見出し画像

【#9】インターネットはエロと百合で釣れると聞いたのでどっちもある小説なら2倍釣れるんじゃあないか? って目測がないと言ったら嘘になる【さあ、地獄へ堕ちよう】

 百合が流行ったのっていつだったっけな。と思って、百合でめっちゃ売れたSFマガジンがいつ発売されたんだっけと思って検索かけてみたら2018年の12月で、2年続いてるのこの流行り!? ってビックリしちゃったうつぶせくんだよ~

画像2

 みんな、百合って好きぃ?
 僕は好きっちゃあ好きだけど、「こちら百合です!」ってお出しされると「もうちょっとこう、慎みというか……」ってなって読まなくなる面倒な読者だよ。めんどうだね。
 まあ、ともかく。
 百合というジャンルは未だに人気は上々で、百合作品であることを公表すれば、その筋の人がやってくる。たくさんやってくる。過去の名作も今の新作も見てもらえる可能性が上がるらしい。なるほどなるほど。

 ところで話は変わるけれども、みんなはビビットアーミーって知ってる? 僕は最近までずっとケツアングルのあのアニメだと思ってたんだけれども、別に関係ないらしいね。あれ、別にエロくないゲームをエロ広告で釣っていたらしいんだけれども、つまり、人ってエロで釣れるということで、つまりは前述の百合とエロを重ね合わせれば、倍々で釣れてくれるってことじゃあないかってことではないかね? ってことで、今回紹介する本はこちら。

画像1

 さあ、地獄へ堕ちよう
 菅原和也

  第32回横溝正史ミステリ大賞受賞作品だね。史上最年少受賞者による暗黒青春ミステリ小説だったり、ノワール小説とかだったり、そんな風に言われてるね。ノワール小説ってたまに聞くんだけど、そう言えばノワールってなんだと思って調べてみたら「暗黒小説のことだよ!」ってインターネットが教えてくれた。暗黒小説ってなんだよ。大衆的な犯罪風俗小説だって。ありがとうインターネット!

 ピアスを開けると運命が変わるって聞いて、これまでに両耳合わせて十二個のホールを開けた。(文庫版P.4)
なんだかどうしようもなく死にたくなって、手元にあった薬をまとめて薬をまとめてビールとウイスキーで飲んだ。
 ベッドで横になり、気がついたときには、口の端からゲロが漏れて頬と髪の毛と枕を汚していた。寝間着のTシャツが汗でびっしょりと濡れている。
 うぇ、寝ゲロ吐いちゃったよ。(文庫版P.30)
 ルーシーが大きくため息をつく。と、いきなりわたしのあごを掴み、強引に顔をひきよせた。唇が触れ合いそうなくらいに近づいた、ふたりの顔。彼女の口から漏れる生温かい吐息が肌にかかり、くすぐったかった。呼吸の音が聞こえる。彼女の息は甘ったるい果物の匂いがした。(文庫版P.17)
 軋んで音を立てる縄。肌に突き立てられるヒールの切っ先。揺らぐ蝋燭の炎。黒いエナメル。ふりおろされる鞭。鋲を打ちつけられた首輪。鎖。次々と変わる照明。バイブレーション。融けた蝋。白い肌に残った縄の痕。尻の肉についたみみずばれのような鞭の痕跡。喘ぎ声。肌を伝わる汗。毒々しいまでに赤い唇とそこから漏れる甘ったるい吐息。心音。落ちる照明。拍手と歓声。(文庫版P.21)

 左右非対称に十二個ピアスをつけて、心療内科をはしごして手に入れたクスリをじゃらじゃら飲んでる主人公のミチは、SMバーのM嬢として働き、先輩であるルーシーと一緒にSMショーをしているんだ。

 そんな彼女が家に帰ると、詳細不明となっていた幼馴染みのタミー(男)と再会する。家なき子らしい彼は、家に泊めてほしいと頼み込んでくるんだ。
 タミーが持ってきていたデジカメ、その中身が気になったミチは解剖実習に使われたあとのカエルみたいに切り開かれていた女の死体が写された写真のデータを目撃する。いわゆるスナップ写真ってやつだな。
 それはタミーが殺した女の写真だった。
 タミーはミチに、オリジナルの死体写真を掲載するアングラサイト――更にそのURLをいじくることでいけるようになる「殺す人間と殺される人間が知り合う、出会い系サイト」、《地獄へ堕ちよう》を教えてくれた。
 そんなサイトの存在を知ってしまった日、働いているSMバーに、腕、太もも、背中、乳房といった全身に針を突き刺すパフォーマンスをする、背中に黒い太陽の入れ墨をしている女、リストが復帰してくる。
 彼女は店で問題を起こしていて、そして復帰当日にもやはり問題を起こし、それに半ば自ら飛び込むようにして巻き込まれたミチは、リストとともに店を飛びだす。

「ねえ、ミチはあたしのこと好き?」(文庫版P127)
「あたしはミチのこと好きよ。この一晩で、好きになったわ。こういう気持ちに、時間なんて関係ないものね」リストは手袋をした右手の指先で、針をつまむ。「だから、全力で愛してあげる。全力で傷と痛みを刻みつけてあげるわ」(文庫版P129)
 わたしの右の胸には、銀色に輝くピアスが残されていた。
 乳首は傷つけられたことで充血し、腫れ上がっている。乳房に血で描いた線が流れていた。(文庫版P131)

 そして次の日。
 リストは『地獄へ堕ちよう』に掲載されていた。
 背中の入れ墨を見せびらかすように、切り裂かれて、まるでキャンバスみたいに開かれた状態で。
 どうして彼女は死んでしまったのだろう。一体誰が彼女を殺したのだろう。ミチはそれを探るため、リストが通っていたという身体改造クラブへと向かう。

 とまあ、こんな感じの話だね。
 ざっくりと説明するならば、登場人物が殺し屋1の垣原雅雄みたいなやつが出てくる百合ノワールミステリだと思えばいいよ。

画像3

 殺し屋1でしてた、皮膚を釣り針で引っかけて宙づりにする拷問とか、男性器を半分にするやつとか、そういうのを自らやる人がまあまあ出てくる小説だからさ。嬉しそうねえ。

 この小説自体、読んでいた当初は別に百合とかそういう風に読んでは無かったんだけれども、読み終わったあと暫くして、「そういえばこれも百合と言えば百合か……」みたいな、そんな気づきが発生したんだよな。まあ、そういう感じの小説。終わってみれば意外と爽やかな感じだったのも、僕からしてみると、高評価だな。僕は爽やかな読後感のある小説が好きなので……。
 まあ、グロテスクと言えばグロテスクだけれども、作者も結構若いのもあってか、文章のノリがまあまあ軽くて、一部の人には好かれはしないかもしれないけれども、このノリの軽さがまた、殺し屋1とかそういうやつに感じる良さに近い。
 とかくまあそんな感じで。
 さあ、地獄へ堕ちよう。
 百合が好きだなって人。殺し屋1の垣原雅雄が好きだよって人。もはや垣原雅雄みたいな女が出てきても大丈夫だよって人にはオススメだな。意外といそうだな……。









殺し屋1。どこのシーンが一番好き? って聞かれたら、やっぱり全裸の垣原雅雄を泣きながらイチが追いかけるとこ……ってなる。


ここから先は投げ銭用。課金をしたところで読めるのは「お金ありがと!」とちょっとした一言だけだ。課金をするだけ損なのでそれよりも小説や漫画を買って読め。


ここから先は

159字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?