I am おかん

妊娠中から、いや、妊娠前から、たまに考えていた。
題して、生まれた子どもに自分と夫(両親)のことを何と呼んでもらうか、問題。
パパ/ママ?(お)父さん/(お)母さん?(お)父ちゃん/(お)母ちゃん?マミー/ダディー?父上/母上?それとも下の名前?

世の中には、父と母に対しての子どもからの呼び名が、一体何種類あるのだろう。そして周りにいる人たちは、何と呼んでいる(いた)のだろう。小さい頃はパパ/ママ、思春期くらいからはお父さん/お母さんならびにそれに準ずる呼び方が主流なのかな?いやいやでも親の呼び方を人生の途中で変えるのって、変えるタイミングが難しいし慣れるまでめっちゃ痒く(小恥ずかしく)ない?てことは外では一丁前に「親がさ~」としか言わない(または親の話なんてしない)男子が家に帰ったら可愛くパパ/ママなんてこともあるのかな?そんなことが結構昔から気になっていて、たまに周りの友人に「親のことなんて呼んでる?」と聞いていたような気がする。家での(特に親の前での)姿を友達に話すのは小恥ずかしいからちゃんと答えない、という人もいただろうけれど。そして私自身がその気持ちをよくよく理解していたけれど。答えてくれた皆さん、ありがとう。

私自身は子どもの頃、両親をお父さん/お母さんと呼んでいたが、実家を離れた今は呼ぶ機会が減って、呼び名もいつの間にか仙人/母上というツッコミ待ちのものになった。(「仙人」は、母が初めて父と出会った時、やせ形で浮世離れしたその姿に「『仙人みたい人やなぁ』と思った」という話に由来する。)

子どもにはなんと呼ばれたいだろうか。「ママ」はもっと若くて華やかな母のイメージで、私のような地味人間はキャラではない。お父さん/お母さんでもいいけれど、呼ばれてほっこりする名前って他にあるかな?など様々な妄想が渦巻き、最終的にふわっと浮かんだのが「とーちゃん/かーちゃん」だった。なんか昭和っぽくてレトロで可愛くない?その程度の理由。

そして、現在2歳4か月の息子は今のところ期待通り、「とーちゃん」「かーちゃん」と呼んでくれる。親戚や私の両親に「とーちゃん、かーちゃんって呼ばせてるの!?」と驚かれたこともあるけれど、舌っ足らずで「とちゃん!」「ちゃーちゃん!」という姿はなんともかわいいくて、私はとても満足している。

一方私と夫はというと、息子に話すときは互いのことを「とーちゃん「かーちゃん」と言うが、夫はたまに冗談で、息子に対し私のことを「おかん」と言っている。「おかん」は夫婦間では私の母のことを指すのだが、親しみやすい響きでついつい使いたくなったのだろう。それを聞いて、いつの日か、とーちゃん/かーちゃんと呼ばれていたのがおとん/おかんになったりするのかな~とうすぼんやりと考えていた。


しかし、そんな日は思いのほか早くやってきた。
数日前から、息子は私のことをたまに「おかん」と呼ぶ。「か」の部分に強すぎるアクセントをつけながら。

夫がお風呂に入れているときに、「おかんからだふきふき!(かーちゃんに身体拭いてもらうの!)」と言ったり、夫と児童館から帰ってきて、家にいる私を見て「おかんただいま!」と言ったり。挙句、私が自分の鼻辺りを指さし、「これ誰?」と聞いたら「か……おかん!」と言い直した。(夫のことはいつも通り「とちゃん!」と答えた。)その後の「してやったり」の表情。間違いなく確信犯である。かーちゃんとおかんが同義であることすらきっちりと理解しているところが何とも憎い。さすが我が子である。
そして、そんなやり取りばかりしていたら、案の定息子に話しかけるときの私の一人称が「おかん」になっているではないか。嗚呼、おかんロードまっしぐらである。

総務省全国親の呼び方調査なんてものが毎年行われていたとしても、2歳児の調査結果で「おかん」は円グラフで言う11:59~12:00の角度にも満たないだろう。いや、恐らくそもそも選択肢になく「その他」で括られているに違いない。でも、きっと総務省全国親の呼び方調査(18歳~)の地方別データ@近畿地方あたりではそれなりに上位に来ることも想像できるから、息子が今「おかん」呼びをマスターするのは将来への予習とも言える。

これから息子が私をどう呼ぶようになるか、それは少なからず両親である私と夫の誘導も入ってくるのだけれど、正直「おかん」もだいぶ面白いなと思っている。ましてや今後彼に弟や妹が生まれたとして、特に娘が最初から私を「おかん」と呼んでいたら最高に面白いのではなかろうか。そんな形で未来へのわくわくをもたらしてくれた夫と息子に感謝しかない。

そして、願わくば、周りの友達から「母親のことなんて呼んでるー?」と聞かれたときに「おかんって呼んでるよ~」と堂々と言ってもらえる関係でありたいと思う。








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