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アートアクアリウムで背筋がゾクッとした話

Twitterでアートアクアリウムが炎上していた。
アートアクアリウムとは何年か前から期間限定で金魚をアートとして見せる、みたいな感じで話題になっていたやつだ。
最近常設になったらしい。

何が問題かというと、アートアクアリウムを訪れた人たちのアップした金魚の写真に、病気を持った個体が数多く写っているらしい。
極め付けは今朝のスッキリの特集で、責任者が「ここの金魚は世界で一番幸せ」と言ったそうだ。
その責任者の背後で泳いでいる金魚にも病気っぽい個体がいたようだ。怖いよ。

このアートアクアリウム、私は行った事がない。
行こうと思った事もない。水族館も美術館も大好きなのになぜなのか。
生物を光や音で照らしてアートと言い張る姿勢に、既にどこかで嫌悪感を感じていたのかもしれない。

そもそも金魚とはそれ単体で美しい生物だと思う。華やかな見た目の種も多い。
個人的には、ワビサビを感じるようなシンプルな場所でこそ映える見た目だと思う。

そもそもアートアクアリウムのようなカラフルな光があまり綺麗とは思えない。下品に思えてしまう。
知り合いに付き合って行ったチームラボですら「うーん」と思ってしまったくらいだ。

チームラボはまあそれなりに凄いとは思う。LED技術を総動員させた大掛かりな仕掛けがたくさんある。
体験型で来場者を楽しませる工夫もある。
それなりに「すごかったねー楽しかったねー」と言える場所だ。

だが、結局「すごかったねー楽しかったねー」だけで終わってしまう。
それで満足する層向けと言えばそれまでなのだが、アートや美術館好きな私からすると「それだけ?」となってしまうのだ。薄っぺらく感じてしまう。
結局あそこはただのエンタメ施設なのだろう。実際、インスタ層などを取り込む集客の工夫や着眼点などは素晴らしいと思う。ただ私の好みじゃないだけだ。

アートアクアリウムに話を戻そう。
アートアクアリウムとチームラボを楽しむ層はおそらく近いだろう。
正直、お客さんの大半はわざわざ本物の金魚を詰め込んで泳がせたりしなくても、おもちゃの魚だろうが何だろうが満足するだろう。インスタ映えさえすれば何でもいいという層だ。

では、なぜわざわざ本物の金魚を使うのか?それこそ育成にコストもかかるだろう(まあ育成環境は最悪なわけだが)。
単純に、本物の金魚を使った大規模展示という目新しさを狙ったというのもあるだろう。

だが、冒頭に書いた主催者による「ここの金魚は世界で一番幸せ」という発言は、「ただの金魚をこんな素敵なアートに昇華してやってるんだから、ここの金魚は一番幸せ」という発言にしか読みとれなかった。
展示の中には江戸時代の遊郭をイメージした水槽もあるようだ。

まず展示対象になっている金魚へのリスペクトが感じられない、そこに嫌悪感を覚える。かわいそう!というよりはただただ嫌悪感だ。
アートとしても悪趣味すぎて軽蔑する。

これが金魚じゃなくて、私の愛するチンアナゴだったら…と思うと、金魚好きが怒り狂う気持ちも分かる。
何年か前に愛知でも鳥で似たような事があったみたいですね。猫の病気をそのままにした猫カフェとかあったな。

ただただ閉じ込められて死にゆく儚き生命に美を感じる?いや、その美は分かりたくない。少なくとも人工的に作り出すものではない。

アニメ「PSYCHO-PASS」の女学生の死体を芸術的なアートに仕立てる事件を思い出した。
随分前に見たのでストーリーはあまり覚えてないのだが、なぜかそれが頭に浮かんだ。

アートとして踏み越えちゃいけない禁忌の領域だと思う。
ここまで考えて背筋がゾクッとした。

ちなみに水族館も生物展示という点で同じなのでは?という人も見かけたが、それは水族館という施設を理解していない。全然違う。
まず、展示されている生物たちはきちんとお世話されている。病気の個体をそのまま放置なんて論外だ。
生態研究や環境保全にも一役買っている。
実際に水族館に行くとそういった取り組みが紹介されている場所もある。

水族館という場で子供が生物に親しみを感じ、理解を深めるという目的もあるだろう。
実際に、幼少期に動物園や水族館が好き!という気持ちから、生物に関わる仕事に就いた人も結構いるのだろう。

そんなわけで、水族館(水棲生物)を愛する者、本来の意味のアートを愛する者の両方として悲しくなる話だった。

水族館といえば、東京スカイツリーの下にあるすみだ水族館。あそこでも金魚が展示されているが、とても美しい。もちろんきちんとお世話されている。オススメ。


でもここまで考えてる人って案外少ないんだろうな。
世の中、思ってたより頭からっぽで生きてる人が多いんだなというのは、大人になってから知った。
Twitterで話題検索しても深く考えてない人がたくさんいてびっくりする。

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