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野球とピアノ/空間認識や身体感覚

小さい時から音楽室に通っていた素朴な男の子が、今や、身長は190に届いてるんじゃないかというくらい成長して、立派なずうたいの野球少年に成長しています。
その彼の鳴らす音のボリュームとクリアさに軽く嫉妬すら覚える私です。野球とピアノの間にあるものはなんだ。

これは、きっとどんな大きなホールの御し難いフルコンサートピアノでも豊かに響かせられるな。

小さい時はリズムも音程もかなり怪しく、練習もやってるのかやっていないのか(そもそも私はあまり気にしない)…..ただ、いつピアノに飽きるだろうかと思っていたけれども、発表会となるとがぜん集中力を発揮して、なぜかみごと本番が一番いい演奏をしてくれる人で。

小さい時から野球が大好きだったから、よく、体や感覚の話を一緒に話し合いました。
ピアノを弾く身体の状態、感覚や認知の状態から、野球に活かせるものがあるかもと、ボディマッピング、モノと身体の接点の話、古武道や、動体視力のことなどなど

中学校になって、コードを覚え、そのころからポップスに目覚め、好きな曲を選んでは時間を割いて練習に励んでいる様子が何も言わなくても伝わってきます。
本人は勉強は苦手、というけれども、どっこい、コードの展開型もサッと、反応できるのは、運動神経の良さも手伝ってのことかな。いや、この人音をよく聞いている。ゆっくりと弾きながらミスを避け、心地よいところへ指が動くようになっているのです。

その彼に中3で時間がある今、ちゃんとした曲も弾いてみないか、と勧めたのが「エリーゼのために」
これが、楽しいらしいです。
もちろんそんなやつですから、決してパラララランと華やかに華麗に演奏するわけではないのですが、とにかく音が美しい。リズムもいい。
こんな演奏されたら、エリーゼも惚れると思うなあ。
そして、この音の深さは、私が教えたものではないと思いました。
私の知らない何か、と彼はよく知っている、そんな気がします。

野球というフィールドでの速度感、モノとの衝突感、飛距離、空間認識。
まえうしろの身体感覚、ボールを握り、手放す指。
そりゃ、野球のフィールドでもさぞのびのびとやっているのでしょう。

鍵盤より大きいんじゃないかと思うような指で、何の邪気もなくすとんとその重みを乗せる、それだけで、彼のもっている空間が音になる。

私が教えたささやかなものを吸収し、自分のものとし、世界に踏み出してってる彼。嬉しいなあ、と思うと同時に、巣立ちも近いのかなとも感じています。いずれにせよ高校になったら本当に野球一色になるんでしょう。それでいいし、それがいい。

どの子も楽しみだな、私の知らない世界へ旅立つのが。

*写真は幼稚園の生徒の絵。utena drawing で使った画用紙に続きを描いていた。この色の配分って、どうよ。凄すぎる。






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音楽前夜(谷中みか)
愛媛の片田舎でがんばってます。いつかまた、東京やどこかの街でワークショップできる日のために、とっておきます。その日が楽しみです!