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「永訣の朝」(宮沢賢治)

*2023年3月朗読教室テキスト ビギナー②
*著者 宮沢賢治 / 心象スケッチ『春と修羅』より

けふのうちに
とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ
   (*あめゆじゆとてちてけんじや)
うすあかくいつそう陰惨いんざんな雲から
みぞれはびちよびちよふつてくる 
(本文より)

最愛の妹トシさんが亡くなられたのは大正12年11月27日、詩の書き出しにもあるように岩手ではもうみぞれや雪の降る頃です。詩集『春と修羅』に収められた「永訣の朝」「松の針」「無声慟哭」の三部作は、朝を迎えてから別れに至るまでを、目の前で見ているかのように(詩集のタイトルに「心象スケッチ」とついているように、目の前で起こる現象をスケッチ帳へ描くように)言葉で綴られています。

「あめゆじゆとてちてけんじや」と、死の床で妹が願った少しばかりの雪を求めて、二つの掛けたお茶碗を手に賢治は外へ飛び出します。天から降ってくる雪が、どうか妹がこれから赴く天上でのアイスクリームになるように、ひいては、生まれ変わった暁には、苦しむことのない人生をとの必死の願いをこめて。

心象スケッチ『春と修羅』は、1924年(大正13年)4月20日に発売されました。定価2円40銭、1000部。賢治の生前に刊行された唯一の詩集です。
作家が描いた言葉のスケッチを、春間近なこの時期に朗読してみませんか。

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