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3000円以下くらいから始める中華イヤホンの世界

2023年はイヤホンをたくさん試した年でした。低価格帯からカスタムIEMまでいろいろ楽しんだのですが、なかでも「中華イヤホン」の世界はいまめちゃくちゃ面白いなあと思っているので、興味がある方・まだ知らない方に少しでも参考になれば、と思い書いてみます。


中華イヤホンとは

俗に「中華イヤホン」と呼ばれますが、名前のとおり中国のメーカーが製造販売しているイヤホンのこと。中国製というと品質に心配がある方もいるかもしれませんが(実際に粗悪品が無いわけでもありませんが)、いま中華イヤホンと言われ人気のあるメーカーのほとんどはテック企業が集積する深圳に立地していたり、それなりに歴史ある電子機器メーカーの技術が導入されていたりなど高い技術力を持つところが多く、それでいて比較的安いものがたくさんあって非常に活気のあるジャンルだと感じています。

なぜ中華イヤホン(有線)を選ぶのか/ワイヤレスじゃないの?

日本はもちろん世界中にたくさんのイヤホンメーカー、ブランドがある中で、あえて相対的に知名度の低い中華イヤホンを選ぶ理由はなにか。
個人的には、「個性」「価格」がその魅力だと思っています。
日本のメーカーはどれも品質が安定していて、音もかなりバランスの取れた製品が多いです。そのぶん、優等生的というか、あまり攻めたバランスのものだったり、尖った個性の音を鳴らしてくれる製品は少ない印象があります。欧米のメーカーも程度の差はあれど同じ傾向に感じます。
一方で中国メーカーは新興企業が多く、チャレンジングな姿勢を感じる製品が数多くあります。詳しくは後述する具体的なレビューを見てほしいのですが、「こんなバカみたいに低音鳴らすの!?」とか「めちゃくちゃボーカル付近持ち上げてる?」とか、とにかく個性がキツイ製品があります。
そのぶん合わない人には合わないのかもしれませんが、他のメーカーで体験できない、個性的な音に出会えるのは面白いところのひとつ。
それから、「ワイヤレス全盛時代に有線イヤホン?」とよく聞かれます。ワイヤレスも実際使っていて便利だと思いますが、ワイヤレスイヤホンは単純に音を鳴らす以外の技術もたくさん詰め込まれている製品です。一例ですが、通信規格やバッテリーマネジメント、ノイズキャンセリング、などですね。これら全てを一定の品質で作れるのはそれなりに幅広い技術を持ったメーカーということになりますが、「音を鳴らす」に特化して良いのなら、新興メーカーも参入の余地があります。これが面白い製品をたくさん産んでいる理由にもなっているのでは、と思っています。
価格面でも、バッテリーや通信にかかるコストを考えなくてよいので、安価に製造できることになり、「個性的な音を楽しむ」という目的なら有線の中華イヤホンは低価格で楽しめる趣味としてもオススメです。
(中国メーカーでもワイヤレス作ってますし良い製品もあります、念のため)

永遠の難題、「良い音」とはなにか

「良い音がするイヤホンはどれ?」と聞かれたりしますが、これは答えのない難題だと思います。以下、筆者の「良い音」に対する考え方を記しておきますが、様々な価値観があって良いと思いますし、あくまで個人的な見解だということでご覧ください。
「音の感じ方」は「味覚」と似ているなあ、と思います。同じ食材を同じ料理人が同じレシピで調理しても、食べる人によって感じ方が変わるように、同じ音楽を同じ再生機器で聴いても、当然人によって「聴いた感じ」は異なります。同じ人であっても、直前に悲しいできごとがあったとか、おなかが空いているとか、状態によって受け取れるものが変わりそうです(一部の研究では、睡眠不足で音を聞くと受け取れる情報量が減る、なんていう報告もあるそうです)。
その上で、味覚には辛いもの好き、甘いもの好きなど好みがあるように、心地よく感じる音の種類や傾向、といったものがあります。音楽の好き嫌いとはまた別の話で、音の傾向の話なのでわかりにくいのですが、よくイヤホンレビューで使われる言葉でいうと、たとえばウォーム系が好きとか、中高音がきらびやかなのが好きとか、定位感がはっきりしてるのが好きとか、そういうやつですね。
イヤホンのような機器を選ぶ際には、この「自分の好み」をある程度把握しておくことは、味覚で言うところの好きな料理を選ぶようなものでとても重要です。ここがズレているといくら高級品を買ってもなんか好きじゃない、ということになりがち。
その上で、すでに述べたように「最後に受け取るのは自分の『耳』と『脳』」という、極めて環境に左右されるデバイスだと認識しておくことも大切だと思います。メンタルによっても聴こえ方は全然違う、と理解して、特に聴き比べをするときなどは心身の状態が整っている時を選ぶと良いかもしれません。
オーディオの世界には、たとえば貼ると音が良くなるシールとか、はたまた供給される電力によっても音が変わるなどという話もあり、このへんはよくオカルトだと批判されたり嘲笑されたりします。個人的には、こういう話は「データ測定上の差異は出ない」のでは、というのが結論ですが、それを楽しみながらやっている人にとってはメンタルの満足感から感じ方は変わるかもなあ、と思っています。本記事の趣旨とはズレますが、オーダーメイドで作るカスタムIEMは自分の好みの色や装飾にしますよね。それを着用すると気分が上がって音楽も楽しく聴こえる。そういうことは充分に有り得るし、本人が楽しめていれば良いのでは?というスタンスです。

おすすめの中華イヤホン

前置きが長くなりました。ここからは筆者が実際に買って試した具体的なオススメ中華イヤホンを掲載していきます。すでに書いたように「個性強め」かつ「好みの音かどうか」が重要なポイントですので、レビューを見て「自分も好きそうだな」と思ったらぜひ試してみてください。基本的には「解像度が高い=各楽器の音がしっかりと分離して聴こえる」「中高音域がきらびやかに鳴る=ボーカルが聴きやすい」みたいな音が好みです。
ちなみにAmazonで購入できるものを中心に選んでいますが、配送まで時間がかかっても構わないという方はAliexpressも合わせて確認すると、クーポンとかキャンペーンによってはAmazonより結構安く購入できることもありますので参考程度に。

KZ ZSTx

中華イヤホンブームの一端を担ったのでは、というくらい一時話題になったZSTx。KZはこのジャンルのリーディングメーカーと言ってもいいと思います。音はとにかくドンシャリで元気いっぱい鳴るぞ!という感じ。バランス型の大人しいイヤホンから変えるとその違いにビックリするくらいには尖った音がするので、最初の一本としても楽しめると思います。
一方でちょっと長い時間聴いていると疲れる音質かもしれません。まずは試してみて欲しい機種でもあります。

HIDIZS MS-1 Galaxy

HIDIZSは中国広東省にあるメーカーで、DAPなどポータブルオーディオ関連機器を多数製造していて技術力にも定評があります。ラインナップの中ではエントリーモデルのMS-1 Galaxyは、どの音域も解像度の高いクリアな音質で聴く音楽のジャンルを問わず楽しめると思います。KZ ZSTxが聴き疲れするという人はこれを是非試して欲しいです。

KZ ZSN ProX

KZは全般的にドンシャリ傾向のイヤホンが多いのですが、その中でもZSN ProXは全音域の解像感が高く、非常にバランスの取れた製品だと思います。KZの個性はしっかり感じつつも、クセが強すぎないので普段使いしやすいイヤホンだと思います。3000円以下でこの音を鳴らすのはKZすごい、ってなります。

JSHifi LF3

KZ系のドンシャリとは「味付けの違うドンシャリ」といった感じ。少しおとなしい感じもしますが、各音域がしっかり鳴っていて解像感としてもぼんやりした印象は無いです。見た目もオシャレで低価格イヤホンには見えない感じも気に入っています。
※LF3が現在Amazonでは品切れになっている模様、同ラインナップのLM3は購入できるようです(こちらは未試聴なので音の傾向は不明)

KZ Krilla

またKZかい!と言われそうですがこれはKZのラインナップでも異色の製品。低価格帯ではほとんど見ない「スイッチ搭載」型の機種になっています。4つのスイッチを切り替えることで低音や高音を強調したり、音の傾向を変えたりして楽しむことができます。16種類のセッティングがあるので違いを楽しみつつ好みの音を探すための1本としてもおすすめ。

MOONDROP(水月雨) LAN -蘭-

ここからは少し価格帯が上がってしまうので、特にオススメのものをいくつかだけ。
MOONDROPは低価格帯から高級品まで幅広くイヤホン/ヘッドホンを作っている人気メーカーです。これあまりに気に入ったので買った時に別記事にしています。気になる方はこちらもどうぞ。初めての中華イヤホンにもオススメです。

qdc SUPERIOR

これ2023年にイヤホン界隈ではかなり話題になったので知ってる人も多いのでは。qdcはカスタムIEMで有名な歴史あるメーカーで「中華イヤホン」として紹介するのはどうかとも思いますが、本拠地は中国・深圳の高級イヤホンブランドです。
もしイヤホンに1万円ちょっと出してもいいかな、と思ったら間違いなく選択肢に入る一本だと思います。qdcのなかではエントリーモデルに位置付けられる製品ですが、バランスも解像感も素晴らしく、高級カスタムIEMの技術が惜しみなく投入されている感じがします。

Truthear HEXA

qdc SUPERIORも試聴して、聴き比べた結果かなり迷って購入したのがこちら。Truthearは2022年創業のオーディオブランドで、新進気鋭の中国メーカーです。音に刺々しい個性はなく、ある意味優等生的な感じもしますが、多ドライバ(ドライバ=音を鳴らす部品、この製品は1DD+3BAと4つのドライバ搭載)製品ならではの音で、ひとつひとつの音の粒がしっかり耳に注ぎ込まれる感じがします。単純にすごく好みの音で買った感じでした。
Truthear製品はこのHEXAを含め3製品が現在購入できます。

まとめ

今回紹介できたのはほんの一部ですが、中華イヤホン界隈は次々と個性的な製品が投入されていてかなり面白くなってきています。そんなに買ってどう使い分けてるの・・・?なんて言われますが、毎日同じ料理を食べないように、毎日同じものを着ないように、音楽もその日聴きたいものや気分に合わせてイヤホンを変えると、楽しみ方がぐっと広がるのです。ぜひお気に入りの一本を見つけてみてくださいね。

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