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2020年夏・東北遠征の記録(1日目/新宿→飯坂温泉)

はじめに

この旅の記録は、筆者が主に公共交通機関を駆使して自分の趣味である鉄道要素のある場所に訪問したり、列車を乗りつぶしたり、地元のグルメを探訪したり、各地の産業遺産や文化的遺産、戦争遺産といったものを中心に巡っていくというコンセプトのもとに自分の好きなように出向いた旅行を記録したものである。もしあなたが鉄道要素のある場所、産業遺産文化遺産が好きで訪問してみたいと思ったならば、少しでもこのエントリが参考になっていれば幸いである。


記念すべき第一回の記録は、2020年夏(といっても9月頭だが)に一人で突撃した東北方面への旅行の記録である。

1日目(飯坂温泉を目指して)

朝眠い目をこすって湘南新宿ラインに飛び乗る。まだまだコロナ禍とはいえ2020年になって4月からずっと在宅で只管退屈な講義を受けて鬱憤が溜まっていた。せっかくの遠出なのだからと、グリーン車に飛び乗った。

とはいえ平日の通勤時間帯なのでグリーン車はさすがに混んでいる。新宿駅でどっと空いたところですかさず窓際の席に移った。

そうして初めて降り立ったのは小山駅、ちょっとだけ栃木県で寄り道をしていくためである。

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小山駅の在来線ホームで仙台方面1?

ホームに降り立つと「仙台方面」という案内が目を引く。線路は確かに繋がっている。むろん当駅から寄り道するのだが。


真岡にSLを見に行く

なぜ寄り道をしたのかといえば、真岡のSLキューロク館を目指していたからである。この旅のコンセプトは、鉄道を中心に乗り倒しつつ、鉄道関連の博物館や遺構、産業遺産や歴史的なランドマークを柱にしつつ、街や地域の雰囲気をこの眼や耳で感じることである。

少々用を足して水戸線に飛び乗る。前に来た時はまだまだ415系が現役だった気がするが、それもとうの昔のようだ。

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高専ロボコンを見に小山に来た時はまだ415系が現役だったな、もう15年以上前の話だけど


下館駅で真岡鐵道に乗り換えて揺られることしばらく、真岡駅の大きな構内に差し掛かる。明らかに古い感じの気動車に使っていなさそうな貨車と車掌車が置かれている。博物館の展示物ではないようだがもう既に鉄に刺さりそうなものが駅構内にはあった。

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キハ20、国鉄真岡線時代に活躍していた車両だろうか
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車掌車とトラ45000かな

おそらく昔の真岡線で使われていたのだろうが、SLキューロク館の展示物ではないようだ、駅の反対側に回ってなにか説明書きでもないだろうかと探してみたものの、それらしいものは見当たらなかった。

それから大きなSLを模した駅舎を後にしてすぐのところに第一の目的地はあった。同館では、大正期に製作された貨物用の国産SLである9600形を始め、旧客とおなじみのD51と少しばかりの貨物車両を展示している。9600形と旧客に関しては中に乗ることができる。

早速入ってみると思いがけない"再開"を果たした。

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かつては羊蹄丸の中にこれがあった。船の科学館時代には車内に立ち入れなかった上に船内の車両格納庫に収納されていたから保存状態はかなり良い方だと思われる

道理で見覚えがあると思ったら、この旧客はその昔船の科学館前に係留されていた羊蹄丸の車両甲板に収められていたあの客車で間違いないようだ。

船の科学館に収蔵されていた頃は中に蝋人形が乗っていて、ぼぅっとした車内灯で室内が照らされていて中には立ち入れなかった記憶がある。しかし、ここでは中に入って座席に座ることだってできる。昔ながらの客車の座り心地であった。

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9600形蒸気機関車

とはいえやはりメインは9600形のSLだろう、そういう場所なのだから。この日は平日だったので屋内で展示されていたが、土休日やイベント時には外に搬出されることもあるらしい。

写真には挙げなかったが、他にもD51形、往年の2軸貨車やヨ8000形も静態保存されている。職員の方々が手入れしているようで、かつて真岡線で走っていたキハ20よりも保存状態は良さそうであった。


SLキューロク館の見学を終えてバスで真岡駅から東北本線の石橋駅に向かう。そこからは一路福島駅を目指して只管東北本線を北進し続けることになる。

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宇都宮駅到着


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駅前健太餃子というお店で

とその前に宇都宮駅で途中下車して名物の餃子を喰らう。次の黒磯方面行きの普通列車の発車時刻を鑑みて、東武宇都宮駅周辺の宇都宮市の本当の中心部まで足を運ぶのは難しいと考えたのでJRの側の駅近くにある餃子店を探すこととした。確か健太餃子という店だったと思う、焼餃子と水餃子のどちらも楽しめる定食を購入した。


腹ごしらえを済ましたら旅を再開するまでである。宇都宮から黒磯までの区間は実は中央線の東京から高尾までの距離に匹敵するらしい、中央線の方は東京~高尾間24駅に対してこちら宇都宮~黒磯間11駅である。駅間は中央快速線の倍あるわけである。そんな長距離のお供はかつて京葉線で活躍していたであろう205系、それもメルヘンと呼ばれる車両だった。

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京葉線で走っていたメルヘンだ

当然ロングシートの車両であるから車窓は座った場所から対岸の方向を見るしか無いわけで、クロスシートのように進行方向を向いて景色を眺めるという贅沢なことはできない。すっかり都心から駆逐されていなくなってしまった205系の乗車が適ったのは多分この年が最後だと思われる。昨今のダイヤ改正でE131が導入されて4両から3両に減車されて通勤時間帯の混雑が大変なことになっているそうだが、だいぶ老朽化している205系を使い続けるのというわけにもいかなかったのだろう。

いざ黒磯を目指すが、、やはり一駅の区間が鬼長い。長い。長い。。。。

昔多摩の辺境に住んでいたからこそ中央線にはしこたま世話になったが、それでもその時の体感時間よりも圧倒的に長く感じた。


列車は首都圏路線図の端っこに位置する黒磯駅に到着した。構内が直流化されてしまってかつて機関車の入れ替えで賑わったりした面影は感じられなくなりつつあるが、那須御用邸への玄関口として貴賓室が用意されていたり、かつて普通列車で用いられていたであろうサボを只管積み上げたオブジェが駅改札前に置いてあり、若干の鉄分要素を接種できるようになっている。

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115系は基本これをはめてたんだよな
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もう交流単独の電車はやってこない

ホームで暫く待つと常磐線カラーの列車がやってきた。この区間から先は交流電化に変わるため、これまでの直流形電車では対応ができない。もっとも交直切換を駅構内で実施していた時代に、交流型専用電車が停車しているところに誤って直流に切り替えてしまって機器が破損したり架線が焼き切れたり云々ということがどうやら過去にあったらしい。そういう諸々の事情を抱えて黒磯駅構内は完全に直流化されることになった。したがって交流専用の車両が乗り入れることができなくなった。一時期はキハ110系を導入して対応していたが、乗客を捌ききれなかったのだろうか、結局常磐線で使用されているE531を当駅と新白河の区間で投入する運びとなったそうだ。それ故に仙台方面から黒磯駅まで直通する普通列車も姿を消してしまったそうだ。


夏の北関東の天気は変わりやすい。群馬もそうだが栃木県も例外ではない、晴れていたのが段々と雲が増えてきていた。その中で新白河駅に到着。

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実質同じホームで乗り換えが効く

新白河駅は、黒磯方面からの列車と郡山方面への列車との間で同一ホームで乗り換えができるようにもともと1本のホームだったところをそれぞれ行き止まりにして2つのホームにしたようだ。階段を登らなくて済むのはなかなか楽である。


列車を乗り換えていよいよ東北に入ったのだなと実感する、交流電化区間でしか見ない列車にとうとう乗車である。そうしているうちに雨も降ってきて、福島県の主要都市である郡山に到着した。

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当駅で採用されている発車メロディは、Greeeenという地元のボーカルグループの曲らしい。在来線ホームと新幹線ホームとでそれぞれ採用されているようだ。ここらへんが三峰結華さんの出身地なのかなぁということは思い浮かんでもJ-POPの知識は絶望的にない筆者にとっては、多分八王子で言うところのファンキー・モンキー・ベイビース的なバンドなんだろうなぁくらいにしかピンとこなかった。でも巷では結構有名らしい。


朝まあまあ早かった故に少し眠くなってくる。半分居眠りしながら松川事件のあったあの松川駅付近を通過して列車はいよいよ県庁所在地の福島駅に到着した。中高時代属していた鉄道研究会の旅行でも会津地方にしか触れなかったが故に県庁所在地の印象は新鮮である。

訪問当時、朝ドラのエールの影響で作曲家の古関裕而の故郷である福島は大々的にこの波に乗ろうとしていた。駅前には朝ドラに因んで垂れ幕もかかっていたし、毎時0分になると古関の作曲した名曲オルゴールが鳴るようになっていた。しかし一方で駅前の中合百貨店はつい閉店したばかり、山形県の大沼百貨店といい、地方の県庁所在地から百貨店が撤退していってしまうのはやはり寂しいものである。

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ちょうど朝ドラやってたよね
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つい数日前に閉店してしまった


この日は飯坂温泉にどっぷり浸かって日々の疲れを癒そうと宿を予約してあったので、福島交通飯坂線に乗り換えて福島の奥座敷を目指す。

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いい電
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かつて東急電鉄で活躍していた車両のようで、外見と内装に東急の面影を感じるものの、車両の端には温泉街の暖簾がかかっていて確かにこれが福島市中心部と温泉地を結ぶ観光鉄道としての側面もあるのだなということを思い出させてくれる。むろん福島市の郊外に居住する市民の生活の足としての側面が強いし、運行本数も20分に1本はデータイムでも確保されている。


そして目的地の飯坂温泉に到着。少しだけ街の観光をして宿でじっくりと温泉に浸かり今日の疲れを癒やすのだった。

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飯坂温泉駅


ちなみに飯坂温泉は、温泉宿に泊まらずとも温泉に浸かる方法がある。それは町中にある公衆浴場を利用する方法である。これならば手ぶらで行ってもその場でタオルセット一式を購入すれば温泉をしっかりと楽しむことができる。宿の温泉で満足してしまったが次回訪問時は公衆浴場にもトライしてみようと思う。

他に飯坂温泉の名蹟を挙げるとすれば、旧堀切邸だろう。福島の豪農・豪商の豪邸が比較的夜遅い時間(確か19:00くらいまでは)にまで開放されていて、特にエキストラの見学料を支払うことなく見学できる。この一家は後に駐イタリア王国大使を勤めた堀切善兵衛、関東大震災で荒廃した東京を建て直した際に東京市長を勤め、戦後の混乱期の幣原喜重郎内閣で内務大臣を勤めた堀切善次郎を輩出した名家だそうだ。日本の近代史に一枚噛んでいるそんな一家の旧跡である。

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旧堀切邸、東北の豪農の家って感じだ


本日の行程

参考までに、この日の旅程を載せておく。もしこちらの方面に旅をしてみたくなった際には何かの参考になるかもしれない。もっとも、時刻は2020年9月当時のもので、現在の時刻表とは異なる場合があり、行程中に載っている列車が運行されていない場合もあるので、あしからず。

07:22 新宿
↓ 湘南新宿ライン普通宇都宮行き
08:48 小山
09:07 小山
 ↓ 水戸線普通勝田行き
09:28 下館
09:46 下館
 ↓ 真岡鐵道真岡線普通茂木行き
10:06 真岡
〈SLキューロク館〉 残念ながらコインロッカーはないらしい
10:46 真岡
 ↓ 関東自動車 バス 石橋駅前行き
11:13 石橋
11:16 下館
 ↓ 東北本線線普通宇都宮行き
11:31 宇都宮
〈昼飯・健太餃子〉
12:19 宇都宮
 ↓ 東北本線普通黒磯行き
13:10 黒磯
13:32 黒磯
 ↓ 東北本線普通新白河行き
13:45 新白河
13:57 新白河
 ↓ 東北本線普通郡山行き
14:36 郡山
14:41    郡山
 ↓ 東北本線普通福島行き
15:26    福島
16:19 福島
 ↓ 福島交通飯坂線飯坂温泉行き
16:43 飯坂温泉

次の日の行程はこちらからどうぞ
https://note.com/uttkw/n/n8ec243b89d78

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