或る花についての報告 |詩
研究室を閉じその中で照明を消し
ひかるその花にぶ厚いガラス壜をかぶせる
待つ 時計は外に置いてきた ただ待つ
表示される時間のない暗闇のなかほど
退屈で長く 時間を感じさせる
眠くなると上司に持たされたアンプルから
注射器で腕の血管に刺す
そしてもうねむくはないけれど長い
夜が長い けれど明けようにも
研究室の戸は開かない
ずっと夜
ひかるその花の光が
黄から薄緑へ変わっていた
記録はどこかでモニターされてるから僕の問題じゃないよ
じっと記録されている
ひかる花と暗やみのなかのぼくと
ずっと夜
薬剤のせいで奇妙な汗がにじんできて呼吸が
おかしくなってきたけど
花が変わるまで扉は開かない
どこでこの暗やみを終わりにしていいのかぼくは知らないから
ずっとこのまま夜がつづく花といっしょに
上司が「***くん、もういいわ」と扉を開けるまで
ガラス壜のなかがすこしずつ曇っていく
花のまわりに靄がかかり、周囲には崖が見え
みどり生い茂る谷がある。
すぐぼくのちかくに川が流れていた、
山の頂が顔を上げると向こうに
照明弾なような花火が何発か炸裂する
ガラス壜の花のまわりにパンッパンッとひかって、ガスが満ちてその中にぼんやりと花の姿があるけれど、白くて、びんが白いけむりに、そのまま光っていて
彼女は腕時計を見る、午前九時十八分、足を止め研究室の扉を開けた「***くん?」
その部屋の爆風で彼女のからだは破裂する
最終修正 2023年4月17日 夕方
初稿公開 2023年4月17日 午後
©︎かうかう