秀な人材が承諾しなくなる。または採用してもすぐに辞めてしまう。年収・福利厚生に動機づけられている人だけが社内に残る。


業務効率だけに特化した人材会社で働く人材の働き方は下記の通りだ。

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これは「技術」と呼べるような代物ではなく、「人を手っ取り早く承諾させる」ための業務効率手法である。これを機械的に繰り返すだけの毎日なので、こんなサービスは1日でもはやくAIに代替えされてしまった方が良い。

企業が業務効率を追求する事は悪じゃない。本当に悪なのは、業務効率特化の会社が「転職者のために」と感情に訴えかけている事である。今すぐに広告のキャッチコピーを「手っ取り早く内定が欲しいあなたへ」と変更してほしい。あとは人を採用する時に「私たちは手っ取り早く内定をとらせることで社会貢献する会社です」と表現したほうがいい。

ブランディングという聞こえのいい言葉で、思想と事業のギャップをごまかそうとするから問題が大きくなっている事にそろそろ気づいた方がいい。



一方でビジョンを大切にするエージェントが良いかと言われれば、そんなことはない。

技術しか考えられない部長が生み出す組織

・部長のレベルが低くコーチング技術だけで満足してしまうケースが多い。思想に技術力が伴わない企業はヒステリックな宗教団体になる。

・理想論ばかりになってしまい、業務効率の強度が低くなる

・企業・求職者のどちらかに偏った世界観をつくりだす。結果として世の中に面倒くさいやつを増やしていることに気付けない。

・私は毎日仕事をしていて幸せです!! みたいな文章をSNSで何度もつぶやくメンバーが多くなる。

・個別最適の視点しかない短絡的思考の人材ばかりが組織の中に増える。全体最適の視点にアレルギー反応を見せる。


これは肌感覚だが、ビジョンや思想だけで満足してしまっている会社が7割程度、コーチング技術だけで満足してしまっている会社が2割程度という感じだ。それでも色の濃い世界観を確立してしまえば、技術が無くても消費者は満足するのでそれはそれでいいのかもしれない。

だけどこんなブランディングだけがお上手な企業が増えれば、必然と人材業界全体のパイは小さくなっていく。それはなんとか避けたい。




技術とは何か

人材業界における技術とは「クライアントの在りたい姿」と「現状」のギャップを埋めるために必要な「何か」である。

クライアントの中には「在りたい姿」が見えない人もいるし、現状を把握できていない人もいる。「在りたい姿」を明確にする技術も必要なら、現状の立ち位置を明確にする技術・ネクストステップを明確にする技術も必要不可欠である。絶対解がなくても自分なりの答えをだし、問題を発見し、改善を繰り返していく。


求職者様の在りたい姿を明確にする技術

転職エージェントを長年やっているとわかるのは、「人は自分と真逆の人間に憧れを持った結果、自分ではない人間になろうとして中途半端になる」ということだ。

人の目利きができるようになり、経営理解が深まると、求職者がどのような状態になれば成功するのかぼんやりと見えてくる。まだ求職者が見えていない、成功パターンのイメージを共有して議論する。「あるべき姿」が明確になってから、チューニング業務をスタートするのが私たちの役割だ。

成功パターン


チューニング



経営理解

経営理解といっても、私は学者ではないので限界がある。だからといって勉強しない理由にはならないので最低限のポイントは抑えておこう。


経営理解

「人・モノ・金・情報」の視点、「広報・広告・ブランディング」などの視点なども入れたかったのだが、図がゴチャゴチャしてわかりにくくなるので省略しています。


まあこの分野に関しては正直10年経ってもわからないことだらけである。それでも経営を理解するための努力は10年間継続してきた。この努力があるからこそ、求職者には見えない成功パターンが見えるようになる。これを付加価値として提供するのが仲介業の使命である。

すぐに凄いエージェントになることはできない。物事の「考え方・捉え方」だけで勝負するのは詐欺師のやることだ。「積み重ねてきたもの」と「考え方・捉え方」を組み合わせるのがプロフェッショナルである。




市場理解

需要と供給のバランスによって価値が決まるので、シンプルに世の中のどんな仕事に需要が生まれているのか? 供給が足りていないのはどういった人材なのか?を考えていくことが必要だ。



人の目利き

私は人の目利きを、「能力」「人間性」「価値観」の3分類に絞り込んでいる。能力の定義の中に「経験」「知識」「専門性」なども含めている。

分析


能力に対する考え方・整理手法は色々あるが、個人的にはこの本が好きだ。
(どうでもいいだろうが...)

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具体的な目利きの手法について、全て記載しようと思うとかなりの長文になってしまうのでいくつかのポイントだけ紹介させてください。


目利きポイント① 線ではなく点を明確にする

相手を見極める際のポイントとして、行動の「Before」「After」を確認し、深堀をしていくコンピテンシー面接は基礎中の基礎である。しかしこの基礎をおろそかにする人が意外と多く、前提条件をきちんと確認しない。


素人は線を確認して、深堀をする。

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プロは点の情景を明確にした上で深堀をする。

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図に記載してる点の繋がりはあくまでもサンプルだが、この話を聞く時に「この部分を鮮明にしておかないと正しく評価ができない」というポイントをきちんと抑えるのが重要である。


目利きのポイント② 人の性格と線を繋げる

線をそのまま評価するのではなく、相手の性格・人間性と照らし合わせながら考えると発見が生まれやすい。性格とは行動パターンと定義している。

私は行動パターンを現在3つの理論で分類・言語化している。

①MBTI
②ビッグファイブ
③ストレングスファインダー

通常は1~10分程度で終わる性格診断テストのようなものを受けてもらって分類するのだが、面談に慣れてくるとテストをさせなくても1時間程度会話をすれば相手の分類がわかるようになってくる。この精度を「なんとなくここらへん」というレベルから、「明確にここ」という精度まで高めていく事を私は技術と定義している。そのためにどういった質問が効果的なのか、相手のどの部分に注目するべきなのかを勉強する。FBIのプロファイリング、人間のしぐさ・行動分析学などの著書は沢山の発見があるのでオススメだ。



目利きのポイント③ 退職理由ヒアリングによる見極め

退職理由のヒアリングをする際にエージェントは、退職に繋がる事象をヒアリングした後に、下記のような返答パターンになることがほとんど。

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アドバイスパターン①
転職を煽りたいから、共感して感情を増幅させるための言葉。

アドバイスパターン②
相手を転職できる状態にするため、気合いと根性を植え付けようとしているだけ。

こんなアドバイスで求職者の中に「本当の気づき」が生まれるはずもないし、相手を見極める事も出来ない。


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事象を正しく判断するために必要な視点を与えて、一緒に考えてあげる事が大事になってくる。1つの視点だけで事象を判断するような極論に陥らない様にお手伝いをする。



この時の反応で、相手が「自分視点だけしか受け入れられない人」なのか、「組織論を受け入れた上で事象を検討できる人」なのかを判断できる。これは人を見極めるのに重要な視点だ。



目利きのポイント④

私は人の「生き方・生きるの配置方法」を見極めるのが好きです。


生き方主義者
生き方だけを考えて仕事と向き合おうとする人。

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生きることに必死

生き方を語る人種は甘いと思ってる。現実とトコトン向き合う。

目利き



バランスX

生きる事と生き方を右と左に置いてバランスをとる人。

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バランスY

生きる事と生き方を上下で考える人

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求職者の抱える問題の多くが、この生き方と生きるの配置パターンから生まれている事が見えてくるとアドバイスの精度が大幅に上昇する。



文字数が気づいたら4000を超えていたので、今回はここらへんで終わりにしようと思う。そろそろどうぶつの森をプレイさせてください。


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あ~癒される。

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今後は「地頭の要素分解」記事の続編として、行動力、ストレス耐性の要素分解。20代で役に立ったスキルやフレームワークなど、限定記事を10本書きますので楽しみにしていてください♪

考え方、フレームワーク、知識など、自分が20代のうちに知っておいてよかったなと思う事をまとめています。

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