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いっしゅうき 2021.06①

2021.05.26 WED
169日目です。小説書くのって疲れますね。頭のなかすっからかんになったような気分になります。ぜったい頭んなかの栄養のほとんどを文章書くのに吸い取られてるんですよ。

2021.05.27 THU
170日目です。美容室の予約をしようと電話をしたら、どうやら回線の調子が悪かったらしく、こちらの声が先方にまったく伝わらず「もしもし? もしもーし。う~んいたずら電話かしら……」という困った声が聞こえてきて、非常に申し訳ない思いをしながら泣く泣く電話を切りました。ごめんなさいいたずら電話じゃないんです、回線ちゃんが悪いんだよ! こういう状態でもう一度電話をかけるという心理的ハードルの高さといったら尋常なものではありません。もう髪の毛切りにいくの諦めよっかな……と10分ほどいじけたのち、もういちど電話をかけたら無事繋がりました。一応謝罪をしておきました。ちゃんともっかい電話かけてえらい。

2021.05.28 FRI
171日目です。自炊(といっていいのか甚だ疑問な簡単な品目ですが、まあ「自」分で米「炊」いて食ってんだから自炊なんですよ)を始めてからしみじみ思うんですが、外で豚丼食べようとしたら一食安くとも300円代後半くらいになるでしょうが、スーパーで350グラムの豚肉(大体3食分に相当)買っても400円くらいで済むんですよね。自分でつくる手間、片付けの手間、食糧を買いにいく手間なんかもありますが、単純に金銭面だけ見れば自炊のほうが断然安上がりなことに気付きました。もっとまえから少しずつ自炊に移行しておけば、通帳の残高ももうちょっと増えたのかしら。

2021.05.29 SAT
172日目です。グザヴィエ・ドラン監督『トム・アット・ザ・ファーム』(2013年、カナダ・フランス)を観ました。グザヴィエ・ドラン氏は主演も務めている非常に多才な方のようです。まえまえから気になっていた作品だったので、VODサービスをサーフィンしていて偶然発見し、思わず一気見してしまいました。おまえ途中になってるもんいっぱいあるべ。はよ積ん映像作品を消費せんかい。いや積ん映像作品って何? おかしな言葉をつくるな。

映像自体も独特の空気感、色合いが非常に魅力的ですし、ストーリー・演出もきっとこの監督だからこそつくれたのだろうなあ、という印象を受けました。
雰囲気映画と思って観ればそう見えてしまうかもしれないのですが、すべてが終わってからもう一度冷静にいろいろなことを思い返してみると「ああ!」と納得のいく部分もあり、単純に「耽美的」「狂気的」「かなしい」「よくわからない」で済ませるにはもったいない稀有な作品だと感じました。こうやって文章にしているなかでも、どんどん自分のなかでの評価が更新されていく、なんとも不思議な感覚があります。なんだこの映画……好きだ……こういうの好きだ…………。

決して登場人物は多くはありませんが、メインキャラクター、特にトムやフランシスのどうしようもなさ、人間としての弱さがそれぞれ浮き彫りになっており、その不器用さに感情が揺さぶられる場面も多々あります。特にフランシス! 最初は「うお~なんだこいつ!!」という気持ちになるのですが、閉塞的な共同体の息苦しさ、ときにしがらみにもなる家族の絆なんかが、共感できる方には響くのではとも思います。だからって許されるわけではないですが、痛々しいまでの孤独感や不器用さも伝わってきました。人間ってほんとどうしようもねえよなあ。わかるよ……(なにが???)。
作品全体に流れている頽廃的な色気も大きな魅力なので、「エモさ」を求めて鑑賞するぶんにも満足感の高い作品なのではないでしょうか。トムのくしゃっとした笑顔が、愛らしさと痛々しさが混ざり合ってなんともいえない気持ちになるんですよ……場面によってこんなに笑顔の意味が変わってくることあるか……? こういうところが、映像作品の醍醐味だなと感じます。グザヴィエ・ドラン作品、ほかにも探して観てみようかな。

2021.05.30 SUN
173日目です。米をたくさん使う料理をつくりたくて、けれどもう家に1合分の米すらなかったので、スーパーへ買い出しにいったわけなんですが、結果米だけまるっと買い忘れた状態で帰宅したので、もう知らんなんもせんという気持ちになりました。かなしかったです。

2021.05.31 MON
174日目です。ヒューマントラストシネマ有楽町にて、ゲオルギー・ダネリア監督『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986年、ソ連)を観てきました。

こちらの作品のアニメ版作品『クー!キン・ザ・ザ』が公開されるということで、原作であるこちらも、現在一緒に劇場上映されているわけです。カルト的人気を誇るソ連映画ということでまえまえから(半分馬鹿にする気持ちで)気になっていたので、せっかくだしということで観にいってきました。

結果、ついったにも書いたことなのですが、完全に「落ちて」帰ってきました。オタク的な表現をすると「沼落ち」というやつです。いまネットでグッズを探すなどしていました。Tシャツがグッズ化されているようですね。おまえ円盤とプレミアついたサントラCDポチっておいてまだTシャツも買うんか?

いやほんとになにもかもがツボだったんですよ。気の抜けた会話、深刻になりすぎず平熱のテンションで進む物語、大掛かりかつ独創的な舞台装置、コミカルで耳から離れないBGMと短波放送を思わせる強烈な効果音(宇宙船の稼働音が好きすぎて頭がおかしくなりそうでした)などなど、個人的に好きな要素がこれでもかと詰め込まれており、それでいてエンタメのお約束もしっかり取り入れているな点が非常に魅力的でした。おもしろかったんですよほんとに! ほんとに!!

時代も時代ですからCGも発達していないのではないかなと思うのですが、宇宙船の発着陸の描写なんかは「どうやって撮ったんだこれ!?」と気になるくらいに自然でスムーズです。ソ連映画しゅごい。
ただ、やはり「現在のSFならCG使うんだろうな」という部分をどうにか演出・処理しようという意図も見え隠れしており、それは特に宇宙船を使った長距離の移動シーンに顕著です。空を飛んで移動する、という描写を無理に挿入するのではなく、宇宙船の扉を閉める→船内の様子を映す→しれっと扉を開ける→目的地についている、というシーンの取捨選択・省略の技法は、個人的になかなか頭がいいなあと思います。この大胆な省略具合がソ連映画!って感じがするんですよ。『ストーカー』とかもけっこうそういうの多いんですよ、SFなんだけどSF要素はばっさり切る、みたいな。ソ連映画ろくに観たことないくせに知ったような口を利くんじゃないよ。
こういう、表現上の制約によるマイナス要素を演出で補うかんじ、演劇にも通ずるような気がして好きです。手抜きではなくあくまで演出としての「捨て」。方法を誤ると陳腐なものになってしまいそうですが、効果的に行えばこんなにおもしろい進行になるんだ、とほれぼれしながら観ていました。さも演劇通ですみたいなこの文章なんなんでしょうね。趣味創作人(しゅみそうさくんちゅ)の分際ですみませんなんかえらそうなこと抜かして。結局なにがいいたいのかというと、キン・ザ・ザはめちゃくちゃいいぞということです。尺も長いですし好みもわかれるでしょうが、ぜひに観ていただきたいとっても楽しい作品でした!

2021.06.01 TUE
175日目です。昨日の晩、中途半端になっていたジョルジュ・シュルイツァー監督『ザ・バニシング 消失』(1988年、オランダ・フランス)を最後まで観ました! キン・ザ・ザ星雲から帰還した勢いのまま酒を煽りながら観たわけです。なぜ昨日のぶんに書かなかったのかというと、一日に映画の感想をふたつ書くのはしんどいからです! あとたぶん火曜日なんも書くことないべなと思ったからです。的中しました。
途中まで観た際の記録はこちらから。予告編のリンクもあります!

「サイコ・サスペンスの傑作!」といったかんじで各所で絶賛されていた作品だったので、いったいどんなえげつない話なんだ!血がいっぱい出るのか!?てなノリで鑑賞したのですが、結論からいうと血は一滴も出ませんでした! それはそれですごい。
ストーリーの落としどころや「サイコ」サスペンス感としては、近年の過激なサイコ・サスペンス、スリラーに慣れてしまった筆者からすれば若干物足りない感はありました。しかし、恐らく当時の水準としては、終始どこか達観したような空気感で淡々と描かれていく犯罪の様子は、恐怖感を掻き立てるにあたって十分なものだったのではないか、と想像します。同時代のサイコ・サスペンスに詳しいわけじゃないので適当抜かしてるんですけど。

また、これも以前の記録と被る感想ではありますが、犯人側の視点が物語の前面に押し出されている構成が、個人的には新鮮でした。ほんとに『刑事コロンボ』を観ているみたいでした。コロンボポジションは一切出てきませんが。
犯罪のかかわってくる作品では、往々にして「犯人」が極端に美化され、完全無欠の存在として描かれることも多いと思うのですが、今作の犯人は意外にもそういうタイプではなく、何度も失敗を繰り返しながら、(犯罪行為に対しこんな表現を用いるのは癪ですが)地道な努力でもって自らの目的を達成しようとします。そのさまがなんというか、とても「等身大」に描かれているので、そのあたりが作品に入り込む大きな「引き」になっているようにも思いました。逆にいえば、そんな数多くの失敗を繰り返しながら、それでもなお犯罪行為をやめようとしない犯人の心理に恐ろしさを感じる、というのもあるのかもしれません。

先述のとおり血は全然出ませんし、わりあい落ち着いた雰囲気で進行していく作品なので、過度なハラハラドキドキが苦手なかたでも大丈夫な作品かと思います! もちろん清々しい作品ではまったくありませんのでその点は御了承ください。
思索的な演出・会話があったり、独特な空気感も魅力的です。各所から高く評価されるのもわかる作品ですので、遣る瀬無い気持ちになりたいサスペンス好きの方におすすめです! ハァ~~~やるせね~~~~!!

ほんとうにありがとうございます。いただいたものは映画を観たり本を買ったりご飯を食べたりに使わせていただきます。