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’80年代の完全終焉と’20年代の豊かさ、日本経済:その3 経済成長は国土の開発のみにより実現する(:マックスベーバー風に。)。

 マックスベーバーの『プロテスタンティズムと資本主義の精神』には資本主義とは英国、中北欧と北アメリカのキリスト新教(いわゆるプロテスタント)圏のみに実現したという行があります。
 当著は別に宗教社会学ではなく政治経済社会学なので資本主義が旧教であれ新教であれキリスト教に由来するというのではなくキリスト新教圏の古来の土地柄や地政が近代初期に偶発的に資本主義の導入と発展に有利になったということを述べているのかと思われます。
 当地のような今逸りのロシアの程には酷くない寒冷地は暖房のための燃料や燃料に由来する電力の供給が至上命題になるためその生産手段を必要とし、それをロシアの程には酷くない(るっさいか?)環境において効率的に運営することが可能です。
 暖房は冷房より悠に歴史が古く、現代は冷房の普及により温暖地においても資本経済の発展と継続が可能になっていますが当時は公共のエネルギーの供給による暖房を普及させ得た寒冷の当地が資本経済の先駆けとなった訳です。
 キリスト教の信仰箇条や典礼が簡素化されたりインターネットが普及したりということも寒冷地に特有の効率主義(効率主義というものはそれだけではなく様々だが、)からのことでしょう。
 寒い会堂で葡萄酒の杯をやっていたら手が志村婆さんのようになってしまいます。礼拝式の小一時間のために薪を焚べて暖房することは非効率なので皆が厚着をして参列して暖房なしで讃美歌をがんがん歌って暖まりましょうという感じです。当時のカトリック教会には会衆が聖歌を歌うことはなく、さほど寒くもない地域が多いので聖堂に厚着で赴くこともあまりなく、偶に寒くても小一時間くらいは我慢すれば功徳になるという感じだったでしょう。

 燃料を調達する、製品にして販売する、供給路を保つなどの生産活動を行うためには国土の開発が必要になります。
 農業の比重の少ない寒冷地はその余地が大きく、大規模の開発が可能になりました。
 日本は主食とされる米の産地が寒冷地に多いことからかそのことがあまり気づかれていないようですが日本も寒冷地における米などの農業が発展したのは戦後からです。それを機に日本はむしろ商工業が西洋とは逆に南高北低に発展しています(特に戦後は冷房があるからでもあります。)。

 よく国内需要や国民消費の拡大や低迷ということがいわれますが需要と消費が大きく増すこともまた国土の開発が大規模に行われている時のみに生じます。それがない時に内需の拡大や消費の換気、景気の刺激などといってもあり得ず、経済成長はありません。
 いわば経済成長は発展途上国にしかない現象です。
 人間の胃袋や肌には限りがあるので目一杯に贅沢をしても経済成長には全く結びつきません。逆に余程に粗末な暮らしをしていれば経済が衰退することもあり得ますがそうなると国土も粗末になるので開発をやり直すしかありません。
 日本がこれから経済成長を望むなら、粗末な暮らしで粗末になってしまっている国土の開発のし直しに加え、未開発の余地を新たに開発することを要します。
 令和の所得倍増の前に、先ずは令和の列島改造が必要なのです。
 ちまちまと駅前の再開発や大都市圏の鉄道新線をやっている位では成長どころか逆に不可逆的衰退を招く虞があります。
 今話題の相鉄東急直通線はその意味で衰退につながる虞が大きくはないとはいえ懸念される種です。
 直通の距離の長さや業者の数の多さから如何にも大規模な計画と錯覚されていますが新しく造られた区間は相鉄西谷〜東急日吉(いずれも横浜市)のごく短い距離で、沿線の大規模な開発の余地はあまりありません。
 趣味の良し悪しはさておきかなり大規模の開発が思い切り実現した、全く変貌した唯一の例は川崎市の小杉の界隈ですがそれでもあの位の広さに留まります。
 今ある再開発や新線の計画などはまさに開発のないところに需要消費の拡大を図ろうとあの手この手を弄しては衰退し続けるバブル脳の現れといえます。
 日本に経済成長をもたらす程の国土の開発とは太平洋ベルト地帯と呼ばれる一連の工業地帯の多くを日本海岸に移転する位のことです。主要貿易港でもある神戸、名古屋、横浜と川崎だけが工業都市として残れば他の全部は日本海岸に移せば良いしそれが必要でもありましょう。
 また、皇室を除く首都機能の大半を静岡に移転して静岡を憲政史上初の首都とし、現首都圏(移転後は東京圏。首都高速道路は東京高速道路に改称。)における小田原方面への交通の往来ができるようにすることも必要でしょう。そうなれば必要に応じ箱根の通行止などもあると良いでしょう。

 なのに何故か、経済報道も政治の経済政策も需要と消費の拡大のために財政支出を増して賃金を上げるべしというような論議しかほとんどなく、ひたすらお金ではなく時間を稼ぎ出している様相です。
 今の状況で賃金水準が上がったら物価がもっと上がって益々貧しくなります。強気で値上げをしたら滑って潰れる業者も続出するでしょう(それは経営の稚拙さでもあるしもっと潰れないと困る訳でもありますが、)。

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