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いわゆる包括契約は利用者の利便性優先

JASRACの話しをしていて必ずヤリ玉に挙げられてしまう包括契約。

でも、この包括契約というのは、実は楽曲利用者の利便性を優先して考えられた「定額使い放題」のお得な料金プランであり、楽曲利用の都度にリストで報告~JASRACからの請求を受けて使用料の払い込みに行く曲別請求スタイルに比べて手続きの手間を少なく、そして使用料金を安くおさめられるようになっているのが包括契約です。

包括契約という言葉にアレルギー反応を起こさないように。

サンプリング分配(特定の利用店での楽曲利用状況を収集~統計からの判断で分配するスタイル)を論って「どんぶり勘定だ」と批判をしようとする人が後を絶ちません。

契約の在り方について正確に理解できていない人が、包括契約やサンプリング分配を悪だと決めつけている場面を目撃する機会も多く、とても残念に思っているのですが、まずは「誰によって」「どんな思いで」作られた制度なのかをお考えいただく機会を持っていただければ嬉しいです。

包括契約 ≠ サンプリング分配。

しかし、このサンプリング分配の方式は音楽利用主体者となる各種事業者団体とJASRAC=私たち音楽作家(作詞家、作曲家)の間で協議を重ね、互いに折り合いが付くポイントで合意が形成されたスタイルです。

楽曲使用料を受け取る側の私たち音楽作家自身が「それでいい」との意志で決めたことなので、外野が文句をつけるなら誰のためにもならない的外れな難癖となることでしょう。

サンプリング分配は分配額全体の2%にも満たない少額。

実際のところ、いわゆる包括契約であるか否かのどちらの支払い形態であったとしても、楽曲利用者の協力が得られ全曲報告~正確な分配が実現しているのは全体の98%以上です。

残り2%に満たない分は楽曲利用者がお支払いいただく使用料が少額であることや、日常的に多種多様な音楽を店舗BGMとして流している場合に楽曲利用者側の楽曲利用報告の手間を省き、同時に使用料を受け取る私たち音楽作家側としても情報収集のコストを増やすことが無いように考えられた仕組みこそがサンプリング分配なのです。

ただ、このサンプリング分配は巷の評判がよろしくない(本当は利用者でも無く契約作家でもない声を聞く必要は無いと思いますが)ことを酌んで、現理事長(2022年春現在)方針としてサンプリング分配は全廃したいとの意向も表明しています。

実際に過去にはライブハウスでの楽曲利用でも採用されていたサンプリング集計~分配は廃止(※2)され、数年前からライブハウスには全曲報告のお願い、そして私たち音楽作家へ分配されることになっています。

(※2)
2022年春の時点でも小規模ライブハウスや店舗BGM利用の少額利用契約では、まだサンプリング分配が一部残っていますが、少額利用の機会にも全センサス把握を目指してしまうと、情報収集コストの方が上回ってしまうことが容易に想像できますので、しばらくは小規模・少額利用でのサンプリング分配は残るとは思います。

全集金対象額の中から僅か2%にも満たない財源から、2022年春現在1万9千人を超える信託契約者300万曲ほどの管理楽曲の利用状況を統計分析して分配したところで、超メジャーな楽曲でもない限りは大した額にはなりえないのが実際のところです。

運よくサンプリング集計に自分の楽曲名が1度登場したところで、300万曲の利用頻度を統計分析した結果の計算では1円以上に浮上できないことだってあるのですから。

こんな少ない母数から血眼になって数円~数十円を取りに行く熾烈な争奪戦に身も心もすり減らすより、自作品が出来るだけ多くの人に親しまれるような楽曲利用開発に時間を費やした方が確実な収益に繋がることは間違いないでしょう。

楽曲利用開発の努力が実を結び、自作品が多くの人に親しまれ有名になってくれるからこそ、必然的にサンプリング分配で自作品が拾われる確率も上がってくるのです。

また「信託者報告」の制度もありますので、楽曲利用者から正確に報告されていないような楽曲利用場面にJASRAC契約の音楽作家自身が遭遇した際には、信託契約者自身でJASRACに報告をすることで分配漏れを回復してもらうことも実現しています。

サンプリング分配がもらえない=売れていない作品。

コレは自分自身へのメッセージでもあります。

著作権管理~収益を得られる仕組みは、決して売れない作品・作家の救済機構ではなく、売れる作品/売れない作品の利用実績を公平に扱うのみです。

サンプリング分配を貰えるようにするがため、使用頻度の低い作品の調査に無駄なコストを使わせることを強いてはいけません。

「零細作家の楽曲利用は無視される」というようなことを問題視しようとしている人をSNS上でも見かけましたが、重箱の隅をつつくような細かい調査に必要以上のコストをかけさせることで、実際に多くの人に親しまれて多くの使用料回収を実現した作家・作品が得られるべく利益を目減りさせてしまうような仕組みでは、それこそ不公平となってしまいます。

少ない財源を自分に分配させることに躍起になるより、知名度の低い自作品が少しでも多くの人に知ってもらえるような営業を考える方が健全でしょう。

「サンプリング分配をもらえていない」は自虐発言。

SNS上でもたまに目にすることがありますが、サンプリング分配を受けていないなんて話しは、自作品が売れていないことを大々的に公言するだけなので、何の得にもなりません。

そんな発言に心当たりがあるなら、今スグ削除しておきましょう。

わずか2%にも満たないサンプリング分配、そして今後も減り続ける可能性しかないサンプリング分配をアテにしても明るい未来は待っていません。

仕組みを変えるつもりなら正会員に。

批判や問題提起を受け入れないというつもりはありません。

外野からヤジを飛ばすようなやり方ではなく、中に入って正攻法で変えようとしてくれるなら当事者である私たち音楽作家全員は大歓迎なのです。

当事者として「変えたい」気持ちがあるのであれば、まずは議決権や会長・理事選の投票権を持つ正会員になってください。

まわりの正会員音楽作家達にも認知される存在になってください。

認知される存在ともなれば、会長や理事に立候補する作家達から「推薦状の依頼」を受けるようにもなります。

「推薦状を書いてほしい」とアテにされる存在になれたのであれば、次のステップは理事への立候補でしょう。

外に向かって口々に文句を言ってるだけでは永遠に何も変えられませんからね。

さて、いよいよ今日(2022年)3月23日はJASRAC会長選挙、理事選挙の開票日ですね。

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