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断捨離

何となく思い立って袋を準備する。大きな音を立てて思いっきり開く。どこから手をつけようか。何からやっつけていこうか。何となく目に付いたところから手に取っていく。

片付けが下手だった幼少期から、何も変わらずここまで大きくなってしまった。何もかもを大事に持ちすぎて、何もかもに目移りし、何もかもが宝物に見えて抱き抱えながら生きてきた。
何度も悔やみ何度も嘆き、何度も涙することになると分かっている思い出すらも、大事に手のひらに収めて、握りしめてきた。

宝物だと思った時から、それは、何処と無く過去にあるはずなのに、この今にあるような気がしてならない。引っ張り出して、手に触れて、思い出して。そしてまた今の自分で考えて思い悩んで、宝箱にしまっていた。
そろそろ、疲れただろうと思う欠片でさえ、触り痛みを感じることを繰り返す。
こうしてまた、宝物が増えていく。
あの時感じた感情と、今感じる感情と、この先出会う感情をしまいこんでいる。

さてと、どうしていこうかな。
声に出して、使わなくなった服を捨てていく。見えないところにあるけれど、1番捨てやすいものだった。タンスが少し軽くなる。流行りに遅れた服たちは、今後着ることは無いだろう。
次に何に手をつけよう。
雑貨類に手をつけて、使ってないのを片っ端から放り込む。後で仕分けすればいい。今は捨てると決めるだけだ。こうしてどんどん減っていく。こうやってどんどん減らしていく。

部屋が少し広く感じた頃、心の隙間も出来てきた。やっと宝物が少し片付いた。あとは、もう少し時間が経って、使わないとわかった時にまた、さようならをするだけだ。

結構簡単に心は片付け終わることを知った。
やっと少し、身が軽くなってきた。
あとは、もう少し、自分の宝物を見極める力を持つだけなのかもしれない。
またこの部屋に、物が溢れかえらないように。

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