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男と女シリーズ

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〇〇な男と〇〇な女たちの世にも奇妙な物語
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#ミステリー

【短編】遅れる男(3000字)

何故だか僕は、何かと出遅れてしまう男である。 時間にルーズというわけでもない。 僕自身は大変真面目な男だと自負しているし、責任感だってそれなりにある。 上司からもそれなりの評価は受けている…はずだ。 ただ……ここぞ、という時に限ってなんだ。 本当に些細なことではあるが、それに起因して大事な約束に遅れたりする。 例えば。 朝のゴミ出し。 忙しい朝、溜まりに溜まったゴミを今日片付けよう、という日に限って車のキーが見付からない。提出書類を部屋に忘れて慌てて戻る。 そんな些細な時

【短編】箱の男(2600字)

真っ暗だ………。 何も見えない。 本当の暗闇がそこにあった。 ただ、狭い……圧迫されるような感じだけがある。 ここは、どこだ…………? 俺は、気付くと暗くて狭い箱の中にいた。 ここはどこなんだ……? 俺は、考えを廻らせる……。 ここに来る前の記憶というものが、一切ないのだ。 なにも、わからない。 ただ、何か箱のようなものに詰められている。 そのことしか、わからない。 カタカタカタ…… 不規則な振動が、微かに男を揺さぶった。 耳を澄ませれば僅かながら、でも確かに外界の音