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日記16

「君たちは15年来の友人を失ったことはあるか?」

そんなふうに授業で生徒に聞いてみた。「ない!」「だって15年前は2歳だもん!」まあ、たしかにそうか。僕は続けた。
「昨日、僕は、15年来の友人を失った。」
生徒の顔に戸惑いが浮かぶ。少し気の毒そうな目をしている。
「いや、失ったと言っても、死んだわけじゃない。それにここでいう友人は無機物だ。」

僕は生徒に、僕とパチンコ店との蜜月を語った。そしてもう足を踏み入れることはないだろうことも、併せて語った。語った途端に、バッと実感が心に入ってきて、呆然としてしまった。

「心にぽっかり穴が空く」なんていう紋切り型の表現があるけども、まさにそうとしか言えない感じで、我が事ながら非常に驚いた。僕は依存先を失ってしまった。僕だけの孤独な遊び場は、もうなくなってしまった…自覚するたびに心は痛んだ。痛むと同時に、喪失の認識も深まっていった。

喪失がこれ以上深まらない位置まで心が沈んだ頃、別の考えも同時に出てきた。「スロットは身体が動かなくなった老人になってから、好きなだけすればいい」うん、これはかなりしっくりきた。今はまだ他にできることがたくさんある。というか、スロット以外にだって、一人になれる趣味はあるじゃないか。こんな単純なことすら、喪失感に打ちのめされている間は気づくことが出来ない!

そんなわけで、今は割とさっぱりとしている。なにかを新しく手に入れるときには、古い装備は捨て去らなければならない。考えれば考えるほど、自然なことで、前に進むための勝縁とすべき事件だったのやも。今回はポジティブな場所に落ち着いて、日記が終わる。

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