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ジェノスと櫛

先生の私物を整理している時、引き出しの奥の方に古びた櫛が見つかった。

「先生、失礼ですがこの櫛は?」
「あー、まだ髪があった頃使ってたやつだ」
「捨てま…いや、要りますよね?」
「まー買い直すだろうけどな」

先生はまだ髪が生える可能性を捨てていない。
だがこの櫛は確かに古すぎる。

「捨てていいよ。ジェノス」
「おれがもらっていいですか?」

先生にもまだ弱い時期があったのだと感銘を受けた俺は、その時の使用品、櫛が愛おしく思えたのだ。

「いいよー、使うなら洗えよな」
「いえ、人工毛髪に櫛は要りません」

「ならなんで欲しいんだよ。まぁいいか」

俺は櫛をエプロンのポケットにしまった。
この後エプロンごと櫛を洗濯してしまったのはまた別の話だ。

終わり

お金が欲しいです。