日記26
生徒指導の会議で、ピアスについての話になった。本校では、ピアスは禁止で、ピアスをしている生徒を見つけたら「外させて」「預かって」「数ヵ月後に返却」ということをやっている。
僕は意味がわからないと思った。心底。
だから会議で思い切って聞いてみた。
「ピアスって何でダメなんですか?」
その場の氷付きを表現するのに適切な言葉がない。でも確実に一瞬時間は止まった。シュタインズ・ゲート的に言えば世界線の移行が発生したような、ほんの1フレームのラグ。そのあと、僕に痛いほどの多数の視線が突き刺さった。蜂の巣状態。
「ルールだからダメに決まっているでしょ」的な意見が、うわあああっと周囲から述べられた。そういうことではなくて、なぜそもそもピアスを規制する必要があるのか、ということなんだけど。なぜそんなルールが必要なのかってことなんだけど。僕が抱えているモヤモヤを受け取ってくれた先生は1人だけだったけど、それだけで救われた。
年貢の取り立てをする役人みたいに、物事の是非に疑問を持たず、強権的に物事を進められたら、どんなにか楽だろう。僕は会議が終わるとフラフラになりながら自分の席へ戻った。生きづらいよこんな性格。だから僕は、生きづらい、と声に出してみた。世界線の移行は観測されなかった。
物事の本質なんて脇見せずに通過して、真っ直ぐ進んで行けたなら、僕はこんな寄り道ばかりの人生を送ってはいないだろう。自分の変えることができない性質であると受け入れて、一緒に生きていくしかない。一緒に生きていくしかない以上、仲良くやっていくことにしよう。めんどくさい自分も、よくよく眺めれば、中々かわいい目をしている。
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