紅茶の気分
紅茶の気分だ。と、とりたてて言うほどもなく、いつも紅茶の気分である昼下がりだ。喫茶店の店主に知り合いがいるというのは、なんだか少し特別な感じがするけど、ここは誰に自慢できるようなところでもないなと思う。
彼はいつものように、オレンジ色の癖っ毛に三角巾を巻き付けて、客側の椅子に座り、足を組んで、眠そうにカウンターに肘をついているだろう。そう思いながら、古ぼけたような、よく言えばアンティークな店の扉を開けると、意外と忙しそうだった。
「いらっしゃいませー」
と振り向きざまに彼は言う。来るタイミングが悪かったな、と思いながらも席に着いた。珍しくせかせかと動く彼もかわいいな、と観察する。
「あ、私は後でいいよ……」
近づいてきた彼に私はそう言いかけたが、彼はカチャリと私の前に紅茶を置いて、
「ちょっと待ってて」
と言った。もう紅茶が来たのに何を待つんだか。
「ぬるっ」
いつから淹れてたんだろ、この紅茶。
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