マガジンのカバー画像

短編小説たち

3
過去に発表した短い作品や、新しくつくった小説が読めます
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

【短編小説】喝采

【短編小説】喝采

 拍手の音が聞こえる気がする。ひとりで階段脇の受付に座っていると、ときおり踊り場のほうから、ぱらぱら、というか、がらがら、とでもいおうか、そんな音がする。はっきりと、ああ、これは拍手だ、そう確信できるわけではないけれど、なにかに例えるならそれがいちばん近いように思えて、誰か来たのかと階段へ身を乗り出し見上げてみても、たいていそこに人影はない。足音にしてはずいぶんと大きく、なにかを落としたにしては軽

もっとみる