最近見た映画の話
注記:ネタバレあり.4作品とも視聴後に読むのがいいと思います.
ラストマイル
MIU404もアンナチュラルも見ていなかったから不安だったけど,見てなくてもかなり楽しめた.正直邦画が久しぶりだったり,今後見たい映画リストに『ジョーカー2』や『シビル・ウォー』が自分の中にあったので,そこまで肩に力を入れず,ゆるいエンタメとしてと向き合うつもりだった.しかし映画が展開していくにつれて,社会風刺映画としての側面が強くなってきて,飲み物を飲む手が止まる.ネタバレ防止のため,どこまで書いていいか分からないが,「ブラック企業と下請けによる搾取」という陳腐なように見えて,日本社会にとってはかなり重たいテーマに,強く殴りかかっていく.「別ドラマと同世界線」「人気俳優の登用」「主題歌が有名歌手」という良くも悪くも邦画要素全開の中,ここまで見たあとに自身の足元がグラッと揺らいで,視聴者に問いを残す脚本に,素直に感動してエンドロール中ずっと泣いて弟に引かれてしまった.
その上で,綾野剛と星野源の顔良いな,と思った…MIU404見ます…
ボーはおそれている
『ミッドサマー』の監督でホアキン・フェニックスが主演.なかなかえげつないグロを恐れだいぶ身構えながらプライムビデオで見たけど,グロさだけならミッドサマーよりはマシだった.不安障害の主人公が川崎みたいな治安の街(誇大表現)から実家に帰ろうとする道のりの話.どこから幻覚/妄想?みたいな考察はインターネットにいっぱいあるからおいとくとして,たぶんほとんどのシーンは主人公の不安の映像化といった感じ.まさに「悪い夢」.それはそれとして,一応コメディも入ってる.というかはっきり言おう.全裸中年男性が走り回ってたらもうめっちゃ面白いだろ.全裸のホアキンが全裸のシリアルキラーに追い回されてる.わりかしグロかったりジャンプスケアも多いパートのはずなのに爆笑してしまった.
そこから先,ホアキンが車に轢かれてからは,何度か長いな……とシークバーを確認する程度にはダレるけれども結構面白い.トニがいいキャラしてた.キャラクターのエグ目非行に対して随分可愛い部屋だな……字幕版で見てるけど若者言葉が全然聞き取れなくてびっくりした.
話の根幹は母親による息子の支配と,それによって自分を責め続けながらも母親を憎むボーの対立を,ボーの視点から描く,ってことであってるよね.解説じゃないし考察も薄いから,大したこと言えないけど,結局ボーはずっとモナをおそれている.私は車に轢かれるまでが現実で,その寸前で見た走馬灯だと思ってるけどね.
でもやっぱ川崎パートのインパクトと面白さがこの映画の良い意味でノイズになってる.あんな疾走感があったら中盤のダレる部分に視聴者を無理やり引き込めるし,治安の悪すぎる汚い街という面なら同監督の『ジョーカー』にも通ずるものがある.それでも結局感想が冒頭40分パートの短いくだり,全裸のおっさんの鬼ごっこ面白すぎるに収束していくのが良くないな.
パーフェクトブルー
実は見たことなかったので近所のレンタルビデオ屋で借りてきた.まずでてきたPCがMacintoshじゃね!?となりテンションがぶち上がった.なりすましの自身のサイト,アイドルからの転身のプレッシャーで,どんどん虚構の自分が依代を得て具現化していく.そんで現実にも,現実の未麻にも影響を及ぼしてくる.ラジオ局でフワフワ飛んでいく未麻を必死で追いかける未麻のシーンかなり好きなカメラの動きだった.虚構VS現実っていう言葉だけならシン・ゴジラを連想するけどここではそんな関係ないね.
途中でカメラマンの人が殺されるシーンにすごい見覚えがあった.昔,それも小学生のときとかにここだけをインターネットで見たことがある.実はそこが原因でちょっと先端恐怖症気味になってしまった.久々にこの本気で痛そうで,目を開けられなくなる感覚を覚えた……しばらく宅配の荷物を取るとき屈めないよ…….そうだ思い出した.たしか今敏監督作品の海外MADで取り上げられてたはずだ.ほとんどが『パプリカ』のシーンだから数年前にパプリカ見たとき「いつあのアイスピックのシーンが……?」と怯えてたんだった.
個人的には聞いていた前評判よりスカッと終わってすごく好きだった.最後の未麻のセリフもそのままの意味だと私は感じたし,未麻の中の葛藤にも決着がついてるし.「後味の悪い鬱映画」ってのはさすがに乖離してるんじゃないか.インターネットよ.周りの思う自分と,自認の乖離ってのは結構普遍的な現象で,なんなら私も今それでちょっと悩んでる.そういう色眼鏡があること前提ではあるのだが,私もいつか自分を「本物だよ」と笑ってやれるようになりたいと思いました.
話は変わって米津玄師.ライブでやった未公開曲のタイトルが『パーフェクトブルー』だったらしく,LOST CORNERで初出しの新曲『LENS FLARE』がそれらしい.パーフェクトブルーから着想を得てレンズフレアっていう単語に行き着くの,ものすごくハマってるのに,絶対私だったらたどり着けないな……と才能を感じた.いつかライブの映像化とかで,プロトタイプも聞いてみたい.
シビル・ウォー
現代アメリカで内戦が起こって,それを撮る記者たちの話.これもなかなかに重いテーマで,多少なりとも事前知識がいるはず,と少しインターネットで現在のアメリカの状況や分断の意識,州ごとの関係なんかをほんの少しさらってから劇場に向かった.
しかし,番宣でもっとも話題になっているであろう"What kind of American are you?"のくだりをすぎ,サミーが亡くなってから先,これ結構風刺的テーマよりも画と戦闘,そして何よりジェシーの成長物語としてかなりシンプルにエンタメ映画なんじゃないか?と思い始めた.序盤のジェシーはまだカメラを持った人間,職業としての戦場カメラマンだった.しかし,ワシントンD.C.での戦闘がはじまると,リーはかなり疲弊しているなか,対照的にジェシーはどんどん前へ進んでいく.表情は無くなり,ひたすらにセンセーショナルな事実を写すようになっていく.戦場カメラマンは,その人間性を経験で押し殺し,カメラとして完成した……師匠の死を持って受け継がれる記者の機械性が分かりやすく表現されている.いいね……個人的には大統領のインタビューがもっとあるかと期待してたけど,最後までヴィランを突き通した感じだった.この映画は社会風刺であると同時にクオリティの高いエンタメであるのは,こういうわかりやすい敵!わかりやすい成長!そんでクッソ怖い赤いグラサンのイカれた兵士!という映画として楽しいポイントが押さえられているから.
大統領や西武勢力の政治的な思想みたいな部分がフワッとしか描かれていないから,割とみんな自分の中で敵を投影しやすいのもあるんだろう.反戦を啓蒙する,アメリカの分断を強いイメージで浮き彫りにする,という視点で見ればそこまで成功していないし,監督の目的がそれなら失敗ではあるんだけど,それ以前に映画としてめっちゃ面白くって,随所で流れる洋楽は非常に"アメリカ的"爽やかさがあって,アイコニックなキャラクターもいる.エンターテインメントにこれ以上何を求めようか?すごく面白かった!!
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