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この日がずっと続けば良いと
いつか来る別れを想っては
何かに祈るわけでもなく
当たり前の日々を享受している

来世もきっとあなたの子でと
笑顔で送り出す時を想っては
そんな事が起こるはずないと
根拠もなく否定している

雪のように積もる思い出
雪のように溶けていく記憶
春が来る度に新しい出会いと
もう二度と会わない人と縁が切れ

楽しかったのはいつ、どんな時だったのか
悲しいと何故こんなに涙が出るのか
ずっと一緒に居ることは叶わず
失うまでの時間が惜しく

水中に身を委ねているようだ
もがいても、もがいても思い出せない
足掻いても、足掻いても忘れてしまう
大事なことほど覚えてないというのに

肉体が滅びても、魂が残るなんて嘘だ
記憶には残るから、心の中で生きるなんて嘘だ
ここにあったものがいなくなって
僕の横には何もないじゃないか

あの日、あの時の感覚
あの場所、あの人と確かに居た
過ぎ去っていく時間があまりにも疾くて、
悲しくもないのに、心には穴が空く

生きるなら、生きていくなら
何かを失うことを試練とするなら
何かを得るというのも試練なのか
愛も、温もりも、大好きという感情も

生きるなら、生きていくなら
死ぬのなら、死んでいくのなら
誰かと一緒にいる覚悟も、
誰かを置き去りにする罪悪感も、

全て全て、なくなってしまえばいいのに。
全て全て、感じなくなってしまえばいいのに。

もう会えない
そんなことはさせない
もう会えない
そんなことは信じない

もっと喋ろう
もっと語ろう
もっと遊ぼう
もっと触れよう

もっとあなたのことを知りたい
もっとあなたと繋がっていたい
もっとあなたの側にいたい
もっとあなたとここに居たい

僕がもっと頑張らなきゃいけないのに
僕が頑張ると貴方が居なくなるんだ
僕がもっと支えなきゃいけないのに
僕が頑張ると貴方は悲しくなるんだ

もうずっとこのままでいてほしいのに
貴方のそばに居るだけなら
どんなに簡単だったことだろう

もうちょっとこのままでいてほしいのに
時間がゆっくり流れたら
どんなに心が救われたことだろう

「じゃあね、またね」が言えたなら
あと何回この台詞が言えるのかな
残された時間は、ゆるやかに少なくなっていって
それでもその現実から目を背けたくなっていって

この日がずっと続けば良いと
いつか来る別れを想っては
何かに祈るように
神様、もう少しだけ

(了)


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