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うとQ世話し「子、親を選べず」

2021/1/28-2
(うとQ世話し「子、親を選べず」)
真之介君は、時々自分のお父さんが少しおかしいんじゃないかなと思うことがあります。
仕事は一生懸命するし、ご飯もちゃんと作ってくれるけれど、突然
「なんで鳥は空を飛べるようになったねぇやろ、なぁ?」
等と言ったりするからです。
真之介君にしてみれば
「空を飛ぶのを鳥、言うて、飛ばんのを動物というねぇやないの?」
くらいにしか思っていなかったからです。
それにそんなどうでもいいような事を考えても仕方ないし、とも思っていたからです。
しかしお父さんは更に続けて
「鳥に羽がなくなって地上を歩く動物になったねぇやったら未だ分るねぇやけど、ものの本によれば順番はその逆や、と書いてある。なんで動物の手足が羽になったねぇや?何で空飛ぶ必要があったねぇやろか?それってどんな場合や?」
こうなるともう真之介君には返す言葉がなくなってしまいます。
仕方がないので、この辺からは
「又、始まった。勝手にさしとこぅ」
と肩をすくめてしまいます。
でも、お父さんは未だ諦めません。
「そっかぁ、ムササビや。木から木へ手足の間にあるマントを広げてグライダーみたいに滑空するムササビの、あのマントの部分が突然変異して、二枚マントになり、又変異して三枚、四枚、複数枚の果てに羽になった。そういう奴だけが残って、ふぅんでもって、パタパタそれを動かしたら、グライダーじゃなくて飛行機みたいに操縦できる事に気づいた、餌もその方が採りやすかったねぇやろ、きっと、それや、きっと」
見るとお父さんの顔には晴れ晴れとした満面の笑みが浮かんでいます。
「あちゃぁ」
真之介君は思わず自分の額をぺたんと叩いてしまいました。
そうしてだんだん不安になってきてしまい
「ねぇ、おとん、そんなことより自分、塾にいかんでえぇの?みんないっとぅで?」
と思わず訊いてしまいました。
するとお父さんは
「塾?塾、行っても、なんで鳥が空を飛ぶようになったかとか、教えてくれへんねぇやろ?
疑問抜きで、いきなり解き方から入るやぁろ?
あと、解く時間の早い者勝ち競争やろぅ?
そんなん、学校卒業してから解けることやってあるやぁん。いつか解けたらえぇねぁで。
その方が、考え深こぉうなって、えぇやん。
せやから、わしみたいのは、いつも置いてけぇぼりやった。
そねぇな処、金払ろぅていって、どぅないすんねぇや?つまらんから、やめとき」
真之介君は何だかだんだん怖くなってきました。
「昨日教わった小六漢字で言えば、即効性且つ有効性まるでなし。
話にならんわ」
このまま行ったら、自分の「将来」はどうなってしまうのだろう?
誠君のうちみたいなお金持ちには「絶対に」なれっこない。
そう思うと真之介君は、自分のお父さんを取り替えたくなってしましました。

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