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恋が終わったらお寿司を食べよう



恋が終わったら美味しいものを食べよう、そうだ、先月から作りたかったサーモンのキッシュを焼こう

そう思ってスーパーに行った連休最終日。

スーパーに行くだけなのに、ZOZOから届いたばかりの黒いワンピース(今年流行ってるよね〜あれだよあれ)を卸して、伸びてきた髪の毛をふわふわと巻いた。片耳にイヤリングもつけた。チークとリップの色を合わせたら、なんだか久しぶりに見る「女の子」な私が鏡に写った。
誰のためでもなく自分のために「可愛い」を見に纏うのって、あぁこんなに気持ちのいいことだったんだ。久しく忘れていたなぁ。


パイシートはうちにあるから、鮭とブロッコリーと…あとは毎朝食べる納豆と…旬の果物にはとてつもないエネルギーが宿っている気がするから柿も…と食材を選び、最後にお惣菜コーナーに到達する。夕飯どきだからお腹は空いている。チラッと、パックのお寿司が目に留まる。私の方をじっと見てくる、お寿司。



♪恋が終わったらお寿司を食べよう

って、頭の中で誰かが歌う


そうだったそうだった、美味しいものと言えばお寿司だった。
(あ〜〜〜日本人に産まれて良かった〜〜〜)の代表格、お寿司。
お高いところで食べても庶民派回転寿司で食べても、大抵美味しくてほっぺがとろけてしまう、君の名はお寿司。
それに私は、人生パッとしたいなと思うタイミングで回らないお寿司屋さんに行って、カウンターでもぐもぐするような逞しい女の子だった。忘れてた。
もうカゴには食材が入っているし、このあとキッシュを焼きたいし、今日はおうちでお寿司だ!!とパックを手に取った。



家に帰る前にコンビニに寄った。
別れた人がうちに残したものを発送したくて。
レジの店員さんはメジャーで2、3回三辺を測った後、「…すみません、長さがオーバーで少し高くなりますがよろしいですか?箱、小さいのに変えますか?」と丁寧に聞いてくれた。全然構いませんと答える。もう一刻も早く、気持ちがブレる前に段ボールを手放したかった。

値段は「少し高い」という割に1400円程度で、お支払いをしてコンビニを出る。冷たくて柔らかい雨が降っている。
あれだけ早く手放したかった箱なのに、うちにあっても困る荷物なのに、手放してしまうと途端に寂しくなる。
今すぐレジに駆け寄って「やっぱり送りません!返してください!」なんてドラマチックなこと今の私にはできなかったし、振り返っちゃダメだと思った。

私の4年間はたった1400円だったのかぁ
それに、雨が降るコンビニで終わりを迎えるのかぁ
人生って何があるかわからないよなぁ
そう思って帰宅した。


おうちに着いてから早速お料理に取り掛かる。キッシュは意外と仕込みが簡単で、なんならオーブンで焼く工程が本番だから、私よりオーブンの方がいい仕事をしてくれる。

オーブンで焼いている間に、
♪恋が終わったらお寿司を食べよう、と誰かが歌うがままに、お寿司を食べた。
うちにあったレモンサワーも一緒に。
缶には度数5%と書いてあって、すぐさま頭の中の尾崎世界観が「5%」という曲を歌い出す。


終わらせ方が分からなくて
なんとなく振った右手の缶ビールの残りが、
ピチャピチャ情けない音立ててる

クリープハイプ / 5%


ほんと、私の恋が終わるたびに、クリープハイプは空になった心に寄り添ってくれる。
この恋の終わらせ方は最後まで分からないままだけど、一つ言えるのは、荷物を送り返すのは正しいってこと。そしてもう誰も、何も責めないこと。
そんな答え合わせをした。クリープハイプ、今回もありがとう。


夜になると目につくものの8割がセンチメンタル・モードになるから大変。我ながら、センチメンタルを主食に生きる妖怪みたいだと思う。
でもこれ、悪く言えば妖怪だけど、良く言えばロマンチスト。
そう、センチメンタルとロマンスの感性を忘れない27歳の私。スーパーに行くためだけに髪の毛を巻く27歳の私。こう考えるとなかなかヒロインじゃん?


しばらくはふわふわとしたまま、たまにセンチメンタルを味わったり、美味しいものを食べたりしながら、生きてみようと思います。今焼いているキッシュは明日いただこうと思います。なにとぞ。

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