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インプロとそれ以外の即興(エチュード・アドリブなど)の違いは何か?

僕は「インプロ」と呼ばれる即興演劇を専門にしているが、演劇の世界にはインプロと同じく即興で演じる「エチュード」や「アドリブ」と呼ばれるものがある。

ではインプロとそれ以外の即興(エチュード・アドリブ)の最大の違いは何かというと、「パートナーを大事にするか」という点にあると思う。

インプロの二大流派(あんまり流派とは言わないけれど)にはキース・ジョンストン(カナダ)のインプロとセカンド・シティー(アメリカ)のインプロがある。ふたつのインプロには大小様々な違いがあるけれど、しかしどちらにおいても「Give your partner a good time(パートナーにいい時間を与えよう)」「Make you partner look good(パートナーをよく見せよう)」ということが大事だと言われる。

そこにはいずれも「パートナーを輝かせるインプロバイザーが尊敬される」という文化がある。反対に、たとえ面白くても自分勝手なインプロバイザーは敬遠される。なぜなら彼ら・彼女らはインプロは、もっと大きく言えば演劇(Play)は、個人プレイではなく協働プレイだと知っているからだ。

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日本ではインプロが明らかに流行りはじめている。しかしそのことによって、もともとはエチュードやアドリブと呼ばれていた即興も「インプロ」として行われる状況が生まれはじめている。そこでは相変わらず「面白さ競争」が行われている(ちなみに、エチュードも本来はそういうものではない)。

僕はそのような状況を残念だとは思うけれど、あえて否定しようとも思わない。相手に対して「それは間違っている」と言うよりも、「僕はこっちのほうが面白いと思うけど、どう?」という提案をしていきたい。(ちなみに僕のワークショップを受けて「エチュードには苦手意識があったけど、インプロは楽しい」と言ってくれた人は何人もいる。)

インプロは僕のものではない。そもそも誰のものでもない。それは演劇が誰のものでもないことと同じことだ。しかし僕がやるインプロはいいものでありたい。ただそれだけである。

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