【番外編】動画の方でもこれぐらいのタイミングで幾つかの本を一気に紹介したりしましたね最近読んだ本の話!!!!
前回のnoteからはや1ヶ月半。
なんかラノベの書評に需要があるんじゃない? みたいな潮流があったようななかったような。需要があるなら供給しようと用意していた記事は半分も書いていない。流行りに乗りたい気持ちはあるけど速度とやる気が足りない、本体(ラノベ作家。流行りに乗ろうとファンタジー小説を書いていたら世間はラブコメに移り変わっていた)もまるで足りてない。うつぶせくんだよ〜
そんなわけで今回は最近読んだ本の紹介! 一気にまとめてやることにより、1ヶ月半更新してなかった事実を濁し、更新したんだぞという安直な達成感に身を落とすぜ。
注:最近読んだ本の話をするということは、面白くなかった本の話もせざるを得ないので、そういうの苦手な人は回れ右な
紅蓮館の殺人(阿津川辰海)
これ、おんもしろかったなぁ〜〜〜〜!!
館モノと言えば謎ギミック(この館は回転しない)で、発売前の予告では見取り図が公開されていてめっちゃ当たり前のように「吊り天井の部屋」と「隠し部屋」があって、隠れてねえ! って思っちゃったけど、作中でも特に隠れてないので問題はない。
勉強合宿を抜けだして文豪の住む館に向かった「嘘を見抜ける名探偵」とその助手の高校生コンビは落雷による山火事が発生して、吊り天井の部屋がある文豪の館に避難することになる。
吊り天井があるのに使わないなんて、そんなもったいないことができるわけもなく、当然のように吊り天井に潰された死体が出現する。果たしてこれは事件なのか、事故なのか。事件だったとすれば犯人は一体誰なのか。というか、山火事で脱出不可能の状況で推理なんてしている余裕なんてあるのか!?
「今私たちがすべきは、この隠し通路を見つけるべく手分けをして調べることです。あるいは分担して、助かるためにすべきことを進めていくことです。断じて――」
「推理に耽溺して、この現実から目をそらし続けることではありません」(P.158)
ほらぁ、登場人物すら言ってるよ。
それでも名探偵は推理をやめなかった。「山火事から逃げるという現実的な問題」よりも「事故か事件か、犯人が誰なのか判然としない。はっきりとしないことが許せない」気持ちの方が優先されている。『名探偵』という生命体だこいつ!! めんどくさいやつだ!!
まあそんなわけで、燃えさかる森と取り残された館の中で、避難路を探しながら吊り天井は事件なのか事故なのか。真実を追い求める。答えを得て、カタルシスを得て、言葉の真意を知る。やっぱね「実は○○だったのだ!」という解決編も好きだし、さらっと出てくる事実も好きだなあ。騙されが気持ちいいんだ。しかし、「講談社タイガ」っぽくないという感想がまあまあ多かったけど「講談社タイガ」っぽい気がするけどなぁ。どういうイメージなんだろう。講談社タイガ(一時期全部買ってたので、本棚に真っ青エリアが出来ていた)。
探偵はもう、死んでいる。(二語十)
めちゃくちゃ宣伝されててかなりハードルがあがっていたやつ。ハードルは飛び越えれず、するりと下をくぐり抜けていった。いや、面白くないや……。言ってしまえば「エモだけで物語を進行させようとしている」「シチュエーションだけを用意した4P漫画がひたすら続いている(薄味)」「知らない人の話を知らない人から聞かされてる」感じ。ひたすらむず痒い安い口説き文句みたいなのが連なっててつらい。言葉を魅せたいのであれば、その言葉が映えるような土台をつくってほしかったな。ジャンルごった煮の闇鍋とかジャンル詐欺。と評されているけれども、どちらかと言えば、ただただ普通のジャンルレスであり、むしろジャンルを定められない迷子みたいな。そんな感じ。『探偵っていってるけど本格ミステリじゃあないじゃねえか!』という意見もまま見るが『本格ミステリでもSF超常異能なんでもあるだろ』としか思わない。恐らくあとで別の本の紹介で触れる『あの時代』の模倣をしたかったのだろう。とは思う。大枠がそんな感じだったから。だから、別に今までにないわけでもなんでもないんだよなぁ。と。総評としては目新しさはなくて、むず痒い。二巻も作者の別作品があったとしても買わないかな……。なんかこう、宣伝にのせられて買ったのでより残念感が強い。
Dの殺人事件、まことに恐ろしきは(歌野 晶午)
初めての歌野晶午。みんな大好き「江戸川乱歩オマージュ小説」だ。
ちなみに僕は江戸川乱歩小説を「人間椅子」しか読んだことがない。江戸川乱歩を読んだ数よりも、江戸川乱歩オマージュ小説を読んだ数の方が多いのかもしれない。
本書は江戸川乱歩小説に現代技術をプラスした短編集で、所謂幻想小説も、現代技術にかかればミステリへと早変わりだ。
しかし、いやぁ。な小説だったなあ。面白くあったんだが、明らかに「ハッピーエンドになんてしてやるかよ!」みたいな圧を感じる。一番最後の短編、「人でなしの恋から始まる物語」とか、お。今回はハッピーエンドかなあ。と思ったら、すごい無理矢理に「残念~~」ってハッピーエンド防止オチを持ち込んできて、作者のこだわりを感じるぜ。さて、今作はミステリなわけだから、肝心の推理はどうなの? という問題だが、それに関しても問題ない。そもそも一般的な「死体が出てきて犯人を当てる」タイプのミステリは表題作だけで、あとは語り部が不思議な出来事に出くわし、その真実を知る。形式だ。スマホのテレビ通話を利用して彼女と一緒に旅をしている男が語り部に話す秘密とは……? みたいなね。だからまあ、そこまで推理をする必要はなくて、読んでいると勝手に真実まで案内してくれるし、最後の仕掛けは充分に満足できるやつだと思うぜ。まあ、それはそれとしてだよ。
〈『嘘八百八十学園』累計七百万部突破? 888888! やっぱ、キャラが立ってるからだよな(迫真)〉
涼花の背中をゾワッとしたものが這いあがった。(P.9)
(迫真)じゃあないんだよなぁ……。そりゃあゾワッとするよ。元彼ストーカーである以前にやべぇよ……。ニコニコのコメントじゃあないんだから、メールでこれを送ってくるやつ普通にやべぇよ……。なんか、若干ネットミームが古い気がするのが、気になるところだな!
黒い仏(殊能将之)
みんなご存じ殊能将之。苗字の読み方が分からなくて、ことさらって読んでた殊能将之《しゅのうまさゆき》。デビュー作のハサミ男が一番有名かな? 今作は石動戯作シリーズの『2作目』で、実は『1作目』であるところの『美濃牛』は読んでないんだよなあ。
事の発端は『コズミック(清涼院流水)』がこの令和の時代にTwitterトレンドに入るというトンチキウィークのことである。当時コズミック読了済みであり、『カーニバル』を読み終わり、余りの疲れに『カーニバル・デイ』にたどり着くことができず(それは今もたどり着いていない)、『成功学キャラ教授 4000万円トクする話』を読んでいた僕のTLにこんなツイートが流れてきた。
『黒い仏』の噂は聞いたことはあったけれども、そういえば読んだことがなかったなあ。ということで購入しておおよそ三ヶ月過ぎたあたりで読んだわけだ。石動戯作シリーズ第1作『美濃牛』は第1回本格ミステリ大賞候補作である。2作目である『黒い仏』はというと2001年のSFが読みたい! で第8位だ。ここら辺でなんとなく想像はついたやつはいるか? そうだよ、あの時代のそういうやつの講談社ノベルスだよ。
名探偵石動戯作は『唐の時代の秘宝を探してほしい』という、リアル探偵としてもミステリ探偵としても珍しい依頼を受ける。同時にとあるアパートでは身元不明の死体が発見されていた。まあつまり、この二つには接点があるわけだ。ミステリの常套だな。
それは、巨大な蜘蛛だった。
いや、蜘蛛と呼ぶにもおぞましすぎる。ねじくれた毛むくじゃらの脚は七本しかなかった。だが、一本欠けたのではなく、七本脚が正常な姿らしい。中央の胴体から均等に周囲にのびている。
(中略)
いくつものこぶや突起が突き出した背中は、激しく脈動していた。生きた内臓に蜘蛛の脚を生やしたかのようだった。(文庫本:P160)
なんかキモい蜘蛛の化物も出てくる。ミステリの常套だな。
黒智爾観世音菩薩とかいう貌のない黒い菩薩様(隠す気ねえな)を奉る謎の集団と超能力を持った名探偵の助手、坊主集団の世界を巻き込む大戦争……の横で身元不明の死体の正体と秘宝の在処を解き明かす。今風に言い換えれば『面白い推理をする』ミステリだ。トリックを楽しみ、ギミックに驚嘆するミステリではなく、推理の内容を楽しむ。そういうタイプのミステリ。SFじゃないの? って言われそうだけど、ぶっちゃけ、SF要素も多分に含まれたミステリなんて沢山あるから。そこまで気にはならないぜ。現代人。それに、結果としては『石動戯作はアリバイトリックを解き明かしている』。いえーい、さすがは名探偵ー。
出航(北見崇史)
これは……あんまり面白くなかった……。
綾辻行人が『推薦』しているときは『ミステリ小説』で『喜んでいる』ときは『スプラッタホラー』な気がするんだけど、気のせい? 誰か調査してほしい。
横溝正史ミステリ大賞と日本ホラー小説大賞がくっついて、横溝正史ミステリ&ホラー大賞となってからの(確か)初めて刊行された小説だ。同時発売の『お孵り』はまだ読めていない。
家出をした母親を連れ戻すために北海道の隅の方にある独鈷路戸(架空の町)に向かった主人公。そこで主人公は様々な怪奇現象にでくわすわけだが、序盤は行き当たりばったりな主人公が動く腸とか動く猫の死体とかにびっくりするのがひたすら続く。主人公自体にあまり魅力がないからか、主人公の驚き方が「な、なんだこれは。」とか「な、なんだ」とか気が抜けているせいか、気持ち悪さとかが感じられなくてちょっと退屈だった。動く腸が腕に絡みついて噛みついてきているのに、反応が「うわっ、ナメクジ触っちゃった」ぐらいな感じなんだよなぁ。驚くとき「なんだ」から始まる率が高くて、「今から驚きますよ。いいですね?」みたいな前振りをしてくるのは、もはや優しさすら感じる。
まあ、そんな感じに色々進んで、母親が町でなんか怪しい宗教をやっていたり、肉の船があったりしてなんやかんやあって、ミミズと人間の混血みたいな人と腕がもげても断面からミミズ糸がでて絡み合い、ひっついて元通りになる妹と一緒に、頑丈になっていて手足が千切れて皮膚を切り裂かれても簡単に死なない限界集落の爺どもの頭をスコップの先端でぐちゃぐちゃに粉砕する地獄絵図人間バラバラ大騒動B級クリーチャーバトルが始まる。ここは正直楽しかった。ここだけずっとやってほしかったが、280ページぐらいある著作の最後50ページぐらいしかない。寂しい。もっとぐちゃぐちゃしててほしい。
ちなみに、地獄絵図人間バラバラ大騒動バトルの前になんか勝手に妹と彼女と父親が来てなんかいつの間にか捕まってる。行き当たりばったりしかいないのかこの小説の登場人物は。だからつまり、登場人物にびっくりするぐらい魅力がない。彼女とか「電話して」「勝手に町までやってきて」「捕まって」「酷い目に遭う」しかしてないからな。何しに来たんだこいつ。
登場人物に魅力が正直ない。行動に一貫性はなく、行き当たりばったりでその場の感情任せ。まあ最後は楽しかったので、気になった人は、文庫本になったら読んでみるのもいいかもしれない。僕はいいや……。あとこれもクトゥルフらしい。根腐れ蜜柑。調べたけど元ネタ分からなかった。
シャドーハウス(ソウマトウ)
……なるほど!(『なぜなら』ときちんと説明してくれているので納得せざるをえない)
よく分からないけど顔が真っ黒で顔がない貴族のまねごとをしている一族――シャドー家がいて、しかし顔がないというのはとても不便なので、代わりの顔として一人につき一人、”生き人形”がついているのです。
(黒塗り……めっちゃ大変そうだな……)
最近(2019年12月18日現在)最新話一個前まで無料公開したら一気に読者が増えちゃった漫画。僕もその一人。顔のない主人と、顔の代わりを勤める”生き人形”。彼らは何者? ところでここはどこ? 正確な情報は読者に与えられず、雰囲気と二人の関係性のみで進行していく所謂『雰囲気不穏日常系』の系譜の漫画だ。だったんだ。46話までは。びっくりしたね。
なにせ45話ずっと『窓割れてね?』状態のままを保持して、46話で『ほら割れてるうわー!!』ってなる構成だからだ。がっこうぐらしが1話でしていたものを46話かけてる……。気が長いというか、打ち切られる恐怖はないのか作者! ある意味、一気見が正しい漫画であるのかもしれない。不穏日常系で1話1話が短めだから、すいすい先へと進んで読んでしまう。そこで唐突に現れるH×H。そうだ。これはヤングジャンプで連載されているれっきとした『ジャンプ漫画』だったのだ!! よくここまで耐えたな……。と本気で思うぜ僕も。
しかしじゃあ45話まで面白くないの? と思われるかもしれない。そんなわけない。顔がないご主人の顔代わりであるはずの”生き人形”エミリコはご主人であるケイトが考えてから動くタイプであるのに対して、動いてから考えるタイプ。自分の思いを前に出さないケイトに、前に出すことしか知らないエミリコ。あまりにも正反対で顔代わりできてねえ! っていう二人の関係がとても良いし、シャドーハウス。めちゃくちゃ絵が上手くてさ。雰囲気を描くのが上手くて……部屋や外を見るだけでもわくわくしちゃうんだよ。詳しく説明されないからこそふわふわと存在している空気感。それがとても楽しいんだ。夏休みに初めて行ったお爺ちゃんの家を探検しているようなわくわく感がある。
いいなあいいなあって思ってたら46話で急にふわふわとしていた空気に実在性が与えられ、僕らはそれにずっしりとやられてしまう。作者に振り回されている。た、楽しい……!!
まだ読んでないって人は急いで珈琲まで行くんだ。急げば元気な女の子が吐いているところまでたどり着けるぞ!!(オススメの仕方それでいいの?)
そんなわけで、最近読んだ小説とか漫画、計六冊。
読んでみてくれよな!
面白くなかった。という話もたまにはしないと息がつまるんだ(『面白かった!』本ばかり紹介してた方が健全だとは思うけどね)
ここから先は投げ銭用。課金をしたところで読めるのは「お金ありがと!」とちょっとした一言だけだ。課金をするだけ損なのでそれよりも小説や漫画を買って読め。
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