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桐崎鶉
2022年10月1日 21:53
パパが出ていったあとの母の機嫌は最悪で、そういうとき必ず彼女は、息子である彼に煙草を買ってくるよう命ずる。猫撫で声で懇願するときもあれば冷徹な将校のように告げることもあって、どちらにせよ彼が難色を示した途端表情を一変させ、金切り声で同じ内容を叫ぶのである。 その日の彼女は将校で、子どもは煙草を買うことができないのだ、と彼が拙いながらも丁寧に説明した瞬間激昂し、いいからとっととこれで買えるだけ買