「こんな世界に私は住みたい」
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「こんな世界に私は住みたい」

*2021年9月朗読教室テキスト③ ビギナーコース番外編
*著者 久坂葉子

こんな世界に私は住みたい

肩書もいらず勲章もなく
人はそれぞれはだかのままの心でもって
礼節だけはわきまえて
男も女も仕事をし
男も女も恋をして
ひとりひとりの幸福を
ひとりひとりのねぎごとを
心にそっと小さくもって
一生かかって、みずからのためしつくす
こんな世界に私は住みたい
             一九四九年六月十八日

何度となく教室で取り上げて、ウツクシキに通う生徒さんの心をきゅうっとさせてきた、たった一編の詩。この数行に、18歳の聡明な女性の切ない思いが込められています。
世の中がどのような意思をもって流れていようと、自分の足で地面を踏みしめて、小さな願いを温めて、何十年何百年という時間感覚を身につけて、「こんな世界」のピースをひとつひとつ嵌めてゆくのです。
 
願いは決して現実的じゃなくてもいい、そんな風に思いながら過ごしていたら、だんだん現実の方が変化していきます。時には思い描いていたのとは違う様相で目の前に現れることがあるかもしれませんが、それこそが自分の望んでいたことの答えであるかもしれません。ゆっくり時間をかけることを惜しまず、焦らずに、ひとつひとつを積み上げていくことが自分の人生になります。

9月のビギナーコース番外編は「こんな世界に私は住みたい」他、久坂陽子の詩を数編です。秋の夜長に、自分と対話するような気持ちで声に出して頂けたらと思います。

*底本 『久坂葉子詩集』六興出版
 昭和54年4月25日初版発行
*文中の太字は本文より抜粋

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