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【#12】ラスト1ページで世界がひっくり返る。【隠蔽人類】

 noteの更新が二ヶ月に一回のスローペースになっているの、いい加減どうにかしてえなって気持ちはあるよ。どうもこんにちは、うつぶせくんだよ~

 更新速度、どうしたらあがるんだろうね。気分とノリと勢いがあればどうにかなるよ。

 それはそれとして、十二本目の本紹介だ。
 noteを読んでいるそこの人は、「壁本」という文化をご存じだろうか。
 いわゆる俗語であるこれは、「読んだら思わず壁に叩きつけたくなる本」のことを指す言葉だ。今風に言うならば、『トンデモミステリ』とでも言うべきだろうか。少なくとも、バカミスではないな。
 おいおい、壁に叩きつけたくなるって、それは果たして面白いのか? と言われかねないけれども、壁本は別に、壁に叩きつけたくなるだけであり、面白くない本ではない。ということを忘れてはいけない。面白くない本は面白くない本だ。あくまでも「壁に叩きつけたくなる本」ということを念頭に置いてほしい。

 ところで、この本が「壁本」と呼ばれる類のものである。という紹介は、「この本ってさ、叙述トリックなんだよねー!」っていうぐらいものすごいネタバレでナンセンスだと言われかねないのだが、まあ、帯とかで叙述トリックであることを宣伝してまわっている本も増えたし、なんなら似鳥鶏があるからいいだろう、もう。叙述トリック短編集が悪いよ。全部。

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 というわけで、今回はいわゆる『壁本』の紹介だ。
 タイトルはこちら。

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隠蔽人類
【鳥飼否宇】


 この表紙、初めて見たときに中指立ててるように見えて、めちゃくちゃ笑ったんだよな。

 広い意味で人類学の研究者が集まった調査団は、新たに発見されたという未知の民族、「キズキ族」の調査のため、アマゾンの奥地へと向かった……。

 キズキ族はいわゆる未接触部族。
 未接触部族というのは、現代社会と離れて暮らしている部族のことだ。
 こんな時代に、そんな部族がいるの? と思う人もいるだろうけれども、これが結構いるみたいで、今もまだ100以上の孤立したーーあるいは、拒絶した部族がいるらしい。僕は未接触部族の話をしている人の、そこはかとなくただよう珍獣を扱う雰囲気が好き。

 それはともかく調査団は、キズキ族との接触に成功。アマゾン先住民の言葉すら通じないキズキ族が「どこから来た」部族なのか、血液サンプルを採取して、調査するよ。
 え、言葉すら通じないような未接触部族からどうやって血液サンプルを採取したかだって? キズキ族は財産を私有するという考えがない部族らしく、基本的に分配する部族だ。
 それは『婚姻』にたいしても同じで、一夫一妻でも、一夫多妻でも、一妻多夫でもなく、乱交方式で、その際に採取したんだって。最低だね!
 まあそんな風にして採取した血液サンプルを使用して調査した結果ーー彼らは、「どこからも来ていない」ことが判明した。

 つまり、彼らキズキ族は「人類の新種」であったんだ。

 人類の新種、ホモ・サピエンスではない人類。なんだか「オラン・ペンデクの復讐」みたいな話だな。


 

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 もちろん、キズキ族は首にエラがある新人類ではない。ドイツ語っぽい言語を使っているだけだ。新人類発見という「世紀の発見」に盛り上がる調査団だったが、次の日、キズキ族が騒ぎ出す。彼らに連れられて墓に移動すると、乱交方式に混じったついでに血液サンプルを採取した調査員が首を切り落とされて死んでいたんだ。乱交に混じるから~~。
 と、思われたけれども、どうもキズキ族の様子がおかしい。本当に彼らが殺したのか。彼らが『殺していない』とすれば、一体犯人は誰なのか? というミステリものだ。

 あ、ミステリだったんだ。と驚かれるところだろう。有名どころの壁本だってミステリだし、なんかどうも、ミステリってやつは、過激な読者が多いのかもしれないな!(偏見に満ちた目)

 実はこの小説、2018年の『本格ミステリベスト10』で12位だったらしい。ということから分かる通り、ミステリとしての軸はしっかりしている。キズキ族の集落で起きた殺人事件、キズキ族を日本に連れて帰ることに成功した大学の構内で発生した密室殺人事件。
 どれもちゃんとミステリをしていて、その『ミステリの殺人と解答』によって、今まで提示されていた事実が一変し、『キズキ族』という隠蔽種の発見から、思ってもいない方向へとスケールアップしていき、まあ、ざっくりと言ってしまうと、人類の存亡まで発展していくんだ。話自体はじゃんじゃんじゃかじゃかスケールアップしていくくせに、話で行われるミステリ自体はいたって突飛ではない。
 人類の存亡に発展していくのに、別に『特殊条件ミステリ』的事件と解法ではない(『隠蔽種』自体は現実に存在する言語と事例であるため、特殊条件にカウントしないとする)。だからこそ、最後の1ページで驚愕と衝撃を食らってしまう。なぜなら頭が「特殊条件ミステリではないミステリ」になっているから。この『ポカーン』な気持ちは、是非本書を読んで体験してほしいぜ。



 そんなわけで『隠蔽人類』。
 たまには本を読み終わって『ポカーン』ってしてみたいな。と思う人にすげえオススメだ。これは決して、つまらないからとかではない。面白いから『ポカーン』ってしてしまうんだ。



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