※個人の感想です(F)
今日もブンゲイファイトクラブの感想です。この調子で全部の感想を書くのが目標。
馬に似た愛
夭折した詩人を偲んで、その詩の一部を編纂者が辞書に載せた話。詩人の抱冬は詩作の目的を『世界の抒情的再定義』としており、それは、愛が馬に似ており、失望は鯨骨様の組織を有している。再定義されたそれらの抒情は詩的であるけれど理解は出来ない。しかし、抒情を理解できる言葉で言い表すにも限りがあって、それは感情を決められた型にはめて提出しているようで、その型を取っ払ってやろうという試みに思えた。それが『世界の抒情的再定義』であり、その思いを繋ぐための辞書編纂だったのではないかと思う。表現の限界を突破しようとしている。そういうすごみを感じた。
どうぞご自由に
人は誰でもうちに秘めている暴力的な衝動があって、それは少しのきっかけで抑えられなくなってしまう危うさがある。そのトリガーがこの作品では金槌という目に見える形で表されている。そして最後には、少し働きやすくなった、とある。嫌な人が減ったというようにも思えるし、溜め込んでいたものが発散できたのだとも思える。誰しもうまく発散できないものを溜め込んでいる。そのおかげで平和に暮らせているのかもしれない。
人魚姫の耳
始めはベッドシーンを想像した。ホテルの一室だろうか、とにかくベッドの上だ。その生々しさから、おとぎ話のような西洋風のプリンスやプリンセスのイメージと自分を重ねて乙女心を描いていく。しかし様相が変わってきたのは、茶を点てる辺りからか、三成と茶々が出てきて、やっとねねを高台院だと認識する。この西洋風のプリンセスをもって戦国の姫に繋げるという構成、その取り合わせは、賛否があるのかもしれないが、斬新ですごいと思った。それに『びいどろの夢にとじこめる大がかりな舞台装置』や『金平糖のとげをとかすように』など、はっとさせられた。とても素敵な表現だと思った。
ボウイシュ
不思議な話だと思った。私は能を知らないので、そういう要素がもしあっても汲み取れないのだが、とにかく仮面と精霊が印象的に出てきて、能の舞いで狂った戦闘民族の争いを止めるという、日本文化と異民族の仮面の繋がりみたいなものを感じた。主人公は砂の中で話すことはもう無いといっており、砂の中に埋もれた仮面、古い精霊にこの話をしているのだろうか。冒頭のパッパッパッは銃声かと思ったが、何だったのだろう。
墓標
これも不思議で面白い話だと思った。いきなり某国首相の死体が転がり、埋めた庭から国旗が生えてくるところとか、最初と最後に手を合わせていて、それは意味が重なっているのだろうかと思わせるところが面白い。死んだはずの首相がテレビに映っていたり、息子の様子が少し変だったり、夫の「どう?」というだけの電話だったり、私は上手く解釈できなかったが、奇妙な世界観を楽しむことはできた。
推しをいうならば馬に似た愛だろうか。一日一グループ感想を書くことを勝手に自分に課しているので、時間的に不完全燃焼な感じがするところもあって、また何か思ったら書き足すかもしれない。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。 サポートは必要ございません。 また、記事を読んで貰えたら嬉しいです!