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息子のサイン

最近、とにかく息子は自分の右手の親指をよくしゃぶっている。
指しゃぶりの行為自体は、かなり月齢の低い時期から寝入るためのツールとして用いられてきて、眠い時やお腹が空いたときにちゅぱちゅぱ。動くようになってからは、拗ねると決まって寝室に敷きっぱなしになっている自分の布団にどてっと寝転がって、いじけたように指をちゅぱちゅぱ。そのうち指以外のものに注意がいって自然になくなるかな、と都合よく考えてさほど声掛けはしていなかったが、最近、端から見れば機嫌よく遊んでいるときでも指しゃぶりが目立つようになってきた。保育園の先生にも少しその話を向けたら、そうですね、最近にわかに…と言われた。早めに抜けたらいいな、と思っているのだが…とにかくよくしゃぶる。もう右手の親指の付け根に吸いタコができるほど。

さほど熱心に調べなくても、指しゃぶりはメンタルが影響する最たるもののひとつ、という類の情報には容易にたどり着く。先日2歳半を迎え、むしろしゃぶる率が上がっている、これはやっぱり本人からの声なきサインか。

思い当たる節が…ありすぎる。
とにかく最近の私は、というかここ半年以上、あまりにも仕事が忙しい。他ネタっぽく話したいところだけれど、やっぱりなお、忙しい。ひとつの案件が終わっていかないのだ。面白いくらい。

そのため、夫が在宅する日は、息子のお迎えから夕食、入浴、歯磨き、寝かしつけに至るまでありとあらゆるお世話を任せている。そして先週はついに20時過ぎるまで職場で仕事をしていた。息子が寝てから帰る日がこんなに早く来るとは思っていなかった。一応時短勤務なのに。

夫曰く、以前は私が帰宅しないまま夜ご飯を食べ、お風呂に入ると息子は、「かーちゃんかえってくるかなー」と言ってくれていたそうだが、最近はそれを言わなくなったらしい。帰ってこないことを悟ったのだろうか。寂しさを紛らわすための指しゃぶりなのだろうか。夫が十分子どもに向き合ってくれているから多少は大丈夫、そんな私の甘えがあるのかもしれない。別に特段仕事を優先したいわけではないのだけれど。
とにかく、「残れるなら残ってほしい」上司と、「残れるなら残らないといけない気がしている」私の需要と供給が一致しているのだ。抜け出したい。どうにかして、抜け出したい。不安しかないように見える職場に、何か愛を注げないだろうか。などと考えながら「やばいやばいやばいやばい」とつぶやく毎日である。

そんなことが気になる今日は朝からざざっと雨が降って、でもお出かけをする頃には止んで、久々に滑り台がたくさんある公園に行った。滑り台が濡れているのに熱かったからなのかいつもほどには駆け回らず、砂場で泥山をひたすら作り、遊具のターザンロープに挑戦したがり、抱っこでしがみつかせると途中で落ちて顔中が砂だらけになり、お昼になってお弁当をもりもり食べ、果物を忘れたことにちょっと怒り、そんないつもの午前中だった。
その後、帰るのかと思いきや、「すべりだいする」と今更スイッチが入った。午前中は遊具に上ると後ろを振り返り、「かーちゃんも!」とついてくるように言っていたのが、午後は私が下で見ているだけでもずんずん進んだ。これまでこわい、と渡ろうとしなかった網状の橋や線路の枕木のような揺れる橋にも果敢に挑戦し、足が網目の間にはまっても泣かず、自分でちゃんと足を抜いて、再び立って渡り切った。
すごい。この子は成長している。怖がりだから、慎重派だから、といろいろ手を出す必要はさほどないんだな、とこれまで何度か思っていたことをまた強く感じた。勝算が見込めると急に行動し出すタイプなのだ。以前から事あるごとにそう感じていたことを思い出した。
最近あまり息子と向き合う時間を作れていない自分、職場のいろんなことが頭をもたげて不安になり、ついイライラして息子にぶつけてしまう自分、それでも私が「頭が痛い」と突っ伏していると「かーちゃんどーしたの」とよしよししてくれる息子…
遊具を上りきってお目当ての長い滑り台にたどり着き、満面の笑顔で降りてきて「あみあみできたの!!」と誇らしげな表情を見せてくれた時、いろんなことが頭を駆け巡って少し泣きそうだった。
その後帰宅し、昼寝もそこそこに夕方は児童館でプラレールに夢中になった。その間、仕事から帰宅した夫がカレーを作ってくれた。

今日は、息子とたくさん遊んだ。遊具に挑戦できるようになったという発見に留まらず、こんな風に会話できるのか、という場面もあった。夫のカレーもとてもおいしくて、息子のおかわりが止まらなかった。

そして、これを書きながら振り返ったけれど、今日は息子の指しゃぶりが少なかった気がする。
同時に、久々に私も脳内を息子のみにして、暑すぎる公園と、冷房が効き過ぎた児童館に行き、おいしいご飯を皆で囲んで食べられた。ずっとできていなかったから、私の心も満たされた。それが表情に出ていたのだろうと思った。

指しゃぶりに何が隠れているのか、答えは最初からわかっていて、それに自分が向き合えるかなのだと思う。仕事に対しても見方が変われば、きっと何か動き出すんだろう。もう少し。もう少し。

ちなみに写真は息子の自撮りです(笑)





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