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「お値引き」はメッセージだよって話

ブランドを運営しているデザイナーさんのほとんどが「値引き」や「セール」に反対する。
その理由はいろいろあって
・SALE前に買っていただいたお客様との不平等感
・SALE待ちになってプロパーで売れない
・そもそも自分の大切な商品に価値を感じていて値引きしたくない
・安いブランドだと思われたくない

といったところだろうか。
しかし運営としては在庫の回転率を上げていかないと次に商品を作る際の原資を産むことができないからSALEをしたいと思う。。。。こんな話が巷では散見する。

しかしなんだか、お商売の本質を得ていないのではないかと思うのである
二宮尊徳が言ってる
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉通りSALEをするかしないかの論理的な理由については「経済なき道徳」の部分だと思うのだけれど、そもそも「道徳なき経済は犯罪である」という部分については触れられていないと思う。

お商売は誰かの困りごとを解決するよって話

こんなことを考えるきっかけになったのは社内のメンバーと1on1していた時の話だった。
「どうやって売上を上げるのか」という課題に対して担当者からは「こんなキャンペーンをやっている」というような回答があった。
どのキャンペーンも悪いものではなくよく考えられていて一般的には素晴らしいものだったが下記のような課題があった
・売り上げが伸び悩んでいる
・キャンペーン(値引き)が当たり前になってしまう
・マンネリ化してしまう

重ねてになるが、きちんと理由も考えられていて良いキャンペーンもある。
しかし、その話の中に「誰の何を解決したいのか」という話が出てこない、ということに違和感を感じたのだ。
だってお商売は「誰かの困りごとの解決」をするものだから。

例えば飲食店は「調理の煩わしさ」と「価格」と「クオリティ」など店によってそれぞれではあるだろうが、自分ではできないことを解決してくれる。
しかしその表面だけ見ればそうなのだけど、なぜ「調理を煩わしい」と感じるのだろうか?
なぜ「クオリティ(家ではできない美味しいもの)」を求めるのだろうか?
そこに道徳がある。

うちの家では子供達の習い事が水曜日に重なる。
学校から帰ってきた子どもたちを妻が連れて習い事に出ていく。
帰ってくると子どもたちはフラフラになりながら宿題をやったり明日の準備をしたりする。
妻はそこから晩御飯の準備を始めるから水曜日の疲労感は半端じゃない。
そんな時に「今日は外食にしようか」ということになる。
贅沢したいわけではなく、毎週しているわけではなくても体調やいろんな事情が重なって「水曜日は外食にしよう」という時があるのだ。

そんなお客様の状況を考えてこそ「課題の解決」につながっていくのだ。
だから飲食店ではいろんな理由があって「今日は外食にしよう」と訪れるからクオリティも含めて「非日常」を持って迎えるのである。

全ての仕事は「誰かの困りごとの解決」である。
しかし、ファッションブランドという話になった途端に「困りごとではなく、持っていてワクワクする商品を。。。」などと問題をすり替えるわけだけれど、突き詰めるとそれもお客様の課題解決である。
おしゃれを自己表現だとすると、自己表現したいお客様に適切な商品を提供する。

言い換えれば誰かの空白を埋めるのがお商売なのだ。

そしてそのお商売の話の中に、特にキャンペーンや売り上げの話をするときにその中心である「顧客の困りごと」が出てきていないこと自体が大きな問題だと感じたのだった。

メッセージはなんだ?

ブランドは「誰の、何の課題を解決してくれるのか?」というメッセージを発信しなければいけない。
その方法はそれぞれにあるが、キャッチコピーかもしれないし、商品かもしれないし、僕は「お値引き」でもあると思うのだ。

ブランド側の自分本位なキャンペーンではなく、お客様の課題解決にあったメッセージを発信する必要がある。

例えば先ほどの飲食店がこんな「お値引き」をしていたらどうだろうか?

「皆さん、実は子供の習い事が1番多いのは水曜日なのを知っていましたか?習い事が多いと送り迎えも大変ですし、子供達もクタクタですね、当店ではそんなクタクタなご両親と子供たちに向けた「習い事お疲れ様割引」を行っています。水曜日にお子様とご来店いただいたお客様にはお会計から5%OFFさせていただきます。また明日の朝ごはんやお弁当のおかずにも使っていただけるチルドのテイクアウトは全品10%OFFにさせていただきます、皆様水曜日お疲れ様です」

ただの水曜日5%OFFとかチルドのテイクアウト10%OFFというのと印象が大きく変わるのではないだろうか。

そしてこのメッセージは同時に社内にも発信することができる。
水曜日は「習い事の日」だから積極的に子育て中のメンバーはシフトを減らすことができるとか、子育てを応援しているとかそんなメッセージだ。

あくまでもこれは一例だけれど、
お商売は誰かの課題解決で、その課題をどうやって解決するのか。
そしてその先にお客様にどうなって欲しいのか、その気持ちをメッセージとして、お値引きとして発信するのだ。

ファッションブランドではただメーカーの都合で「在庫が残ったら」とか「回転率を上げなきゃ」とかそんな理由でお値引きの議論がなされている。
しかしそうではなく、もちろんタイミングとしてはSALEのタイミングかもしれないが、こんな人に、こんな風になって欲しいという明確なメッセージを乗せてお値引きとともに発信することができるのではないだろうか?

そしてそのメッセージがきちんと届くと、お客様は本当にブランドのファンになっていただけるのではなだろうか?

「道徳なき経済は犯罪、経済なき道徳は寝言」

どうしてもファッションという特性上「こんなお洋服をきてほしい」という思いが中心にくる。
しかし「なぜ?」とか「それを着てどうなって欲しい」まで聞いていくとしっかりと答えられる人は少なくなっていく。

その思いがきちんと言語化できればメッセージが変わるし、その具体化されたメッセージは必ず誰かの心にしっかりと刺さるだろうと思う。

何度でも書くがビジネスは「自分のため」ではなくあくまでも誰かの課題を解決することだし、その課題は表面的な「めんどくさい」とかいうものではなく、
「なぜめんどくさいと感じるのか」という部分まで深ぼっていかなくては本質的な課題に気づくことができない。

本質的な課題に気づくことができなければ、本当に刺さるメッセージは発信することができないし。
本当に刺さらないメッセージはただの「お値引き」になってしまうんだろうなと思う。



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