2019年インバウンドを総括!来年度予算から2020年の行方も予測する 週刊インバウンドニュースマガジン12月4週号

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2020年度観光関連予算が閣議決定。「稼げる観光」産業づくりに舵を切る

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12月20日、2020年度の観光庁関係政府予算案が閣議決定されました。今年8月に行われた予算概算要求概要と合わせてご紹介します。
⇒予算要求をご紹介した本メルマガ9月1週号

令和2年度 観光庁関係 予算決定概要 (観光庁)
令和2年度 観光庁関係 予算概算要求概要 (観光庁)

大きな項目としては以下の通りです。

ストレスフリー観光の環境整備 273億8100万円
戦略的訪日プロモーションと観光産業の基幹産業化 156億5300万円
地域の観光資源の整備、体験滞在の満足度向上 237億3800万円
観光統計の整備 6億5300万円
その他(経常事務費など) 6億7000万円

その他、以下のような予算も充当されます。
東北の復興(復興枠) 33億9500万円
三の丸尚蔵館の整備 29億円

なお、予算総額は請求時の約771億円(東北復興枠含む)から多少減少した約715億円(同含む)となっています。

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ほとんどの予算項目は予算請求時から大きく変わっておらず、政府の方針や重点分野、課題感は以下のように整理することができるでしょう。

・旅行者の出入国時のストレスを減らすこと
⇒出入国時の手続きをスムーズにする設備や仕組みの導入

・訪日客が快適に旅行できる環境を整備すること
⇒トイレの洋式化・キャッシュレス決済の導入を支援、安全情報の提供などを実施

・人材不足を解消すること
⇒人材の育成・確保・受入に関する制度、環境の整備

・世界の中で日本の観光知名度を上げること
⇒世界に向けた各種プロモーションを実施する

・全国に競争力のある観光地を作ること
⇒DMOなどへの支援実施

・「稼げる観光産業」を育てること
⇒自然・文化資源の活用、特定テーマ(スノーリゾート、ナイトタイムエコノミー)への重点支援

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予算要求時からの変化としては、より具体的な分野・テーマに関して名前が上がっている点が挙げられます。

1点目は「スノーリゾート」。過去のメルマガでもご紹介したように、政府では特にスノーアクティビティを軸にしたスノーリゾート開発への支援を重視しています。

スキーコンテンツの造成や環境整備はもちろん、スキーを楽しんだあとの娯楽であるアフタースキーコンテンツの造成や、雪のないグリーンシーズンのコンテンツ造成に触れていることも注目です。

旅行者を集めるだけでなく、集まった旅行者に十分に経済活動を行ってもらうことを目指しています。

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もう1点はナイトタイムエコノミーの促進です。

夜間・早朝の体験を開発することで、それまで活用されなかった資源をマネタイズすることができます。

訪日客はこれからも増加するものの、その伸び率は減少していくでしょう。これからは眠った資源、死蔵されていた旅行者の時間を活用することで、「稼げる観光」を目指していくことが必要となるのかもしれません。

政府の予算計画から、そのようなインバウンドマーケットの未来が予想されます。

11月の訪日客数が発表。前年比0.4%減と2ヶ月連続昨年同月比割れ

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12月18日、11月の訪日外国人客数(推計値)が発表されました。

訪日外客数(2019 年 11 月推計値)(JNTO)

韓国を除く19市場では前年同月を上回っているものの、韓国人旅行者の減少(前年同月比65.1%減)が響き、全体では0.4%減という結果となりました。

その他の国では、ドイツ(前年同月比5.2%増)、イタリア(前年同月比6.7%増)以外で2桁成長しています。

特にタイ(36.3%増)、フィリピン(38%増)、イギリス(37.5%増)、ロシア(41.3%)は大幅に増加しており、その理由として資料には「就航便の増便」が挙げられています。

やはり「どの国がどのエリアに就航しているか」は、地域のインバウンドマーケットを占うために非常に重要になってくるため、各地の事業者様はぜひご注目ください。

また、就航便を誘致する際も、自地域の観光資源や隣接する地域との差別化の観点から「どの国からの便を就航させるべきか」を十分に議論する必要があるでしょう。

その他の理由も記載されていますので、ぜひ御覧ください。

インバウンドメディアMATCHAが、月刊特集を創刊。第一弾は「人のいない東京」

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インバウンドメディアMATCHAが、毎月違うテーマで日本を切り取る特集「月刊MATCHA」を創刊します。

第一弾のテーマは「人のいない東京」。日本人にとっても外国人にとっても、東京は人が多くてにぎやかな都市というイメージが強いです。

オーバーツーリズム問題が叫ばれる中、MATCHAでは様々な確度から「人が少ない東京の魅力」をお届けし、新たな東京観光を提案します。

これまでのインバウンドメディアの情報発信と言えば、「観光情報の整理」が中心でしたが、それだけでは、結局は有名観光地へ人は流れて行ってしまいます。

隠れた魅力を訪日客に届けるためには、企画性が重要となります。MATCHAではこれからも、訪日客が新たな旅の魅力に気づくような様々な企画をお届け。

月刊MATCHAはその基幹的な取り組みになっていきます。

2019年を振り返る、総括ニュースをピックアップして紹介

年末ということで、先週は2019年の総括的な発表やニュース配信が複数行われてきました。

その中からいくつかをピックアップしてご紹介します。

観光経済新聞社の2019年の報道をまとめたもの。本マガジンでも紹介している統計ニュースの他、「真の観光立国実現に向けて 本紙の創刊3千号特集で二階俊博・自民党幹事長、全国旅行業協会会長にインタビュー。(7日付)」など、改めて読み返しておきたいニュース見出しが取り上げられています。

見出しタイトルで検索すれば、該当記事が出てきますのでぜひ1年の振り返りにご活用ください。

ナビゲーションサービスのナビタイムジャパンの発表です。

ナビタイム等のアプリ上でのスポット検索数のランキングですので「いま人気の地域」を知る上では参考になるでしょう。

ただし、こういったサービスは利用している国の割合などにも左右されるので注意が必要です。

観光トレンドや未来予測には参考にならないかもしれませんが、昨年度の発表と比較することで擬似的に推測することができます。

チームラボ ボーダレスが新しくランクインしていることに、個人的には注目しました。

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旅行予約サービス「楽天トラベル」の発表です。楽天トラベル外国版を経由した予約データからの発表です。

こちらも利用者層・数の分析が必要であることを前提とした上で、東京周辺の自然資源に強みを持つ地域の人気上昇度が高い点に注目しています。

雪資源に強みを持つ地域も多いことから、政府のスノーリゾート重視の方針との関連性もうかがわせます。

ラグビーワールドカップ2019日本大会の観戦有無別 訪日外国人旅行者の消費動向 (観光庁)

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今年のラグビーワールドカップに関して、政府からようやく統計的な総括データが発表されました。

各国の旅行支出額を、「ラグビー観戦あり・なし」で比較したもので、すべての国で「観戦あり」の旅行者のほうが支出額が大きいことがわかりました。

「観戦者は長期滞在しているからでは?」と思われる方も多いでしょうが、以下のグラフのように1人1泊あたりで比較しても「観戦あり」の旅行者のほうが支出額は大きい結果となっています。

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元々ラグビーファンが多い欧米圏は所得水準も高く、旅行消費額も平均より高いことがわかっています。その中でもラグビーファンは特に旅行消費が多いことが予測されており、それが証明される結果となりました。

ただしこのデータがオリンピックにも当てはまるかと言うと、そのようなことはないでしょう。ファン層、開催期間、開催地域(の広さ)が異なるからです。

それとは別に、こちらのデータを参考に「所得・消費水準の高い、特定ジャンルのファン層」をターゲティングする戦略は可能性があるかもしれません。

例えばスキーファン、キャンプファンなどがすぐに思い浮かびます。

今年の訪日客数がどこまで行くかはまだわかりませんが、昨年度を超えることは確実なようです。

こちらのニュースでは昨年より9日早く大台の3000万人突破したことを観光庁の田端長官が会見で発表しています。

しかし当初の目標・想定はもっと大きかったはずです。右肩上がりを続けつつ、想定外のブレーキがかかっている点を踏まえると、2020年以降のインバウンドマーケットの行方に安閑とはしていられません。

JTBによる2020年の旅行市場の予測です。2019年の総括ではありませんが、最後に2020年度の展望を語るニュースとして取り上げました。

訪日客数予測(7.9%増)、訪日トレンド予想など興味深い内容となっておりますので、ぜひご覧ください。

訪日目線がわかる!MATCHAやさ日マンガ

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今週もMATCHAで人気の「やさしい日本語マンガ」を紹介します。

やさしい日本語とは、海外の日本語学習者向けに簡易化された日本語のことで、MATCHAでは学習者の他、日本語の先生にもお読みいただいています。

今回は、アメリカ人の「クリスティーヌ」が、生花を学んでいる場面です。

↓興味のある方は、ぜひサイトも見てみてください!↓
https://matcha-jp.com/easy/

↓マンガの元記事はこちら↓
https://matcha-jp.com/easy/7446

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日本は海外に比べ、「同音異義語」の数が非常に多い点が特徴です。

特に「はな(鼻・花)」、「はし(橋・箸・端)」など、簡単な単語に多数存在するため、外国人は基本的な会話でもしばしば混乱してしまいます。

接客対応、自社海外スタッフとの会話の中でもそのような混乱はしばしば生じることでしょう。

そのような時に思わず苛つきを感じてしまったら、ぜひ日本語の特殊性を思い出して、落ち着いてご対応ください。

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あとがき

まもなく2019年が終わり、待ちに待った2020年がやってきます。

今年のインバウンドマーケットを総括するなら「これまでの流れに変化が生じた年」であると、言うことができるでしょう。

伸び続けていた訪日客数の増加が鈍化、京都ではオーバーツーリズム問題が叫ばれ「たくさん来てもらえればよい」という状況は変わってきました。

一方で地域格差が広がったことで、「地方への集客」「眠った資源」の活用にもさらに注目が集まっています。

韓国人旅行者の減少から、訪日のリスクに気づいた方も増えたはずです。

ポジティブな変化・発見としては、ラグビーワールドカップで予想以上に旅行者が増えたことが挙げられます。

量ではなく質に注目するよう、私達インバウンド事業者の視点の変わってきました。

インバウンド業界を未来に渡って日本の基幹産業にするための、第一ステップが終わった。2019年はそのような年だったと言えるのかもしれません。

本メルマガは今号で年内の更新終了となります。次は年明け1月6日(月)の配信を予定しています。

それまで皆様、よいお年をお過ごしくださいませ。今週もご購読誠にありがとうございました。

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