私が本にハマった理由

 小学生の頃はそこまで頻繁に読んではいなかった。友達に薦められて読んだ本がちらほらあるぐらい。

 私が本格的に本にハマったのは、中学生になってから。いじめが始まった頃だった。

 クラスの女子数人と男子半数がいじめをやり始めた。担任にも訴えたが、被害妄想で済まされる。いじめは半年間続く。しかしその間、私は一度も自殺や不登校を考えたことがなかった。もちろん、学校に行きたくない日もあったが、「ずっと」学校に行きたくないとは思っていなかった。

 ではなぜ、毎日「死ね」だの「消えろ」だの言われ続けて自殺などを考えなかったか。

 私の周りの環境、及び『本』のおかげである。

 ざっと「周りの環境」を説明する、前に、私の性格を少し書いておく。結構大事な要素なので。私はそもそも幼い頃から一人暮らしを始めるまでずーっと、学校から帰ってすぐ、料理をしている母の横でその日あった出来事を話さないと気が済まない性質だったのだ。嬉しいことも怒ったことも疑問に思ったことも。もちろん、いじめのことも。だから、ある意味それがストレス発散にもなったのだと思う。

 上記を踏まえ、「周りの環境」に話を移す。なかなか本に辿り着かず申し訳ない。

 私には小学校の頃から、ほとんど毎日と言っていいほど遊んでいる友達が、別のクラスではあるが何人かいた。友達にもまた、私はいじめのことをペラペラ喋っている。なんとなくわかってきたのではないだろうか。そう、私は相手との親密度が高ければ高いほど、「隠し事ないの!?」と思うぐらい赤裸々に喋るのである。あ、もちろん今は隠し事をペラペラ喋る性質はでない。そこは大人なので。

 加えて、褒められることが大好きなので、先生たち(担任以外)とも、休憩時間よく話していた。女性の先生は特に、頭をなでてくれるので、わりとアグレッシブに突撃していた、と思う。

 つまり、いざとなれば自分の味方になってくれる人がいた、という事が大きいのだろう。もちろん、単純な性格だったので、計算して味方を増やしていたわけではない。そこは誤解のないように!

 そして、やっと本題。上記の事柄がある上で、それでも現実が辛い事なんてたくさんあった。だから、私は現実逃避の場を探していた。その時まであまり興味もなく、足が向かなかった図書室に出入りするようになる。いろんな本を手に取ってみて、興味を持ったのはファンタジー小説(ライトノベルも結構読んだ)。

 ダレン・シャン。バーティミアス。デルトラ・クエスト。鏡のなかの迷宮。ちょっと系統は違うが、シャーロック・ホームズシリーズ。そして誰もいなくなった、などなど。

 帰ってからずっと寝ずに朝の5時まで読んだ覚えがある。同じ部屋で寝起きしていた姉に怒られたので、翌日が休みの時だけだったが。

 司書の先生にも、よく自分の読んでいる本の系統を話しておすすめを聞いていた。高校生になっても図書室通いは続いて、司書の先生に読んでいるシリーズの新刊が出ればすぐ教えてもらえるぐらいに。おかげさまで全学年図書貸出総数トップ10に入るぐらいまでハマった。

 小説がとてもいい現実逃避をさせてくれた。私は第三者視点から本を楽しむというより、自己投影型。自分が主人公になって旅をするのだ。

 初めて主人公の想い人が亡くなったシーンを読んだときはショックがヤバかった。今でも主人公を庇って亡くなった好きなキャラの名前を覚えている。「ゼラフィンがぁぁぁぁ!!!」と心の中で叫びながら深夜に泣いた。多分本で泣いたのはこれが初めて。

 いろんなファンタジー小説に何度も助けてもらった。読書の傍らから「死ね」「キモい」と言われても、それどころじゃない。今、親友がお宝の誘惑に負けて呪いにかかっちまったんだ! だから、「触るなよ~触るなよ~」って言ったのに!! 呪いを解くためには……あ、ほら! なんかチートアイテム貰ってたじゃん! 早く思い出して!!

 ファンタジー小説って休憩あんまりなくないっ? といった具合に急展開が続くので、いじめてくる奴に構ってる暇がないのだ。授業が始まっても、勉強そっちのけで頭の中は「あの後どうなった?」と終始気にしている。そして、授業が終わればサッと次の授業の準備をして、バッと本を出して本の世界に入り浸る。おまけに、友達とこの本良かったよ!とおすすめしあったり。

 大人になってからは、アニメが怖すぎて読めなかった十二国記や、仲間が死ぬのが映画で分かって読めなかったハリー・ポッターシリーズを大人買いして読んだ。アニメ、実写版とは、ところどころ話が違ってめちゃくちゃ面白い。

 本はその世界観に没頭できるからハマる。絶対に経験できない冒険譚がそこにはたくさんあって、しかも何度でも追体験でき、自分なりに展開を変えて想像するのも楽しい。当時は納得できない終わり方だとしても、大人になってから読むと納得できたり、やっぱり腑に落ちなかったり……。感情むき出しで楽しめるからこそ、本は私の人生になくてはならないものなのだ。

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