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会いたかったオトコたち#01_ペンギンの人・岩合光昭さん 

縁とは、本当に不思議なものだ。
まさか、つながることがあるとは思ってもいなかった縁が、つながった。
動物写真家の岩合光昭さんだ。

岩合さんといえば、いまでは「ねこの人」。
でも、昔、あのときの岩合さんは「アフリカの人」だった。

もう30年以上前になる。
当時、広告代理店でコピーライターをしていた。
あるとき、精密加工会社の会社案内の仕事が入り、企画担当になった。

何かいいアイディアはないか、写真素材のカタログをめくっていると、
アフリカの草原を疾走するチーターの写真が目に入った。
その精悍な姿が、精密加工の「スピーディーな技術進化」のイメージと重なった。

写真の下に小さく書かれていたのが、「岩合光昭」というカメラマンの名前。
「岩合」という姓は珍しく、見覚えがあった。
ちょうど奥さんの岩合日出子さんが、一家でアフリカで暮らした体験を綴った
『アフリカポレポレ』という本を読んでいた。
その中に出てきた「動物写真家の夫」が岩合さんだった。

さっそく岩合さんのチーターの写真を借り、
巻頭の企業イメージのページに載せた会社案内はクライアントにも好評で、
自分にとってもオモシロイ仕事になった。

しばらくして新しい年を迎え、岩合さんの事務所から年賀状をいただいた。
夜明けを待っているような薄闇の南極大陸に、すくっと立つ一羽のペンギン。
真正面から撮った写真に、「おだやかな日々1991」の文字。

それから、「おだやかな日々」とばかりはいかない毎日を、
ペンギンが黙って見守ってくれているようで、ずっと部屋に飾ってきた。

そして、「ペンギンの人」は、いつの間にか「ねこの人」になっていた。

今年4月、岩合さんが講演会で地元に来られると知った。
あの写真の岩合さんに、会える! 会いたい! 会いに行こう! 

当日、講演会後の短い時間だったお会いすることができて、
チーターの写真のことやペンギンの年賀状のことなど、お話させていただいた。

にこやかで、ゆったりとしていて、
「世界ネコ歩き」で流れる「いいこだね」の優しい声そのままの方だった。

それでも、やっぱり岩合さんは、いまも「ペンギンの人」なのだ。


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