明日への招待状
わたしにとっては 風景の一部で
気にも留めたことがなかった電車の走行の様子を
動画サイトに載せてくれた知らない人たち ありがとう
わたしにとっては 関心の外で
識別さえしたことのなかった工事車両の名前と働きを
絵本にしてくれた知らない人たち ありがとう
わたしにとっては 理解の範疇を超えていて
知ろうと試みることもなかった自動車技術の最前線を
モーターショーで見せてくれた知らない人たち ありがとう
子どもは赤ちゃんの頃
激しく夜泣きするその度に
電車の進入と発車の動画を眺めては 落ち着くことができました
子どもはかんしゃくのひどい時期
近くの工事現場にベビーカーで通っては
見えた車両を絵本で指差し そのときだけは笑えていました
子どもは今や幼児期も終えようとしています
ずいぶん流暢に言葉を操り
ものごとを具体的に捉えています
今年
楽しみにしていた東京モーターショーが中止になったのも
わかったうえで 諦めるくらい
物わかりよく 振る舞っています
そんな子どもは
未来のクルマをつくりたい、と話します
世の中にあるたくさんののりものを知り
これまでののりものの歴史を知ったから
これからののりものを考えて
つくる仕事に就きたいのと
わくわくする夢を語ります
とうとうここまで走って来られた、とわたしは安堵する思いです
どこまでも暗闇が続くように思われた 孤独な子育ての時代
知らない人たちの見せてくれた世界に
わたしたちは心を救われました
だから
ここに繋がるすべての人に
すべての営みに
心から、ありがとう
あなたのおかげで 今があり
あなたのおかげで 未来があります
“いっしょに未来のクルマに乗りましょね”
子どもからの お誘いです
▼この詩はこちらに収録しています▼
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