テレビ朝日 社長定例会見からみた「おっさんずラブ」の評価について


はじめに

これは、テレビ朝日のドラマ「おっさんずラブ」をテレビ朝日側の社長会見を中心にまとめたものです。
殆どの発言はテレビ朝日ホームページ「社長定例会見」から閲覧が可能です。(一部、年頭挨拶からの引用あり)
<社長定例会見 一覧> https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/


定例・社長会見での言及からみる社内の評価 ~
記録的なグッズ、DVDの売上、数々の賞の受賞で社内での評価が変化、劇場版、そしてシーズン2へ

2018年4月-6月に渡って放送された「おっさんずラブ(シーズン1)」はSNS上で話題となっていたものの、視聴率は平均4%程度で、一番高かった最終話でも5.7%(ビデオリサーチ、関東地区・世帯・リアルタイム)と視聴率は決して良いとは言えないものだった。そのため、「おっさんずラブ(シーズン1)」の放送当初、テレビ朝日幹部の発言からは社内での「おっさんずラブ」の評価はあまり芳しいものではなく、満足のいくものでなかったことは、社長定例会見の発言からも容易に想像できる。

それが、放送終了後、海外を含めた配信、グッズ販売、公式本、そして特にDVD, Blu-Rayの販売数が記録的なものになることが分かってからは、テレビ朝日幹部の発言の内容や頻度に変化が見られるようになる。

それらの売上に加えて、数々の賞を受賞して以降は、ある種興奮状態のような印象さえ受けるような発言が見られるようになり、その発言内容も前向きなものに変わってきている。

そして、「おっさんずラブ」劇場版の制作、発表、さらに続編である「おっさんずラブ in the sky」(シーズン2)の制作発表と放送へと続くことになるが、それぞれがどのように取り上げられたのか、また、逆に何が語られなかったのか、そこから社内の評価がどうだったのかを定例会見や社長の発言を時系列に沿ってまとめてみる。


1. 2018年4月24日 社長会見

一番最初に「おっさんずラブ」の発言が定例会見で見られたのは、同ドラマ放送中の2018年4月24日社長会見である。この要旨では、「ご指摘の通りスタートの視聴率は残念な形だが、見逃し、ネット配信でかなりの反響をいただいていることは大きな手応えではないかと思う。」という発言が見られる。
この時点では、まだ1話が放送されたばかりであり、視聴率も低く(初回視聴率 2.9% ビデオリサーチ、関東地区・世帯)、SNSの反響以外ではそれほど特別に特筆すべきものではないと捉えていることが分かる。また、ここでは「新しい作り手、新しいドラマを作っていこうという我々のドラマ戦略の非常に大きなポイント」と、土曜日のドラマ制作に対する姿勢が語られていることも注目できる。

<角南源五社長 社長会見(4月24日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0028/index.html


2. 2018年5月29日 社長会見

4月24日に続き、約1ヶ月後の5月29日に行われた定例会見では、見逃し配信が好調なこと、また視聴者窓口への反響についての言及はあるものの、亀山専務の発言には、SNS上で活発に取り上げられていること、海外を含む配信が非常に好調であることは言及しつつも、総合視聴率でも8%に達していないことを挙げ、続編の可能性については「今のところそういう予定はない」と述べている。(なお、この続編の可能性についての発言は、要旨からは見られず、スポニチ Annex からの引用)

この記者会見が発表された時期はおっさんずラブの第6話が放送された直後で、Twitterで世界トレンド1位を記録した時期であり、主に配信で海外展開への可能性が広がったという点で注目をしていたことが伺える。

<角南源五社長 社長会見(5月29日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0029/index.html
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2018/05/29/kiji/20180529s00041000190000c.html


3. 2018年7月3日 社長会見

そして、同社の上層部の発言が変わり、潮目が変わってきたのはシーズン1の放送終了後、1ヶ月程経った頃の会見である。

2018年7月3日に行われたテレビ朝日の社長定例会見では、見逃し配信が非常に好調で異例の人気であること(おっさんずラブ全話がビデオパスの全ジャンルランキングでトップ10内)、DVD & Blu-rayの予約数が、テレビ朝日のドラマ史上最高を記録し、また同時に告知した「公式ブック」や、オフィシャルグッズの予約数も過去最高水準となっていることを挙げ、非常に良い形で展開ができているとの発言が見られるようになった。

そして、ここで続編の可能性について決まっていないとは言いつつも、様々な要望が寄せられていることを挙げ、期待に応えられるよう検討しているとの発言に変わってきているのは注目できる。上層部からこのような発言があるという事は少なくとも社内で動きがあるという事の表れと想像できるからである。

<2018年7月3日 社長会見 要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0030/index.html


4. 2018年9月25日 社長会見

そして前回の社長定例会見から約3か月後に行われた9月25日の会見では、その饒舌ぶりがより顕著になり、2018年上期の特筆すべき事柄として「おっさんずラブ」がかなりの分量で取り上げられるようになり、この会見では一種の興奮状態、とも捉えられるような発言が見られる。

具体的には、

「おっさんずラブ」はDVDの予約がテレビ朝日のドラマ史上最高で、最終回の見逃し配信の再生回数が139万回を記録して、全7話累計633万回だ。若い女性の視聴が多く、ユーザー全体の8割を占めている。オフィシャルブックの発行部数も異例の16万5000部。「おっさんずラブ」展の前売り券も即完売という大盛況だ。視聴率4%だから必ずしも成功とは言えないが、配信、DVD、SNS、出版、リアルイベントが好成績で、金曜ナイトドラマに加えて、土曜ナイトドラマを編成した目的を十分に達成してくれた。続編への要望も多数寄せられ、その期待に応えたいとは思っている。」と早河会長が回答している。加えて、記者からの続編や映画化の質問に対しても「もちろん(続編や映画化に)希望している」

と前向きな回答をしている。

この発言で注目なのは既にこの時点で幹部が「期待に応えたい、希望している」と発言している点で、前回の社長会見での「期待に応えられるよう検討している」から、かなり前向きな口調に変わっている点である。
幹部のような立場、特に早河会長の口から「続編や映画化をもちろん希望している」、という発言があるということは、少なくとも社内で製作に向けて具体的に動いているということであり、この発言を持ってみても、ほぼ続編、若しくは映画化についての制作が社外へ発表されたと言っても過言ではないだろう。

そして放送外収入関連でも「おっさんずラブ」の展示会について極めて大盛況とし、さらに視聴者の声がどの程度来ているのかとの質問について武田専務は、具体的な数字は示していないものの、

「DVDの初回出荷数はテレビ朝日のドラマ史上トップなので、おそらくそのような要望もトップクラスだと思う。「土曜ナイトドラマ」は元々、視聴率10%、15%を取ろうと思って放送したわけではなく、動画配信に転用できるようなゾーンにしようというのが狙いだ。(中略)「もっとやれ」というのは常識的なことだ。そのような意向を持っていることをご理解いただきたい。」

と回答している。
さらに続いて、若い女性からの支持が高いとこと、また早河会長から見た、あのドラマの魅力的なポイントについての質問に対して会長は「意外な状況だ。必ずしもそうでもないと思うが、女性の感性があのような真剣な、独特のラブストーリーを作り上げた。そこに共感した人が多いのかもしれない。」と回答している。

さらにここで注目すべきは会社トップの早川会長が積極的に言及している点で、さらに加えるならば、「若い女性の支持が高い」と述べている点である。若い女性の支持は広告収入に結び付きやすいとされているため、テレビ局が喉から手が出るほど欲しい層である。
特にテレビ朝日は視聴率が比較的好調であるにもかかわらず、好調な視聴率が広告収入に結び付かず収入源である広告収入の落ち込んでいる状況でその意味でも、おっさんずラブがターゲットとしている若い女性から支持されたことが社内で高く評価されたことが想像できる。

<2018年9月25日 社長会見 要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0031/index.html


5. 2018年10月30日 社長会見

そして、10月30日の社長定例会見でもおっさんずラブに関する言及は止まらなかった。関連イベントやDVD等の記録的売り上げに加え、同社にとって初めて「東京ドラマアウォード」で連続ドラマ賞を受賞したことが言及された。
まず放送外収入にシーズン1がどれほど貢献したか語られている。配信の大幅な期間延長に始まり、シナリオブック、公式本、DVDやBlue-Rayの記録的な売り上げ(ドラマ作品としてはオリコン史上初めてとなる2週連続DVD&Blu-ray同時トップ10入り)、コミカライズの発表、また公式展示会「おっさんずラブ展」が東京・大阪会場とも完売し、名古屋でも行われること、また好評につき東京で凱旋展示が急遽行われることが決定したなど、放送終了後に展開されたイベントやDVD等発売の売上が好調であることが述べられた。

そして、「「おっさんずラブ」は社会現象にもなり、東京ドラマアウォード2018グランプリを受賞したことをどう分析し、また次の展開で何か考えていることがあれば教えて欲しい」という問いに対し、

「「東京ドラマアウォード」の連続ドラマ部門でのグランプリ獲得は、テレビ朝日の番組としては初めてのこと。また個人賞も、主演男優賞並びに助演男優賞を当社の番組出演者が受賞するのは初めてだ。当社としても大変喜ばしいことだ。これはひとえに田中圭さん、吉田鋼太郎さん、脚本の徳尾浩司さんをはじめとするキャスト、スタッフが一丸となり、土曜ナイトドラマを大ヒットさせるという共通の思いが結実したものだと思っている。」

と答えている。

ここからは、放送外収入(DVDなどの記録的な売り上げ、またそれ以外にも配信、展示会や公式本、グッズなどの売上)に加え、作品そのものの外部的評価、特に「東京ドラマアウォード」のような大きな賞の受賞も加わり、社内的な評価が放送当初と一変していることが伺える発言である。

<2018年10月30日社長会見 要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0032/index.html


6. 2018年 11月27日 社長会見

11月27日に行われた会見は「おっさんずラブ」の劇場版製作が発表される10日ほど前の会見であるが、2018年最後の定例会見でもあり、同年の総括的な内容が言及された。

「おっさんずラブ」を巡る発言では同社の興奮状態ともとれる状況はここでも続いており、この会見では、角南社長、亀山専務、武田専務の3名から「おっさんずラブ」がそれぞれ言及されたことは注目であり、加えて初めて同社の経営計画である「360°展開」と絡めて報告が行われた。(この「360°展開」は簡単にはコンテンツを全ての利益の根源とし、最重要視するもので、地上波を軸にコンテンツをBS・CS・インターネット・イベントに360°展開するという同局の経営計画である。詳しくはこちらを参照)

まず、各賞を受賞したことについての報告が前回に引き続き行われた。そして、放送外収入について「この作品に関しては引き続きファンの皆様のニーズに合った様々な企画展開を行っていきたい」と報告された。

そして、記者からの視聴率以外での広がりについて問われた質問に対して角南社長は

「東京ドラマアウォード」でテレビ朝日連続ドラマとして初のグランプリをいただくなど、多くの賞を受賞した。
また、「新語・流行語大賞」ノミネートについても大変喜ばしい限りだ。」と語り、続いて亀山専務からも「年間を通して、ドラマについては良い流れができて、視聴者の信頼を獲得できたと思う。金曜ナイトドラマも土曜ナイトドラマもそれぞれの役割を持ってやっているが、その中で「おっさんずラブ」のような目的に合った形の良い作品、良い作り手が出てきている。我々にとっては大変ありがたい状況になっている。」

と語っている。

さらに、この会見では、武田専務からも「おっさんずラブ」の発言は続き、

「総合ビジネス局でも二次利用展開で非常に大ヒットをしている。これまでのドラマの中では過去最高の、様々な展開ができている。23時台のドラマの二次展開の仕方、使い方の非常に良い成功事例ができた。(中略)「おっさんずラブ」に続く二次展開の成功事例をできるだけ作っていければと思う。」

と語っている。

この会見では、劇場版の発表直前という影響があるのか、また同年の振り返りという点からみても言及が多く、かつ、角南社長、亀山専務、武田専務の3名からそれぞれ発言されていることも注目である。

当初は深夜帯での放送で、視聴率のあまり良くなかったドラマであったがSNSでの抜群の反応を皮切りに、同社の掲げる「360°展開」に思いがけず理想的な展開となり、同社にとって良い意味でインパクトのあった現象であったことが伺える。

<2018年11月27日 社長会見 要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0033/index.html

2019年1月7日 「年頭挨拶」

そしてこれは定例会見ではないもの、会長の年頭挨拶の中でも「おっさんずラブ」が繰り返し紹介されている。

さらに、昨年の 4 月クールに放送した『おっさんずラブ』です。男同士のピュアな恋愛を描き、一大センセーションを巻き起こしたこの作品は、パッケージやグッズの販売、イベント等で記録的な売上をあげました。「日経エンターテインメント」の 2018 年ヒット番付で「西の横綱」に選ばれましたし、数々の賞もとりました。この大ヒットドラマの第二弾を、満を持して
制作・放送することにしました。

さらに、この年頭挨拶の1ヶ月程前に発表された劇場版についても触れ、今年の成長のカギを握るが中堅・若手社員であるとし、「おっさんずラブを以下のように紹介している。

昨年、ドラマの世界で素晴らしい成果を生んだのは「おっさんずラブ」でした。推進したのは入社 7年目の女性プロデューサーでした。かなり前から私は「若手を登用せよ」と訴えてきました。その場のひとつとして、金曜日に加えてナイトドラマを土曜にも編成しました。(中略)将来を担う中堅・若手を先頭に、強力なコンテンツづくり、そして新たな収益源の確保、この両輪を推し進めていくことによって、私たちは「新しい時代のテレビ局」への進化を遂げ、将来待ち受ける荒波を乗り越えていきましょう。

<早河洋代表取締役会長兼 CEO「年頭挨拶」>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/press/0029/files/190107.pdf


2019年 2月26日 社長会見

「おっさんずラブ」(シーズン1)に関する発言なし
<角南源五社長 社長会見(2月26日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0034/index.html


7. 2019年3月26日 社長会見

そして、劇場版おっさんずラブ、そしてドラマの第2弾が発表されたのち、2019年3月26日に行われた社長定例会見では、早川会長から2018年度を振り返っての所感と新年度の抱負として、おっさんずラブについて触れられている。

「一大ブームを巻き起こした「おっさんずラブ」は、広告が振るわぬ中、DVDや出版、イベントなど高い収益をあげた。土曜ナイトドラマの新設と若手の起用が功を奏した形で、大変うれしいブレイクだった。」「また年内に公開が予定されている「おっさんずラブ」の映画とドラマの第2シリーズのコラボレーションも楽しみにしている。」

この段階では、まだ第2シリーズについてのキャストや時期については発表されていないものの、映画とドラマのコラボ化が言及されており、上層部からも期待をもって注目されていることが分かる。

<早河洋会長兼CEO 角南源五社長 会見(3月26日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0035/index.html


2019年 4月23日 社長会見 

「おっさんずラブ(シーズン1)」に関する発言なし
<角南源五社長 社長会見(4月23日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0036/index.html

2019年 5月28日 社長会見

「おっさんずラブ(シーズン1)」に関する発言なし
<角南源五社長 社長会見(5月28日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0037/index.html


2019年6月 テレビ朝日ホールディングス トップメッセージ

ちなみに、以下は定例会見でも年頭挨拶でもないが、「テレビ朝日ホールディングス」のトップメッセージの挨拶文に同社の経営計画「テレビ朝日360°」に触れ、「おっさんずラブ」(シーズン1)について触れられている。

2018年度は、その成功モデルとなる優良コンテンツが新たに生まれました。4月クールの土曜ナイトドラマ「おっさんずラブ」は、地上波の視聴率はあと一歩でしたが、SNSなどを通じて大きな旋風を巻き起こし、動画配信、DVD、書籍、イベントなどで記録的な収益を上げました。夏には劇場版が公開される予定で、地上波での第2弾の制作も決まっております。

テレビ朝日ホールディングス トップメッセージ
https://www.tv-asahihd.co.jp/message/


8. 2019年 7月2日 社長会見

そして定例会見に戻ると、次に「おっさんずラブ」が幹部から語られるのは「劇場版おっさんずラブ」の公開が約1か月半に迫ってきた頃、映画の公開が8月23日に公開に控えた頃である。
この会見では、放送外収入の報告の中で海外からも強い関心を持たれており、テレビシリーズ(シーズン1)は計8つの国・地域で放送されていることを述べた上で、劇場版は香港、マカオ、台湾等での上映が予定されていることが報告された。

<亀山慶二社長 社長会見(7月2日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0038/index.html


9. 2019年 9月24日 
早河洋会長・CEO 亀山慶二社長・COO会見

そして、劇場版おっさんずラブが公開されて1か月後の2019年9月24日に行われた会見では、早河会長から同じナイトドラマ枠での「おっさんずラブ Season 2(仮)」について結果が楽しみだとし、明るいニュースとして以下のように述べている。

映画「劇場版おっさんずラブ~LOVE or DEAD~」がヒットしたことだ。目下、興行収入25億円が見えている段階だ。女性層中心でリピーターもいると聞いている。10月スタートの土曜ナイトドラマでのパート2への最高のバトンタッチとなりそうだ。

さらに劇場版については、海外での公開についても報告された。台湾での公開を皮切りに香港、マカオでも公開され、特に台湾での好調ぶりに言及し、「今年台湾で上映された日本の実写映画、「マスカレードホテル」に次いで、初週3日間の観客動員数が第2位を記録した。」と海外展開とも、手ごたえを感じていることが伺える。

この会見では、幹部の口から映画以降の展開、土曜ナイトドラマでの「パート2」としてドラマが制作されることが語られたものの、詳細については述べられていない。(なお、この会見の3日後に「おっさんずラブ in the sky」の発表がなされた。

<早河洋会長・CEO 亀山慶二社長・COO 会見(9月24日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0039/index.html


10. 2019年 10月21日 社長会見

そして、「おっさんずラブ」シーズン2の発表があってから約1ヶ月後、シーズン2の放送を10日後に控えて行われた定例会見では、10月クールの連続ドラマで最後のスタートとなる11月2日から放送が開始されることに触れたのち、イベント関連で「おっさんずラブ」のコンサート、続けて劇場版の興行収入が25億円を突破したことの報告が行われた。

<亀山慶二社長 社長会見(10月21日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0040/index.html


11. 2019年 11月26日 社長会見

この定例会見は、「おっさんずラブ」シーズン2の放送が始まって初めての会見となるが、まず報告があったのは劇場版に関する事であった。

夏には昨年社会現象となった「おっさんずラブ」の劇場版が大ヒットとなった。8月23日公開の「劇場版おっさんずラブ~LOVE or DEAD~」は、11月25日までの95日間累計で動員数が191万4671人、興行収入が26億0482万円と、おかげさまで大変多くの皆様にご覧いただくことができた。

そして、放送外収入の報告で副会長から動画配信関連で以下のように報告なされた。

11月2日から放送を開始した「おっさんずラブ-in the sky-」だが、KDDIとの協業の「ビデオパス」で見逃し見放題配信を行い、4週連続で国内ドラマジャンル1位を獲得している。さらに、この「おっさんずラブ」については、放送に合わせ、12月22日から六本木けやき坂ミュージアムでドラマの世界観を体験できる展覧会を開催する予定だ。

この会見は「おっさんずラブ in the sky」(シーズン2)放送中に行われた唯一の定例会見で、結果的にこれが定例会見で読み取れる成果に関する発言である。

<亀山慶二社長 社長会見(11月26日)要旨>
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0041/index.html




そして、これ以後は「おっさんずラブ in the sky」(シーズン2)放終了後に行われた定例会見である。

年頭挨拶も含め、テレビ朝日のホームページに掲載された社長会見や年頭挨拶からは残念ながらほぼ、具体的な成果にあたる部分は見当たらなかった。

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 2020年 早河洋会長・CEO 「年頭挨拶」

「おっさんずラブ in the sky」(シーズン2)に関する発言無し

早河洋会長・CEO 2020年「年頭挨拶」(要旨)
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/press/0035/index.html


2020年 2月25日年 社長会見

「おっさんずラブ in the sky」(シーズン2)に関する発言無し

亀山慶二社長 社長会見(2月25日)要旨
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0042/index.html


2020年 3月31日
早河洋会長・CEO 亀山慶二社長・COO 会見

「おっさんずラブ in the sky」(シーズン2)に関する発言は、コロナウイルスの影響下でのイベントに関するもので、開催中のものの一つとして、大阪で開催中の「おっさんずラブ展in the sky-大阪」が挙げられた。

早河洋会長・CEO 亀山慶二社長・COO 会見(3月31日)要旨
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0043/index.html


2020年 6月30日 社長会見

「おっさんずラブ」に関する発言無し
亀山慶二社長 社長会見(6月30日)要旨
https://company.tv-asahi.co.jp/contents/interview/0044/index.html



まとめ

ここまで、定例会見をもとに「おっさんずラブ」に関する発言をまとめてきた。

定例会見の発言を読んで分かったことは放送終了後、比較的早い時点で続編に向けて動いていたことが想像できるところである。「おっさんずラブ」(シーズン1)は視聴率という点からは成功とは言えない低視聴率の深夜ドラマではあったが、放送終了後に今までの視聴率という指標に寄らずとも大きな利益を生むと分かった時点で、すぐに手のひらを返したかのような発言が上層部の会見で見られるようになった。
それらを具体的な発言から再度追ってみると、「おっさんずラブ」(シーズン1)放送中の2018年5月29日の段階では「続編の予定はない」とはっきり会見で述べているが、放送終了後、特にDVD & Blue-Rayの予約数や動画配信の記録が見えるころ、約1ヶ月後に行われた会見(2018年7月3日)では、「期待に応えられるよう検討している」に発言が変化している。さらに、決定的なのは、その次、2018年9月25日の定例会見の発言で、ここでは会社トップである会長の口から「もちろん(続編や映画化に)希望している」と述べている点である。通常、会社のトップから発せられた言葉と違う動きを社内ですることは考え難い。つまり、この時点で既に社内では続編に向けて具体的に動いていたと考えられる。

視聴率の振るわなかったドラマがこれほど定例会見で語られることになったのは(繰り返しになるが)これまでの視聴率という指標をひっくり返し、視聴率が悪くてもそれ以外の方法で収益を得ることが出来ることを証明したためでもある。今後、広告収入の伸びが期待できない状況で、これは奇しくも、同社が2017年から掲げていた経営計画「テレビ朝日360°」にぴたりと当てはまったことで、社外にアピールするに十分、理想的なモデルとなったためと考えられる。テレビ朝日ホールディングスの挨拶にも見られるように、偶然にも経営計画の成功モデルとして祭り上げられてしまったのではないか。

最後に

当然と言えば当然ではあるが、記者も入る定例会見や会社の上層部から出る発言である以上、内容については相応しい内容かどうか社内的「ふるい」があり、各関係部署と連携し、話す内容を精査しているはずである。

定例会見では、アピールできる点については積極的に数値を出して積極的に発言しており、逆を言えば、その場で語られていない点は社内でアピールするに相応しい「ふるい」から漏れていると考えられる。そのように考えると、定例会見やその他文書で見る限り、「おっさんずラブ」シーズン1とシーズン2の違いは著しいと言わざるを得ない。シーズン2についてはその場で語られないことで社内の評価を雄弁に物語っている、とも言えるだろう。


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