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よもやま語らいゼミ開催後記⑪「『適当に』とは何か」

よもやま語らいゼミとは東大生を対象に、あるテーマについて自由に話し合いをするイベントです。8月18日開催の今回は「『適当に』とは何か?」をテーマにし、運営側も含めて約十人で話し合いました。日常でよく使われる言葉がテーマだったからか、それぞれの経験などに基づいてチャットも含めて面白い話が色々できました。その様子を適当に紹介したいと思います。

よゼミでは、最初に話題提供としてサポーターがテーマについて考えたことを簡単に話します。今回は「適当に」という単語がテーマだったこともあり、辞書の意味から確認していました。辞書的には、まずは「ふさわしいこと」「程度がちょうど良いこと」といった意味が先に来るようです。試験問題でも、よく「適当な選択肢を〜」という文言を見かけますよね。一方で、日常では「いいかげんに」といった意味でもよく使われます。「テキトーな返事をする」みたいな感じですね。このように相反する2つの意味を持つ単語だからこそ、いろいろなエピソードが出てきました。

まず、「適当に」を自分が使う時、「テキトー度合い」を適切に伝えるにはどうするか、と言う話が出ました。文面で書くときは「適当」と「テキトー」を使い分ける、といった人や、前提を共有できている人には「適当」を使うけど、そうでない人にはその内容を具体的に伝えるようにしている、という人もいました。

新しく入ったバイトなどで、「適当にやっといて」などと言われ、どのくらいテキトーで良いのかわからず困った、などの経験談から、「適当に」と言われた時どうするかの話も出ました。周りをみてなんとなくやる、前例を調べる、などの声もあったほか、怒られるまで手を抜く、といった人や、1回目はできるだけ頑張って、そのあとは相手の許す「テキトー」度合いを探りながら徐々に手を抜いていく、といった人もいました。

次に、「テキトー」にやるって難しくない?という話もしました。完璧主義的な性格で、ついついちゃんとやらなくてはと思い、いい加減でいいところも頑張ってしまう、といった人も何人かいました。そのような人は、終わった後に「もっと手を抜けばよかった..」と後悔することもあるようです。もしかすると、東大生にはそのような人が多いかもしれませんね。

一方で、最初はすごくモチベーションがあって、完璧を目指していたけど、自分の目指す水準に達するのが難しいとわかった瞬間に悲しくなって「テキトー」になってしまう、という声もありました。これに対しても共感する人はおり、何事もある一定の水準までは、かけた時間と成果がある程度比例するけど、それ以上は成果の向上度合いが小さくなるので、そのあたりが「テキトー」になってしまう一つの壁ではないか、という意見も出ました。しかし、そのような現象は必ずしも避けるべきものではなく、最初に完璧を目指していた気持ちだけでも意味があり、時間が経った後でまたやろうとか、自分の趣味としてまたやるきっかけになることもあるのでは、という前向きな意見も聞かれました。

「適当に」やることに関して、何かの仕事に熟達すると、諸々のことをなんとなくできるようになり、そのような状態も指すのではという話も出ました。職人さんはいちいち材料の量を測ったりしないよねとか、AIは「適当に」何かをすることはできないかもね、といった声も上がり、ヒトのすごさを再認識する場面も見られました。

次に、「適当に」という言葉自体についての話もしました。なぜ、相反する意味があるのでしょうか。最初は「適切に」と言う意味だったけど、世の中そんなにちゃんとしなきゃいけないことは少なくて、「テキトー」にやるのが適切なことも多いので、そのうち「適当に」という言葉自体が「いいかげんに」といった意味を持つようになったのでは、という意見や、何かを達成するときに、みんな次第に手を抜くプロになって、「適度に手を抜く状態」が「てきとうに」だと認識するようになったのでは、という意見などが出ました。

また、「適当に」と言う言葉は、何かを頼むときにハードルを下げようとして使う時もあるのでは、という話もしました。「全然適当でいいからね」みたいな感じでしょうか。期待通りハードルが下がることもある一方、受け取り方によっては、どのくらいテキトーで良いのかがわからず、逆にハードルが上がってしまうこともある、といった声もありました。ハードルを下げたい時は、「適当に」ではなく、「ゆるく」や「できる範囲で」といった表現の方が良いのではという意見がありました。参考になりますね。

一方で、「適当に」と言う言葉は、相手に責任を押し付けようと思っていたり、相手の能力をはかろうと思っていたりするときにも使われるかもしれない、という声も出ました。受け取る側は、相手の「適当」の意味を色々考えないといけなくて、大変ですね。私も「適当に」はよく使う言葉なので、自分が「適当に」を使う時は、できるだけどういう意味かがわかりやすい形で使おうと反省しました。

さてさて、「適当に」という言葉に関して、さまざまな観点からの話があり、それをここまで紹介してきました。この形容動詞一つでこんなに話せるとは思いませんでした。個人的には、「適当に」何かをできる状態ってすごく熟達していて、それはAIにはできないことかもしれない、という見方はこれまでしたことがなかったので、とても面白いなと思いました。「適当に」やるプロになれば、AIに仕事を奪われないで済むかもしれないな、と安心しました。

そのほかにも、(よゼミにおいては珍しく?)今後の生活に役立ちそうな話もいろいろ出てきました。参加してくださった方、ありがとうございました。9月のよゼミは、「自分の寿命が売れるとしたらどうする?」というテーマで開催します!
チャットのみ参加・聞き専でも、ご飯を食べながらでも大丈夫です。ぜひお気軽にご参加ください。


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