1921年、新素材パイレックスがやってきた

サンダーランドは、イギリス北東海岸にあるウィア川の河口一帯を占める都市です。炭鉱と造船の町というイメージが非常に強いです。この1928年の航空写真には、川を上る大型船や、鉄道から船に石炭を移すcoal drop、数々の工場の煙突が写っています。

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19世紀には焼き物も盛んでした。ピンクゴールドの釉薬が特徴で、現在は骨董品として認知されています。定番の図案はやはり船。この水差しに描かれている橋は、航空写真の一番右下に見えるWearmouth橋です。ちょうどこの時期に架け替え工事が進行中のはずです。

そして、本題のガラスです。ガラスの主成分はシリカ、つまり砂です。ヨーロッパ大陸に石炭を運んだ船が復路に砂を積んでくるという一挙両得の立地で、サンダーランドには古くからガラス産業がありました。飲料用ボトル、ステンドグラス用の色板ガラス、食器、装飾品など、時代やメーカーによってさまざまな製品が作られました。

20世紀初頭、James A. Jobling社はTrimdon通り(航空写真で、中央から左上の煙突群と思われる)で、前身のWear Flint Glass Works社を買収してテーブルウェアなどを作っていました。プレスと呼ばれる技法で、融かしたガラスを装飾の彫り込まれた金型で押して成形することで、華やかな模様を比較的安価に製造することができます。

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1921年、このJames A. Jobling社が、米国コーニング社が開発した新素材のガラス「パイレックス」を、イギリス(カナダを除くイギリス連邦全域)で製造販売するライセンス契約を取ったのです。

1922年、のちに2007年まで続くことになる、サンダーランドでのパイレックスの生産が始まりました。

(この記事の写真は各方面から拝借したものです。引用元は画像をクリック。)

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