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#7『この本を盗む者は』感想

今回ご紹介するのは、深緑野分(ふかみどりのわき)先生の『この本を盗む者は』という作品です。

*以下ネタバレを含みますのでご注意ください*----------------------

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○あらすじ

書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の御倉深冬。父は巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めるが、深冬は本が好きではない。ある日、御倉館から蔵書が盗まれ、残されたメッセージを深冬が目にすると、本の呪い"ブックカース"が発動し、街は物語の世界に姿を変えていく。泥棒を捕まえない限り元に戻らないと知った深冬は、様々な本の世界を冒険していく。

読み始めたら最後、一気に世界観に引き込まれる!


○装丁について

実は、本作の装画は、装丁を担当したデザイナーの鈴木成一さんによるコンペによって決定されました。


あれ、鈴木成一さん…?

どこかで聞いた名前ですね…

そう、このnoteの"#5『ℹ︎』感想"にも登場しました、

西加奈子さんの『ℹ︎』の装丁を担当されたのと同じデザイナーの方です!


そうして、2020年3月に行われた装画コンペ。

応募総数 約130点の中から最優秀作品に選ばれ、見事装画として採用されたのは、

フリーランスのイラストレーターとして活動されている宮崎ひかりさんの作品となりました!

©︎宮崎ひかり 『この本を盗む者は』装画コンペ 最優秀作品
宮崎 ひかり(みやざき ひかり)

1988年生まれ、兵庫在住。
フリーランスイラストレーター。イラストレーターズ通信会員。装画、書籍のカットなどを中心に活躍中。

またこれも書き込みが細かくて美しいですね。

自分としては、読み終わった後に装画を見て"納得感"のあるものが好きなので、本作の内容が散りばめられているこの装画は素晴らしいと思いました。

また、実際に刊行されている今だからこそ、本作は自分の中で"紫色"というイメージですが、

装画の段階でここまで作品の世界観がイメージできる

のは本当にすごいです。

デザイナーやイラストレーターの方、
本当に尊敬します。


○感想

正直なことを言うと、本作の始め数十ページくらいは、個人的にはあんまり という感じでした。(失礼は承知です。ごめんなさい。)

しかし、実際に御倉館で本の呪いブックカースが発動した後くらいから、ページをめくる手が止まりませんでした。

やはり、

本の中で"本の中"に入る

というのが、色んな世界感が味わえてとても楽しかったです。

一冊の本を読んでいるのに、何冊も読んでいるかのような、不思議な感覚でした。

それぞれの本の世界の雰囲気が細かく表現されていて、イメージしやすかったのでとても読みやすかったです。

さて、本作は最近自分が読んでいる本の中では珍しく"存在"や"命"という主題ありきではなく、"物語"としてのストーリーを純粋に楽しむ作品だったと思います。

そんな本作で私が良いと思ったのは、

終わり方

です。

ネタバレですが、本作では最後に

本嫌いが少し克服された深冬が本を執筆します。

それは、ここ最近御倉館で起きた不思議な体験を記したもので、何を隠そう、

この深冬が書いている本こそが、
本作『この本を盗む者は』なのです。

すごくないですか?

読んだ時なんだか背筋がゾッとしました。

こういう、最初と最後が繋がる感じの本、めちゃめちゃ好きなんですよ。

構成として綺麗で本当に素晴らしいと思いました。

この感動は本作を読んだ方にしかわからないと思いますので、まだ読んでない方は一度読んでみてください。

本作を誰が書いているのか

を想像しながら読むと、良いと思います。


世界観が凄い伝わる作品でした。

とっつきやすいミステリーや世界観が強い本が好きな方におすすめしたい一冊です!


○最後に


私が本作の最後に加筆するなら、このように加筆したい。


彼女が書き上げたそれはまるで装画コンペで最優秀賞でも獲ったかのように美しい装幀の本で、『この本を盗む者は』というタイトルが明朝体で品良く印字されていた。


○著者について

・深緑野分(フカミドリ ノワキ)

1983年神奈川県生まれ。2010年「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年に刊行した長編小説『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞7位、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』では第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞第3位、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補となった。


Twitterに本のリンクも貼っているので、是非見てみてください!


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