うとQ世話し 続「子、親を選べず」その二 改

2021/2/25-2
(うとQ世話し 続「子、親を選べず」その二 改)
「おとぅの言う事まともにききよったら、いい目は見られん」
と思っている真之介君は最近、多少内心の揺れはあったものの、お父さんの話を、大抵は「いなし」「かわし」の「うっちゃり」で外に弾き出す様にしていましたが、ある時、お父さんが面と向かってこんな事を訊いてきました。
日本の人はお父さんの事を大概スルーするので、結構真之介君にお鉢が回ってくるのです。
「真之介、お前だけやねぇが、一体全体己らは、何をそうビクビクして暮らしとぉのや?あん?なんでや?いぅてみ」
之には、真之介君も参りました。
余りにも唐突で且つ的を突いていたからです。
それでも真之介君は、動揺を隠しながらかろうじて
「何やの?突然。何のこっちゃ?よう分らんが」
と返しました。
「わいからすると、老若男女、皆、なんか怖じ気づいとぉいぅか、臆病風に吹かれとぉいぅか、肚も腰も浮き足立っとる様にしか、みぃへんのやが」
「そねぇな事はないわ。おとぅが、勝手気儘すぎるだけの話と、ちゃうんかぃ?」
「己らがビクビクしとぉのは「過剰忖度」のせいや。忖度のしすぎや」
「そんたくぅ?って、なんやの?ドンタクなら知っとぉが」
「言われも、頼まれもせんのに、気を回していろいろする、こっちゃ。あるいは、せん、こっちゃ。
見た処、うちらは、政治家と言わず一般ピープルといわず、あらゆる人が日常茶飯事、行住坐臥、夜を日に継いで、この「忖度のプレゼント合戦」と「相手から受ける忖度の値踏み合戦」を日々、街中のあちこちで展開している様な気ぃがするわ。之じゃぁ疲れるし、忖度なんぞという曖昧極まりない物に、全ての土台を置いているとすれば、不安と恐怖でビクビクにも、なるわなぁ。
国民皆保険じゃのぅて、国民皆忖度の蟻地獄やで」
学校の勉強が大嫌いな真之介君は家に帰ってまで国語の授業なんか受けたくなかったので、ここは八卦に逃げるにしかずとばかり、本当は「ゲームをしに」だったのですが
「おとぅのインチキ国語、なろても、学校で役にたてひんさかぁ、二階でお宝ビデオでも見るわぁ」
と、ハッタリをかますと、お父さんは
「おっ、いつの間にか成長しおったな、真之介」
と上手(うわて)を繰り出してきました。
いやいや、上手などと言う高等技術ではなく、どうやら本心の様です。
またぞろここから別の話に飛火して、地滑り的時間拘束の、それこそお父さんの言う「蟻地獄」に吸い込まれては堪らないので真之介君は思わず
「ほな、上がるわ」
と時限タイマーを強制発動させて、さっさと二階に上がってしまいました。
そこでふと
「おとぅこそ、あれで中々「変形」忖度強要ビームをおかんの後ろから毎日撃ちまくっとったのが、おかんトンズラ原因の一つかも」
と思い
「忖度からかどうかは「?」やが、おとぅも含めて後ろから相手、チョロ見のスパイ駆引き合戦があるのはピンポンかも」
と推理中の探偵の様に頷きました。

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