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不動産譲渡担保の事案類型ごとの処理手順

みなさんこんにちは。
東大ロー研究所の所長(仮)です。
本日は、民法における譲渡担保の事案類型ごとの処理手順について解説いたします。
判例が存在する類型は判例に従い、判例が存在しない類型は存在する判例から導かれる帰結をお示しいたします。

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弁済期経過後の処分について

①弁済期→処分→弁済(平成6年判決)

 譲渡担保権者は、弁済期の経過によって担保目的物の処分権能を取得するから、譲渡担保権者がかかる権能に基づいて目的物を第三者に処分した以上、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得する。
最判平成6年2月22日
最判平成18年7月20日(差押えの事案)

②弁済期→弁済→処分(昭和62年判決)

 弁済期経過後であっても、処分前であれば、譲渡担保設定者(債務者)は、弁済することによって受戻権を行使することができる。
∵譲渡担保権者は、弁済を受けることができれば満足する
最判昭和62年11月10日

受戻後に処分が行われた場合には、譲渡担保設定者と譲受人は対抗関係に立つ。


③弁済→弁済期→処分(判例なし)

 弁済期経過前に債務者が弁済した場合は、債務者は受戻権を行使することができる。債務が弁済されている以上、譲渡担保権者は目的物の処分権能を有することはないから、その後の処分は、無権利者の処分となる。譲受人の保護は、不動産の場合は民法94条2項類推適用によってのみ図られることとなる。


弁済期経過前の処分について

④弁済→処分→弁済期(平成18年判決傍論)

 譲渡担保権者は、担保目的物の交換価値を把握するにとどまり、処分権能を有していないから、譲受人は、目的物の所有権を確定的に取得することはない。したがって、譲渡担保権設定者は、債務を弁済すれば、受戻権を行使することができる。
→譲受人は、94条2項類推適用による保護を受けうるのみ。


⑤処分→弁済期→弁済(判例なし)

 弁済期経過前の処分であっても、譲渡担保設定者が弁済をせずに弁済期が経過した場合には、譲渡担保権者は目的物の処分権能を有することとなり、受戻権を行使する権限を失うから、譲受人は目的物の所有権を確定的に取得する。


⑥処分→弁済→弁済期(平成18年傍論)

 債務者が債務を弁済期経過前に弁済した場合には、受戻権を行使することができる。そして、弁済期経過前においては、譲渡担保権者は目的物の処分権能を有さないから、譲受人が目的物を確定的に取得することはない。
→譲受人は、94条2項類推適用による保護を受けうるのみである。

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