テレビ朝日の放送番組審議会に見る「おっさんずラブ」の発言まとめ

この記事は、テレビ朝日で放送された「おっさんずラブ」のテレビ朝日の放送番組審議会の発言を中心にその内容をまとめたものです。
ここに見られる発言は、テレビ朝日のウェブサイトからも確認が可能である。

まず、テレビ朝日の放送番組審議会での「おっさんずラブ」に関する発言を具体的に見る前に、放送番組審議会とは何かをまとめておきたい。


はじめに 放送番組審議会とは

「番組審議会」はごく簡単には、放送番組の適正を図るために外部の有識者の意見を聞く場として、放送法により放送局に設置が義務付けられている審議会である。

基幹放送を行う全国の民間放送事業者を会員とする一般社団法人 日本民間放送連盟のホームページによると、「番組審議会」を以下のように説明している。

https://www.j-ba.or.jp/category/references/jba103618 より抜粋

放送局は、放送番組の適正を図るために外部有識者の声を聴く場として番組審議会を設置しています。委員は、学識経験を有する方のなかから、テレビ局では7名以上、ラジオ局では5名以上を各放送局が委嘱します。
番組審議会の主な役割は、
▽放送局の諮問に応じ、放送番組の適正を図るため必要な事項を審議する、
▽放送局に対して意見を述べる

――ことで、番組審議会は放送局からの諮問事項に「答申」や「意見」を取りまとめ、放送局はそれらを尊重して必要な措置を講じます。
番組審議会では、具体的な番組の視聴・聴取も行われ、放送局は、そこで行われた議論や意見交換を、次の番組づくりに役立てています。

なお、放送法の番組審議会関連の項目(第6条と7条)については、電子政府の総合窓口e-govからも閲覧可能であるが、以下の一般財団法人情報通信振興会のウェブページ情報通信法令wikiに用語付きで閲覧が可能であるのでそちらを紹介したい。

・放送法 第6条
https://www.dsk.or.jp/dskwiki/index.php?%E6%94%BE%E9%80%81%E6%B3%95%E7%AC%AC6%E6%9D%A1

・放送法 第7条
https://www.dsk.or.jp/dskwiki/index.php?%E6%94%BE%E9%80%81%E6%B3%95%E7%AC%AC7%E6%9D%A1

(なお、e-govでの閲覧はこちらから閲覧が可能である)


テレビ朝日の放送番組審議会の運営について

次に、このテレビ朝日の放送番組審議会で「おっさんずラブ」がどのように語られたか内容を具体的に見る前に、テレビ朝日の放送番組審議会について、どのようにこの審議会が行われているのかを見てみたい。

同局の放送番組審議会の審議委員は、委員長、副委員長が各1名ずつ、そして委員が8名の計10名から構成される。(放送法では7名以上と定められている。ただし審議員の選定は局が行うことができる。)

そして過去の開催記録を見る限り、テレビ朝日の放送番組審議会の開催頻度は年間で10回程度開催されており、委員の変更は年度の最後の開催回で報告されている。

放送法により、放送番組基準に変更がある場合は、この放送番組審議会に諮問しなければならないため、議題として取り上げられることがある。(同局の場合、直近では第566回の放送番組審議会にその記録を見ることが出来る。参考:テレビ朝日 放送番組基準
そして、放送番組審議会がどのように進められているかについては、ある具体的な放送番組を取り上げ、それを中心に意見交換を行い、その後に局側の見解を述べるという形式がもっとも一般的で、最後に局側からの総括、全般的な報告で締めくくられる形となっているようである。


取り上げられる課題の内容について

次に、テレビ朝日の放送番組審議会で取り上げられる課題の内容について簡単にまとめてみたい。
上記で述べた通り、テレビ朝日の放送番組審議会では、ある特定の番組を課題として取り上げ、その番組を中心に各委員が意見や感想を述べる形を取っているが、取り上げられる課題については局が決めることができる。

そこで具体的に過去5年間の審議会(50回分:第562回~第611回)でどのような番組やテーマが取り上げられてきたかを調べてみたところ、約半数がバラエティー番組(25回)、次いである具体的な番組に限らずに取りあげる「放送番組全般」、また『報道ステーション』などの「報道番組」が同じ回数(7回)で続き、次に『ワイド!スクランブル」などの情報番組、あとは独自に設定したテーマについて課題としているケースが続く。

参考までに放送番組審議会で取り上げられた課題について、課題別の割合をグラフにして以下のように表す。

画像2

そして、ドラマについては、ある特定のドラマ番組が取り上げられたケースは過去5年間では見当たらず、ドラマについて言及があるときは「放送番組全般」を課題として取り上げられた場合である。(ただし、審議会の最後に局からの報告として言及があることもある)そのため、ドラマについて語られる機会自体がかなり限られており、そのため取り上げられる数は決して多くない。

なお、過去の同社の放送番組審議会の要旨は以下のページより、2006年開催分から閲覧が可能である。

tv asahi「放送番組審議会」
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/banshin/

また、最新の審議会委員について以下のホームページにて確認することが出来る。

tv asahi「放送番組審議会」審議会メンバー
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/banshin/member.html

また、上記ウェブサイトに掲載されている要旨以外にも、テレビ朝日の番組「はい!テレビ朝日です」でこの放送番組審議会でダイジェスト版を見ることが可能である。

「はい!テレビ朝日です」 バックナンバー
https://www.tv-asahi.co.jp/hai/backnumber/

なお、テレビ朝日に限らない番組審議委員会での審議内容ついては、名古屋大学、小川明子氏の論文に詳しい。「番組審議委員会における審議概要の内容分析 ― 在京民放テレビ6局の公開データ(2012-2016)を例に」


では、ようやく「おっさんずラブ」がどのように取り上げられたのか、その発言を具体的に見ていきたい。
先に述べた通り、同審議会がドラマを扱う機会が少ないため、おのずとその回数は少なく、現時点(2020年8月)でホームページ上で確認できるその回数は以下に赤背景で示した5回である。

画像3

以下、「おっさんずラブ」がどのように取り上げられたかを時系列に沿ってその発言内容をまとめてみたい。

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第592回 放送番組審議会報告 2018年7月26日

<要旨>はこちら
<ダイジェスト版>はこちら

テレビ朝日の放送番組審議会で初めて「おっさんずラブ」が取り上げられたのは、「おっさんずラブ」の放送終了後、1ヶ月半ほど経ったこの回からである。
この回は、具体的な番組のみに焦点を当てるのではなく、放送番組全体を課題としたものであり、ドラマについて語られた中で「おっさんずラブ」が取り上げられている。

課題「放送番組全般」
<ドラマについて>

発言者:小陳 勇一委員 朝日新聞社 論説副主幹
ドラマ「おっさんずラブ」は非常に面白かった。人の心の細やかな動きが描かれている。最近人気のあるドラマは刑事もの、病院が舞台で事件や出来事が描かれることが多いのだけれども、この「おっさんずラブ」は人の心の動きにフォーカスしたドラマだったという印象を持ちました。
私が若かった1980年代とか1990年代は恋愛ドラマが花盛りで、話題の恋愛ドラマがたくさんあり、そうした恋愛ドラマがその時々の時代状況や世相を代表するような側面もあった。
このドラマも男性同士の恋愛という一見すると男性同士の恋愛という奇をてらったような設定になっているのですが、描かれているのは「人を好きになるのはどういうことか」が純粋に描かれていて、非常に感心しました。
深夜枠でこういうドラマの制作にこれからも挑戦していただきたいと思いましたし、プロデューサーの方も20代の若い女性と読んだ記憶があるのですが、若い方が羽ばたく舞台になると非常に良いと思う。

<バラエティーについて>

発言者:秋元 康 委員(作詞家)
僕が実際に今テレビ局の制作の皆さんと接していて強く思うのは、テレビというもの(メディア)が全てをやり尽くしてしまったと。
エンターテインメントの世界、ドラマ、バラエティーの世界ではほとんどやり尽くしている感すらあります。それはなぜかと言うと、テレビというものはこういうものだ、バラエティーというのはこういうものだ、と結論が先に出来てしまっているからではないか。IPホルダー、コンテンツホルダー(映画・音楽・書籍・ゲーム・番組などの知的生産物。主に著作権を有する人や企業)としてやっていくためには“非常に濃いカルピスの原液”を作らざるを得ない。「おっさんずラブ」でも良いのですが、深夜から始まったけれども、それが映画でもヒットし、あるいはその特番も作り、ゲームを作り、というような使い方、アイディア一つのものが拡散できる時代、テレビ地上波という最強のメディアでありながら「おっさんずラブ」のような話題性を取りに行けないのはなぜなのだろう、もっと発信して「あれ見た?これ見た?」と小さなものを見つけては「これが面白い」。で、後からテレビ局はそれを追いかけるという構図になっているのが、何とも忸怩たる思いもありますし、我々がそれをやらなければいけないのではないか、と。
これは自戒の念を込めてですが、ぜひ我々が次の一手を、「昨日あのテレビ見た?」と言われるものを作らなければいけないかな、と強く思いました。

以下、<要旨>より抜粋
●「おっさんずラブ」は人の心の細やかな動きが描かれ、非常に面白かった。一見奇をてらった設定だが、人を好きになるというのはどういうことかが純粋に描かれていて新鮮に感じた。
●「おっさんずラブ」は、早く帰って番組を見なければという気持ちにさせられた。公式のTwitter、「武蔵の部屋」など色々な仕掛けと、次の週が待ち遠しくなる上手い演出が、成功していた。

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この回は放送番組全般を扱った回で「おっさんずラブ」については既に<ドラマについて>他の委員から語られているにもかかわらず、バラエティーの中でも秋元委員からも言及されており、注目できる回である。

若干わき道にそれるが、秋元氏からバラエティー番組の制作に絡めて「カルピスの原液」という発言がなされているが、どのような意味なのか探ってみたい。同局の「おっさんずラブ」やその他の事業展開、2017年から始まったテレビ朝日の経営計画(360°展開)のコンセプトに通じるものがあるためである。

過去の秋元氏のインタビュー、2008年 bizocean (ビズオーシャン) のウェブインタビュー『自信とは「軸足を動かさないこと」』の中でAKBの進化について問われた問いに対して秋元氏は以下のように答えている。

「カルピスの原液」さえあれば、それを“カルピスウォーター”にしたり、“ホットカルピス”にしたり、“カルピスアイスクリーム”にしたり、いろいろできますからね。AKB48という専用の劇場を持ったアイドルグループが「カルピスの原液」です。人気の上昇とともに、僕の所に、映像配信やモバイルコンテンツや商品化など、数限りなく持ち込まれています。つまり、それは、AKB48という「カルピスの原液」を使ったビジネスを外の人たちがいろいろ考えて提案してくれるわけです。

つまり、「カルピスの原液」のような強力な企画を作ることができれば、その「カルピスの原液」を基にしてそれを時代や環境に合わせて様々な形で展開ができる、ということである。
また、この「カルピスの原液」については同氏の著書、「企画脳 (PHP文庫)」でも以下のように述べられている。

カルピスの原液ができれば、時代に合わせてさまざまな飲み物がつくれる。僕が子供の頃、カルピスは瓶に入っていて、それを自分の好みに合わせて水で薄めて飲んでいた。その後、「カルピスソーダ」などができ、さらに時代がもっと薄味で水感覚で飲めるものを求めるようになると、「カルピスウォーター」が大ヒット商品となった。最近では、さまざまなフルーツと組み合わせた「フルーツカルピス」まで登場している。
だが、目先はどんなに新しくなっても、時代に合わせて形を変えているだけで、カルピスの原液自体は何も変わっていないのだ。それと同じように、今後どれだけオフィス機器がハイテクになろうと、やっている仕事の「原液」は変わらないはずである。
大切なのは、どれだけ骨太でパワーのある「原液」がつくれるか、ということなのだ。
出典:秋元康 著「企画脳」(PHP文庫).PHP研究所

ここで語られた「カルピスの原液」とは企画のことではあるが、企画の部分を「コンテンツ」に変えるとそのまま、全ての価値の源泉を「コンテンツ」に据えたテレビ朝日の経営計画、360度展開ととらえることが出来るだろう。
この、テレビ朝日の経営計画については、2020年の年頭の挨拶で詳しく語られている。
そこでは「コンテンツ」で稼ぎ出す収益源の多角化を目指すことが述べられており、つまり一つの番組からネット配信、映画化、関連書籍、グッズ販売、そしてそのコンテンツに派生するコンサートや展示会、VR、AR、AIなどの技術を活用した展開をし、収益を確保するということである。
秋元氏の「カルピスの原液」=「AKB」であり、多角化は映像配信やモバイルコンテンツや商品化のことである。そして、テレビ朝日の場合は主に「カルピスの原液」は「番組」であり、その番組を中心として、事業を展開することである。
それはまさに「おっさんずラブ」で多角的な事業展開が行われたことは、ファンであればよく知られたところであろう。

なお、同局の経営計画「テレビ朝日360°」資料については、こちらから確認できる。

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なお、ここからはさらに余談にはなるが、2020年4月期から放送された「M 愛すべき人がいて」について、ここで触れておきたい。

この「M 愛すべき人がいて」は「おっさんずラブ」が放送された土曜ナイトドラマと同じ枠で放送され、この原作者である作家の小松氏は同局の放送番組審議会の審議員であり、他にもこの番組は放送番組審議会の委員と関係が見られる。
小松氏の「週刊女性」(主婦と生活社)インタビューによると、この放送番組審議会の委員長でもある、幻冬舎の代表取締役社長・見城徹氏からこのドラマの原作となる本について執筆のオファーがあり、まずはドラマの制作ありきでこの原作本が執筆されたことが明かされた。
実際、小松氏の著書は見城氏が代表取締役社長を務める幻冬舎から出版され、2019年11月の時点で16万部の売上となっている。
原作本のオファーがあったのは2018年の8月とインタビューで語っていることから、ちょうどこの審議会が行われたような時期にあたる。
加えて同ドラマの制作協力はテレビ朝日と共同出資しているAbemaTVであり、このAbemaTVの株式会社サイバーエージェントの代表取締役社長である藤田氏も同審議会の審議委員でもあることを追記しておきたい。

この放送番組審議会は、立ち位置的には外部の諮問委員によってその放送局の番組を諮問するという立ち位置にある。ここでは、放送番組審議会が指摘されている問題点について殆ど触れていないが、放送法で設置が義務付けられているにもかかわらず、放送審議会自体が本来の役割を成さず形骸化しているという指摘は以前からある。 ITmedia NEWS 「番組審議委員会」を形骸化させないためには何が必要か?」で西正氏も述べているように、テレビ局がこの放送番組審議会の委員や、審議される内容もテレビ局が決めることが出来るためである。そのため、テレビ局側の意図をある程度汲むような人選、またそのような内容を選んでいる可能性もあり得る。
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第593回 放送番組審議会 2018年9月13日

<要旨>はこちら
(ただしこの要旨の中に「おっさんずラブ」に関する発言は無し)
<ダイジェスト版>はこちら

次に、「おっさんずラブ」が語られるのは、上記に挙げた回の次の会で、「おっさんずラブ」の放送が終了してある。この審議会では特定の番組ではなく、「地上波テレビが生き残るためには ~インターネット社会の中で」をテーマに審議が行われたが、「おっさんずラブ」についての具体的な発言があったのは番組最後の局側からの「総括」の中で述べられている。

ここでの注目点は、テレビ朝日側が「おっさんずラブ」のネット展開の分析を調査しており、その分析結果を公表した点である。分析ツール、またどのSNSを対象としたものはについての言及はなかったものの、公式Twitter、またInstagramでの展開を指していることは間違いない。これは、テレビ朝日が比較的、年齢層の高い視聴者からの支持はあるものの、若い視聴者層かつ女性の支持を得られたことがプラス材料として捉えられ、課題と関連でこの場での発表となったのかもしれない。

課題「地上波テレビが生き残るためには ~インターネット社会の中で」

発言者:赤津一彦 総合編成局 編成部長
最近ですとテレビ朝日では「おっさんずラブ」がネット展開で非常に話題になり、このネットの属性は80%が女性で、60%が20代という結果があり、テレビコンテンツをどう見ていただくか、というヒントになっているのかなと思っています。一方で、内館委員からもあった“アナログ”的な人の心を描くことの大切さというのは常にどの番組でも忘れず生き残りをしてきたいと思っております。

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第595回 放送番組審議会報告 2018年11月16日

<要旨>はこちら
<ダイジェスト版>はこちらはこちら

この回に放映されたダイジェスト版では「おっさんずラブ」に関する発言は認められなかったが、局側の報告としてホームページ上に掲載された要旨に以下のように触れられている。

課題番組 「報道ステーション」

<要旨>より
●東京ドラマアウォード2018【作品賞連続ドラマ部門】で「おっさんずラブ」がグランプリを受賞。主演男優賞を田中圭さん、助演男優賞を吉田鋼太郎さんが受賞。

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第596回 放送番組審議会 2019年1月18日

<要旨>はこちら
<ダイジェスト版>はこちら

次に、「おっさんずラブ」がこの放送番組審議会で語られるのは2019年1月18日(金)に行われた回である。(ちなみに「おっさんずラブ」の放送終了後から半年以上経過しており、この頃では既に「おっさんずラブ」の映画、そしてシーズン2が制作されることが発表されている。)

この回の議題は、特定の番組を取り上げるものではなく「放送番組全般」について各委員からコメントが述べられ、ドラマについての項目で「おっさんずラブ」が小松委員により、また委員長からのコメントとして見城氏からも前年度の総括的な見地からコメントが述べられている。

課題 「放送番組全般」
<ドラマについて>

■ 発言者:ノンフィクション作家 小松成美 委員
年末年始ずっと自宅にいてテレビをほぼ24時間つけ続けて見ておりましたが、テレビ朝日の番組では「おっさんずラブ」の一気見を繰り返し見たりして、父と母と80代の両親とさまざまな感想を語らいながら見ることができ、映画化も決まり、素晴らしいプログラム、昨年を象徴する大きな番組だったと思います。
「おっさんずラブ」のプロデューサーである貴島さんがNHKの「新春テレビ放談2019」に出ていたので拝見いたしましたが、こうした成功を得て当時を振り返り「序盤、視聴率がなかなか取れ本当に苦労した、現場で支え合い、励まし合いながら番組を作っていったんだ」ということを聞いて改めて新しいチャレンジをする人たちが、そういう視聴率をはじめ成績に苦労すると。
けれども、数字だけでは表れない素晴らしい成果があの番組にはあった。視聴率がトップではないけれども、時代を分けるような番組になった。そのエビデンスになったプログラムとして本当に心から尊敬をしますし、楽しむことができた。パート2を待ち遠しく思っております。

<番組全般について>

発言者:見城 徹 株式会社 幻冬舎 代表取締役社長
ドラマの去年のハイライトは「おっさんずラブ」だと思います。DVDになってそれがすごく売れて、映画にもあるわけでしょう。若い作り手にどんどん作らせるというテレビ朝日であって欲しいと思います。


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第602回 放送番組審議会報告 2019年7月18日

<要旨>はこちら
<ダイジェスト版>はこちら

この回では、小松委員によってドラマについて総括的に述べている中で「おっさんずラブ」が触れられている。
そしてこの小松氏の発言が現在、この放送番組審議会で確認できる続編に関する発言である。

議題:放送番組全般

<ドラマについて>

発言者:ノンフィクション作家 小松成美 委員
私自身、今、ドラマにはまっています。今、視聴の環境がたくさんあり、有料放送のようなものもあり、私はシリーズを一気に見ると、そこに続いてスペシャルにあたる、例えば映画化されたスペシャル版、2時間版を見る、と。そうしていくことで、その物語の迫力により心を打たれております。
その伝統を作ったテレビ朝日のドラマのシリーズ、「相棒 Season 17」をはじめ、この10月に始まる米倉涼子さんの「ドクターX」、多分これは日本中の人たちが待ち望んでいたドラマだと思います。こうして長いシーズンを培うことで脚本に厚みが出て、シーズンを重ねるごとに良い作品になっていると思います。
「おっさんずラブ」はついに映画になることになり、8月23日の公開を心待ちにしている一人です。世の中が受け入れてくれるのかどうか分からないテーマを立ち上げ、人気作品にして社会現象を起こし、やがて映画になると。それがまた違った世代にも波及していく。
平成から令和の時代にこうした作品をつむいだ本当に誇るべきプログラムだと思います。

以下、<要旨>より

●テレビ朝日のドラマは安定感があり、今見たいストーリーがラインナップされている。刑事ドラマや医療ドラマには人間の生き死に、正義と悪のせめぎ合いがある。「おっさんずラブ」は世の中が受け入れてくれるかわからないテーマを立ち上げ、社会現象を起こした。誇るべき作品。

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おわりに

これまで、「おっさんずラブ」について、テレビ朝日の放送番組審議会に見られる発言を中心にまとめてきた。

放送番組審議会では、以下の表の背景が赤色で示されている回について、「おっさんずラブ」に関する発言、または要旨が確認できるのだが、発言があったのは天空不動産を舞台とした、「おっさんずラブ(シーズン1)」にほぼ限られている。

画像2

それでも、公表されている議事要旨、また「はい!テレビ朝日です」で放送された放送番組審議会のダイジェスト版を確認する限り、ドラマについて語られる機会がかなり限られている同審議会で「おっさんずラブ(シーズン1)」については異例と言っても良いほど言及がなされている。そして、その発言は「おっさんずラブ(シーズン1)」のドラマの終了後、DVDなどの関連商品の売上や、東京ドラマアワードの受賞など評価が高まっていたころに重なり、テレビ朝日が「おっさんずラブ(シーズン1)」が最初は「視聴率的には失敗」と言われていたにも関わらず、その後、局内の評価が徐々に高まっていったと想像できる社長や幹部の発言に呼応するかのようでもある。

ホームページで確認できるこの放送番組審議会での シーズン2についての発言は2019年1月18日に小松委員の「シーズン2を楽しみにしている」という発言のみであり、その後の「おっさんずラブ」関連の発言が待たれるところである。また、同時に同審議会の議題や審議員の選定含め、今後の動向も注視していきたい。


<追記>

このテレビ朝日の放送番組審議会のまとめの前に、先に「テレビ朝日 社長定例会見からみた「おっさんずラブ」の評価について」と時系列を確認しながら読み進めると、テレビ朝日内の評価とともに確認できる。
https://note.com/uwl4dvnv3f/n/n1445c2795777


<参考>

なお、放送番組審議会の問題点やその内容分析については、以下に詳しい。

地上波民間放送局における番組審議会の現状と課題® 審議委員の構成と運営実態に着目して
小川 明子(名古屋大学)

番組審議委員会における審議概要の内容分析 ― 在京民放テレビ6局の公開データ(2012-2016)を例に
小川 明子(名古屋大学)

ITmedia NEWS「番組審議委員会」を形骸化させないためには何が必要か? 
西正


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