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tacica TOUR 2022 “singularity” TOUR FINAL at SHIBUYA CLUB QUATTRO 感想

はじめに

tacicaにとって8枚目となるフルアルバム「singularity」のリリースツアー。6月29日に先行でダウンロード配信が開始され、CDはライブ会場にて販売という形が取られた今回のアルバム。
7月の千葉公演から8月の東京公演まで全国6都市を周るツアー。このような状況において、何事もなく無事に完走出来たことは誇らしく感じた。
ラストを飾るに相応しい最高のライブであった。

セットリスト

  1. Dignity

  2. 冒険衝動

  3. BROWN

  4. 群青

  5. 掟と礎

  6. space folk

  7. デッドエンド

  8. クローバー

  9. アロン

  10. 某鬣犬

  11. GLOW

  12. バク

  13. アシュレー

  14. ねじろ

  15. 人間賛歌

en.
ダンス(猪狩さんのみ)
人鳥哀歌
HERO
 
今回は東京公演後に公式がツイッター上でプレイリストを公開していた。ありがたい。
singularity収録曲のstarsは演奏せず。

感想

ミラーボールが輝く中、Dignityのイントロが流れ出し、自然に猪狩さんの歌声が入る。
「僕がもし人間だったら」一発目の曲から突き刺さるフレーズが響く。
そのまま、ライブではお馴染みになっているアレンジのベースから始まる冒険衝動。シングル時にはイントロがなかったが、アルバムにはこちらのイントロが追加されている。衝動に駆られる感じを掻き立てられる。

いつも通りに「ありがとう、tacicaです。最後までよろしく」と手短に挨拶を終えると、同タイミングでBROWNのイントロが響く。サビの小西さんのコーラス、アウトロの中畑さんのドラムなど見どころ満載。
それにしてもやっぱりいい歌詞だな、としみじみ思ってしまう。
青色の照明がステージ上を照らし、メンバーがはっきりと映し出されて始められた群青。曲調としては割と静寂な感じがするのだけれど、内から盛り上げてくれるような曲。
「エンジン音のない白い車は泣いたりしない僕にそっくりだ」
「エンジン載せ替えてまで行きたい場所がある」
同じエンジンという言葉を使ってるのに意味合いがこうも変わるのか。
青いライトから対照的な太陽のような黄色い暖色系のライトが照らされる掟と礎。時折、中畑さんがニヤッと笑ってたのが印象的。

その後のmcでは「無事にファイナルが出来て良かった」と語り、大きな拍手が起こった。だがその後すぐに「こんなmc早いよね。もっと後に言うはずだったのに」と続けて"何ともtacicaらしい"締まらないまま次の曲に。

アコギに持ち替えて、space folk。何度も弾き語りで演奏し、リリースされていないにも関わらずツアーのタイトルにもなっていた曲。アウトロの音がたまらない。
ここから某鬣犬までの流れは必見、必聴。

数秒の間から猪狩さんの歌声から始まるデッドエンド。周りの人達は割とノリノリで身体を揺らしながら聴いていたが、私はあまりにも刺さり過ぎて動くこともままならないほど没頭して聞き入っていた。アーカイブで見返すと猪狩さんと小西さんが二画面に分割され、同時に映される演出がなされており、これもまた良い。
そして、まさかのクローバー。サビでは小西さんも声を張り上げ、間奏のギター、ベースの音最高。
サイケデリック的な照明が印象的なアロン。御三方の演奏は思わず息をするのも忘れるほどになる。ツイッター上で先にライブへ参加された方々がアロン格好いい、格好いいと声を上げるのが分かる。個人的に不意打ちを喰らった某鬣犬。あのイントロはズルい。のらないわけにはいかなくなる。猪狩さんの雄叫びにも似たような声、飛び跳ねる小西さん。見ていて気持ち良くなる。

ここで、恒例の小西さんによるグッズ紹介。
ベースを置いて、グッズの紹介をしようとする小西さんに、中畑さんが「ゆっくりやるつもりだね」と立ち上がり声を掛ける。小西さんを見守る姿はさながら授業参観のようだと失礼ながら思ってしまった。
CDについて熱心に説明する小西さん。先行視聴会でも話されていたけど、本当にこだわって作ってるんだなということが伝わってきた。
「まるで自分が全部手作業で作った感じで言ってたのが良いなと思った」という猪狩さんの言葉に小西さんが驚きつつ照れ笑いをしていた。ただ、その後猪狩さんから「なんで中畑さんの紹介しなかったの?」とダメ出し(?)を受けていた。

会場に来る前に乗っていた電車で、お婆さんに席を譲ろうとしたら、結構な力で席に戻されたという話をする猪狩さん。登山の格好している老夫婦に席を譲るのも迷うという話をしようとした猪狩さんに「配信してるからね」と中畑さんが呟く。すると、気まずそうに猪狩さんが口を噤んでいた。 
この緩いトークもtacicaのライブの見どころだと思う。

緩いトークのあとに始まったのはGLOW。mc前までのアップテンポの曲から打って変わって落ち着いた曲。singularityの中では割と暗めな感じでhomeland 11 bluesあたりに入っていても違和感ない気はすると個人的には思う。中畑さんのドラムが鳴り響く中始まったバク。2番の歌い出しの猪狩さんの息継ぎに、凄っ、と思わず声が漏れた。「手の鳴る方へ」の中畑さんのコーラスも好き。配信ではここも猪狩さん、小西さんが同時に映される演出あり。
そして、アシュレーへと続く。クローバーと同じアルバムに入っている初期曲。初期にありがちながなるような猪狩さんの声が聴ける。
ねじろを聴くと昨年の"象牙の塔"を思い出す。それと同時に野村さんのいない寂しさを感じてしまう。

「長い時間をかけて作ったアルバム。ここ数年のCD不要論みたいな風潮とかもあって、どうやって出すべきかを考えていた。でも、やりたいからやる。作りたいから作る。ライブをしたいからライブする。来てくれたみんなも聞きに来たいから来てるんでしょ。だから難しく考えなくてもいいのかなって思った。恐らく性懲りも無く曲を出すし、ライブをやる。また、みんなが来たい時に来れる場所をつくっておきます
本編ラストの前に猪狩さんはこう語っていた。ファンにとってこれ程嬉しい言葉は無いと思う。どんな状況になっても、やりたいことをやり続ける。来てくれるファンの人達の為に。そんな決意表明の後にsingularityのラストに入っている人間賛歌を演奏。ラスサビ前のアカペラは圧巻、鳥肌もの。
"私は今日のライブのことを話すだろう。数年先の未来でも"

アンコールの拍手が鳴りやまぬ中、登場したのは猪狩さんお一人。演奏するのはダンス。弾き語りで演奏を重ねたためにバンドでのアレンジが受け入れられなくなったと語る曲。音源ではコーラスがあるがそれもなし。ただ本当に一人なのか、と思うような濃厚な演奏だった。
小西さん、中畑さんがここで再登場。中畑さんが「小西くん、泣いてたよ」と暴露。すかさず猪狩さんが「小西は泣かないです」と否定していた。
「ごめんね。ファイナルくらいはサプライズでハモ(コーラス)があるんじゃないかって。そんな気全然無かったよ。毎公演毎に一人でやるんかーいってツッコミが聞こえるんだよね」
個人的にコーラスにも期待していたのだが、パーソナルなものになり過ぎてtacicaとして出せるのか悩んだと以前語っていたので、恐らく今後もこの曲は一人でやるのかなと思っている。

猪狩さんが徐に資料を手に取り、「ライブやります」と宣言し、会場に大きな拍手が起こった。

〜三大博物館 動物達の遊戯(ゆげ)〜

動物の曲だけでセットリストを組んだライブ。
動物の定義で"人間"は入るのか、"神様"は入るのかと悩んでいるとのこと。
中畑さんから「無事、一本も欠かさず来れたtacicaのお二人に拍手」との温かいお言葉も飛び出す。
ずっとアンプの上に乗っていたペンギンの人形をステージ前方に置いてからの人鳥哀歌。やっぱり盛り上がる。定番となってる手拍子も楽しい。
ラストはHEROで締め括られた。

"0から築けそうだ何度も"

HERO 

また何度でもやる。また来る。また会える。
こちらこそ、ありがとうと言いたいライブだった。

公演終了後

今回のライブ、公演終了後の物販では猪狩さんがスタッフと一緒にグッズの手渡しを行なっていた。公演前にCD等は買っていたのだが、折角の機会だと思い、手拭いとtシャツを購入するために並んだ。先程までステージにいてお疲れのはずなのに立っている猪狩さんに感激した。ステージ上と同じようにありがとう、と一人一人に渡していた。嗚呼、なんて良い人なのだろうか。それほどまでに良いものを作ったという自信があるのだろう。tacicaの想いを感じることができた。

CDについて

今回力を入れたと語るCDがこちら。

age8はお子さん

金色に眩しく輝く。NASAのゴールデンレコードを模しており、tacicaのsingularityが宇宙の何処か知らない星に辿り着いたらという体で作ったという今回のCD。その秘話はこちらにて。

二進数が各所に記されている。CDの表面に刻まれている数字は収録時間。歌詞カードに記されているのはその曲のタイトルだ。
熱弁していたようにこだわりが垣間見える作品となっている。
通販でも現在は購入可能なので、興味を持たれた方は是非購入を検討して欲しい。買って損はないはず。


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