Spotifyがラジオを解体し再構築する未来
Spotifyが攻めてるなあ、というニュース。
ラジオはどんどん形が変わっていっているメディアですが、Spotifyが打ち出した流れは本格的に「ラジオとこれまで呼ばれていたもの」を解体するのかもしれないと思っています。
Spotifyとラジオの境目はどこか
Spotifyは音楽ストリーミングサービスとして紹介されることが多いですが、ポッドキャストも配信しています。国内外問わず、個人制作のものから既存のラジオ局が制作したものまで様々な番組を聴くことができます。
日本国内の場合、ラジオ局の番組はRadikoで聴くことが出来るので、電波で聴くかアプリ経由かという区別は選択肢のひとつでしかない状況(災害時の話は本記事ではとりあえず横に置いときます)であり、さらにSpotifyのようにポッドキャスト番組としてラインナップされるとラジオ局が制作しているか個人が制作しているか、もリスナー側からするとそこまで重要な要素ではなくなっているのではないかと思います。
ラジオの定義はどんどん曖昧になっている、とも言えますし、本質的にはSpotifyとラジオには境目などない、とも言えます。
プラットフォーマーが番組を作り始めた
映像メディアのほうが先行してますが、NetflixやAmazon Primeなどコンテンツのプラットフォーム事業を行っていたところが、自社コンテンツを作る流れになってきています。
音声についても同様で、たとえばSpotifyは日本でもオリジナル番組を配信開始しています。
冒頭のニュースはさらにこの流れを加速させるもので、プラットフォーマーであるSpotifyが自社でこういう番組を作るということはラジオをある意味で進化させ、ある意味で解体するものではないかと思っています。
Spotifyによる番組要素の解体
冒頭ニュースの、アメリカでSpotifyが始めた番組は番組のトーク部分と音楽部分をいったん解体し、音楽部分についてはSpotify上での視聴傾向に基づいてパーソナライズされる、という仕組みです。同じ番組を聴いていても音楽はひとりひとり違うものになる、ということですね。ディレクターやパーソナリティによる「選曲」という作業は制作者側のものではなくなることを意味します。
コンテンツをパーソナライズするというのはインターネット広告の最も得意とするところで、日本でもRadikoの広告については番組内にひとひとりパーソナライズされたプログラマティック広告の仕組みが既にあります。
Spotifyはさらに、番組コンテンツについても音楽部分はパーソナライズできるということですね。
リスナー側からすると、音楽が自分好みのものになることでより番組とのエンゲージメントが強くなる、とも言えます。おそらく制作者側からすると、「知らない音楽に偶然出会う機会を提供するのがラジオの役割」という気持ちもあるでしょうが、Spotifyは知らない音楽にどんどん出会いたい人にはそのような、決まったジャンルや曲だけ聴いていたい人にはそのような聴き方ができる機能がすでにあるのです。
Spotifyが解体した先に作るかもしれないラジオの未来
現状、まだ冒頭のニュースの番組は日本からアクセスできないようなので詳細わかりませんんが、この番組はトーク部分と音楽部分を分けたプレイリストの形で提供されるようです。この形を「番組」と呼んでよいのかどうかはわかりませんが、こういう形になっていくんでしょう、という感じがします。
この仕組みがSpotifyの自社制作のみならず一般の(ラジオ局を含む)制作者にも開放されることは想像に難くないですが、そうなると聴いてもらうためには結局トーク部分のコンテンツ力勝負、ということになります。
現在は音楽部分のみ(+広告)というパーソナライズですが、番組部分のパーソナライズもより進められるのではないかと思います。そうすると、バラバラの制作者が作った細切れのトークに、パーソナライズされた音楽がミックスされて再生されるプレイリストのようなもの、が番組と呼ばれるようになっていくのかもしれません。
それをSpotifyのリコメンドエンジンが行う面白さもあるかもしれませんし、トークと音楽をうまくミックスすることを専門とする、キュレーター的なプレイリスト制作者が新しい時代のラジオ制作者になっていくのではないかなあ、という気もします。
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