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うとQ世話し ナマステ別館堂主人 あれから二年

2021/6/22
(うとQ世話し ナマステ別館堂主人 あれから二年)
「馬鹿が戦車でやってくる」
「わだばぬほんのゴッホぬなる」と言った版画の棟方志功だったか、放浪の天才画家山下清がモデルだったかは忘れましたが、子供の頃のテレビ番組でそんな題名のドラマを遣っていました。
その「戦車」が当店にやって来たのです。
「馬鹿」は乗っておりませんでしたが代りに「脳天気」な自分の処へ。
戦車と言っても無論本物ではなくプラ模型の戦車と艦上爆撃機と全長50㎝はありそうな戦艦。
是は或ご老人の遺品でした。
いずれも大変手間の掛かった凝った仕上りの物で可成りの趣味人だった事が伺われました。
事の経緯は、自分の知り合いの「故人とバイク仲間の新聞屋さん」が或時配達に行くと新聞受けに数日分の新聞が溜まっているのを不審に思い、警察に届けたところ家の中で孤独死しているのが発見されたのだそうです。
その新聞屋さんは離れて住んでいる親族から遺産整理を頼まれ、その中で不用だと言われたのがそれらのプラ模型で、ならば捨てるのも何だからと自分が譲り受けたのでした。
最初は
「今のご時世、こんなものを店に飾って置くと軍国主義者だと言われかねない」
なので、子供の頃から模型作りが大好きな自分としては
「誠に残念だが仕方が無いので家に飾って一人で見て楽しもう」
そう思っていたのですが、チラ見をして行く通行の方々の様子を見るとはなく見ていると、結構面白がっているのが見て取れましたので、
「ならばこのままにしておこう」
と意を翻しました。
するとその数日後の夜、お店へテイクアウトをしに来られたお客様の一人がカリーの出来る迄の暇潰しにこのナマステ別館堂の方に入って来られたのです。
夜は「蔓延防止対策の関係」でお客様の入店を制限し、自分の「ぼんやりし処」になっているこのナマステ別館堂の方に。
そうして飾ってあった遺品のプラ模型を繁々とご覧になられて
「面白いものがありますねぇ。アメリカの戦艦ミズーリ。艦上急降下爆撃機のドーントレス。それとこの戦車は、多分陸自の74式」
「お若いのにようご存じで。
これは或方の遺品で自分も子供の頃よぅけ模型を作ったりしていたので船と飛行機の名前迄は分かったのですが、この戦車迄は分かりませなんだ」
「この戦車、大震災の原発事故の時、派遣された奴なんですよ。74式というのは1974年式の事で当時米ソ冷戦真只中。水爆が落ちた後も行動できるように完全密閉構造で設計されていたので派遣されたんです」
驚きました。
いや魂消(たまげ)ました。
物作りをする時にそんな想定領域がある事に。
そうしてそんな事を知っている人が居る事に。
更にはそんな人が偶然にも当店を訪れた事に。
世の中というものは矢張不可思議で面白い。
ある日突然、全く関連の無いものが、想像やにしない理由で突如繋がる。
是だから自分はぼんやり座っているだけの別館堂主人を止める事が出来ないのです。
2年間色々言われ続けていますが。

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