UXデザインを習ったけれど、実務でうまく使えない理由
UXデザインを習ったはいいけれど、いざ実務で活用しようと思った際に、うまくつなげられず、「???」となった経験のある方が、一定数いらっしゃるのではないでしょうか?(私も通った道です。)
今回は、そのあたりのお話を書こうと思います。
1.授業と授業の間の"忘却"
原因のひとつとして考えられるのは、"授業"の構造上発生する、"忘却"が原因のケースです。
単発で手法を学ぶならいざ知らず、UXデザインのひとつのプロジェクトを授業や講座で学ぼうとすると、どうしても複数日に跨がることになり、「ユーザー調査」「ユーザーモデリング」「プロトタイピング」などのように、各フェーズごとに授業が行われます。
合宿のように日程がつながっていれば良いのですが、授業が週一や月一の場合、どうしても前回の授業の記憶が薄れてしまいます。
ペルソナ を作成した1ヶ月後に、ユーザー体験設計を行おうとすると、アイデアを出す楽しさも手伝って、ユーザーがどこかに行ってしまったり、出したアイデアに辻褄が合うようユーザー側を歪めたくなったりします。
オフラインでこれらの授業を行うのであれば、今までの授業内容を、目に入りやすいよう、近くに貼っておくことをお勧めします。その上で、ユーザーから話が飛びそうな時に、都度、立ち返るということを意識して行えば、つなぎ目の補強ができます。
また、授業自体は1ヶ月ごとでも、途中で復習をすることも役立ちます。
2.実は、授業を受け終わった時点が、スタート地点
上の図の期間は一例ですが、業務で3週間でスプリントを回すとすると、開始からユーザー体験設計までを"スプリント0"、ユーザーが触ることのできるる状態にして評価を行うところまでを"スプリント1"とした時に、業務時間が1日8時間、対する1回の授業が7時間、各フェーズごとに行うとして、Maxで見積もって120時間使って行う内容を、授業ではプロセスや手法・必要な基礎知識を学びながら、21時間で実施することになります。
もちろん、業務では、並行して違う案件の対応をすることもあるでしょうし、会議など作業ができない時間や、休日などもありますから、実際には120時間も使わないケースが多いかと思います。それでもかけられる時間にはかなりの差があります。
UXデザインは「問いをたてる」「対話をする」ことが重要ですから、そういった時間も加味すると、要点を効率よく学べるようにかいつままざるを得ません。
(そう考えると、これだけのボリュームを短時間で収めつつ、受講者がきちんと要点が抑えられるよう、授業の設計・ハンドリングをしている先生方は、プロフェッショナルだなぁと思います。尊敬。)
加えて、受講者側もかなりの短期間に大量の情報を詰め込むことになるので、こぼれ落ちているものもあり、ひととおり授業が終わった時点で、いざ、自分の力でやってみようと思うと、うまく行かない、なんてことが発生します。
習得する上で大事なのは、その後、自分で実際にやってみることだと思います。そうすると、自分の理解しているところ、していないところが見えてきます。
そういった時に道標になるのは、授業の時のテキストです。(少なくとも私はそうでした。)自分で実際にやってみながら、教科書を見直してみると、「授業を受け終わった時点が、スタート地点」というのが身にしみてよくわかりました。
3.実務ならではの制約は学校では再現しづらい
UXデザインを習ったけれど、実務でうまく使えない理由として、実務ならではの制約は学校では再現しづらいことがあるのも原因かなと思います。
これは学校に限らず、勉強会でもそうですが、実務に近しい形で行おうとすると、下記のような現象が起こります。
・その業界や会社・製品・技術など、インプットにどれだけ時間をかけるのか(社会人が働きながら学んでいる場合、仕事の合間にインプットをすることになるので、かけたくてもあまり時間をかけられない。)
・インフォーマントを集める際、リクルーティング会社を使うとそれなりにいいお値段がするので機縁法になりがち
・あまりリクルーティング条件が厳しいと、インフォーマントを短時間で集めるのがきついため、ゆるい条件で進めることになる
加えて、実務の場合ですと、部署間や部署内の力関係やステークホルダー、社内の体制、抵抗勢力など人や組織の制約も出てきます。
こういったことは、授業では再現しづらいので、いざ、自分が始めてみてから、自社にあった対処の仕方や進め方を探っていくしかありません。
4.最後に
ここまで、UXデザインを習ったけれど、実務でうまく使えない場合に考えられる理由をいくつか挙げてきましたが、おそらく解決策は、どんな形であれ「実践あるのみ」だと思います。どんどん実践していった方が、例えたくさんコケることになっても、力になります。
もし、「うまく使えないぞ」と思っても、慌てない、諦めないことが大事だと、自分の経験を通して感じています。