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知財部がIPランドスケープを推進すべき四つの理由

はじめまして!VALUENEXの新井です。

今回はVALUENEXが提供するSaaSツールの主要なクライアントである、事業会社の知的財産部(知財部)とIPランドスケープについて書きます。

知財部って?

早速ですが、皆さんは知財部と聞いてどのような印象を持ちますか。

漠然としたイメージで法律を扱っている、自身が研究開発者で特許出願の際にお世話になっている或いは広報宣伝やブランディング担当の方であれば商標の相談をした経験があるかもしれません。
私自身、新卒で入社した企業の配属先が知財部でしたが、当時は研究所と開発部門の特許出願・権利化業務に追われて、自部門を俯瞰して考えることができませんでした。
ざっくりとですが、知財部とはその企業の特許、意匠、商標等の知的財産権の権利化や保護を通じて、企業が事業推進する上での知財上のリスクや損失が起こらないようにしている部門です。
そして多くの知財部では活動の中心が特許に関わる業務であり、大抵は7割ほどの方が特許出願・権利化・活用業務に携わっています。

知財部とIPランドスケープ

私自身、現在はVALUENEXで知財部をクライアントとし、彼らの目下の関心事である知財情報の活用、所謂IPランドスケープを実現する為の支援について日々考えています。
知財情報の活用そのものは新しい概念ではありませんが、数年前にIPランドスケープという言葉も作られて、業界全体として本格的に推進していこうという気概が見られる近年の動きは従来なかったものと思います。
また、最近ではコーポレートガバナンスコードに知財に関する文言が加わったことも相まって、より強力にこの概念を推進する動きが見られます。
IPランドスケープという言葉の捉え方は様々かと思いますが、知財情報を事業に活用していくという概念自体は流行り廃りのない本質的な考え方なので、各社今後も遅かれ早かれ検討が進むのではないでしょうか。

IPランドスケープにも様々な解釈がありますが、ここでは、

「経営戦略又は事業戦略の立案に際し、経営・事業情報に知財情報を組み込んだ分析を実施し、その分析結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること」

令和2年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書より抜粋

とした場合、私は知財部がIPランドスケープ推進に最も適した部門であると信じています。
理由は四つほどありまして、以下にまとめてみました。

理由1:知財部員の思考回路

通常、知財部配属後は研修を通じて特許法や発明抽出の方法を学びます。
最初に下地を作り、その後は特許の出願権利化担当者であれば特許法というルールの中で自社の発明をできる限り強く広く保護するための思考を養っていきます。
言うが易しですが、これを高いレベルで実現する為には特許法の正しい解釈、周辺技術の把握、更には技術の抽象化を通じて発明を認定するスキルが求められます。
経営や事業も社会動向や法規制といった外的要因を考慮し、都度自社の立ち位置を俯瞰した上で進むべき方向性を明確化していくという点で、類似した活動を技術単位で行っている知財部はIPランドスケープを推進する素養があるのではないでしょうか。

理由2:知財部の守備範囲

自社の全研究開発部隊とつながっているのが知財部の特徴です。
よって部門内のメンバーで自社の技術全域を議論、分析することができます。
IPランドスケープ推進にあたり技術俯瞰から始める企業が多い中、知財部は部門内でその活動をスタートできるということがポイントです。
IPランドスケープでよく活用する特許情報に馴染みがあり独自の言い回しなどにも慣れている点も強みになります。

理由3:知財部の社内位置付け

知財部は組織上、研究開発本部付の場合が多いと思います。
この場合、レポート先は技術を管掌するCTO相当のアッパーマネジメントであり、その方に知財部がIPランドスケープを実施する意義を理解してもらえれば、一気に全社的な活動として波及する可能性があります。
また、知財部は部門の役割上、売上に直結しない施策も提言しやすい環境下にあり、IPランドスケープのような中長期にわたる活動を実施する上でも好環境です。

理由4:知財部内の組織

実はこれが一番重要だと考えていますが、一定規模の知財を保有する企業の知財部であれば調査を担当する専任チームがあります(更に規模が大きいと分社化して知財子会社を設けている場合もあり)。
調査チームでは先行技術調査、無効資料調査やクリアランス調査といった従来の知財部が請け負う特許調査に加えて、研究開発から依頼があるより広範な技術調査を行うこともあります。
調査という観点では、他に経営企画や技術企画などの企画系部門も実施しますが、これら部門は調査専任のチームを抱えていることが稀かと思います。
繁忙期の合間を縫って必要な情報収集を行っている部門ではIPランドスケープとの浸透さえ難しい可能性がありますが、すでに調査専任チームがある知財部であれば上手くリソースを配分すれば前向きな取組として受け入れやすいのではないでしょうか。

おわりに

いかがでしょうか。皆さんに少しでも共感頂けたら嬉しいです。
現実には知財部もIPランドスケープを推進する上で様々な課題があるかと思いますが、社外から支援する立場としては知財部の皆さんには現在の状況をポジティブに捉えて頂き、ぜひとも自社や社会を変えていってほしいです。その変革の支援を私たちVALUENEXもさせていただきます。

そして知財部と自社事業を盛り上げたいな、と少しでも思って頂けた皆さんはぜひ近くの知財部員に声をかけて将来を語り合いましょう!

お読み頂きありがとうございました。

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