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【東北研修④】仙台・勝山酒造見学


今回、伊達家400年の歴史を誇る勝山酒造様を訪れ、酒造りや販売戦略について伺ってきました!
勝山酒造さんのホームページはこちら!

酒造というと、CMなどで見るような昔ながらの木造の小屋で、職人の手作業というイメージがありました。
しかし、勝山酒造の酒倉見学を通してメモに書いたワードは、「清潔」「現代的」「効率的」「機械化」「自動化」。最初のイメージとは真逆ともいえそうなものでした。クラフトマンシップと論理を両立した勝山酒造見学は、本当に多くのものに感銘を受けました。

生産工程の機械化と、こだわりの両立

日本酒の工程の序盤に、蒸米、米を蒸す作業があります。酒蔵に入って目の前の機械が、その蒸米作業を担っていました。蒸した米を運ぶ大変な作業を機械化することで、従業員の体の負担を大幅に減らせることが機械化の理由といいます。このように、酒蔵には至る所で合理的な自動機械化がなされていました。先進的で効率的なハイテク工場のような趣きで、イメージとかなり異なりました。
ただ、この機械化された工程を辿るうえで、伊澤社長のこだわりが至る所に詰まっていることを知りました。
強く感じたこととして、機械化することが良いことだ、というような前提はないということがあります。むやみな機械化をするのではなく、「本当に必要か?」「効率は本当に上がるのか?」「もし上がったとしても、効率の裏に捨てていものはないか?」という検討を重ねています。そしてもし機械化を決めたとしても、勝山のこだわりや生産体制、生産量から逆算し、機械の種類や入れ物の素材を選定していました。各工程の機械それぞれを説明してくださりましたが、全てに論理が通っており、「こだわりと論理がいっぱいに詰まっているため、各工程の設備の説明を聞くだけでも、勝山のお酒にはどのようなこだわりがあり、どこを強みとしているかがわかる」のではないかと思います。私は工学部の人間なので、ここまで作り手の意思と情熱を体現した造り場があるのかと感動しました

勝山酒造のしなやかさ

勝山酒造様は、「勝山の酒はこれだ」という理想を全社員で共通して持っています。生産性が上がるとしても、こだわりが失われるようであれば機械化することはない。ただ、機械化によりデータが取得でき、それが理想を追求するための良い道標になるようであればフルに活用していく、といった姿勢がありました。一番大事なこだわりの手綱はプライドを持って握り、現状に甘んじず、技術を活用しながら試行錯誤していく姿勢に、現代のクラフトマンシップの真髄を見た気がします。
そして、その両立を可能にする根底には、こだわりは貫きながらも、昔ながらが良いという固定観念が全くなく、常にアップデートしていく姿勢がありました。
こだわりの部分については、ワインと日本酒の違いを説明されていたのが印象的です。ワインは葡萄で決まり、作り手が関与できる部分が少ないが、日本酒は腕で決まる。米が悪い時こそ差が出る、言い訳せずその時こそ腕の見せ所だと、その年の米の特性に合わせた酒造りをするといいます。
そして、しなやかさについては大きく二つあると感じます。前述した工程での技術・機械活用のしなやかさ、戦略のしなやかさです。戦略のしなやかさについて、印象的だったことを書いていきます。

東大から、勝山を世界へ

勝山酒造は、NYをはじめとして10以上の国と地域にその販路を広げ、世界中で高評価を受けていますが、世界進出はつい最近のことだといいます。その入口となったのが、伊澤社長の娘さん、優花さんです。(なんと、東大OG!中退されていますが)優花さんは東大在学時にトビタテ!留学JAPAN一期生としてNYに飛び立ちます。現地のレストランで働きながら、飛び入り営業で勝山のお酒を一流レストランに認めさせ、流通網を一人で切り開き、そこをはじめとして現在に至るまで海外へのマーケットを広げています。その決断力や行動力もさることながら、ニューヨークの酒の流通、市場を見極め、ディストリビューターにアプローチするためには、一樹のレストランに認められることが、1番の近道と見抜くことや、販路を抑えた後の交渉など、自分と同年代であった優花さんの当時の働きに感嘆するばかりでした。また、各国での日本酒の位置づけや力関係をもとに、それぞれ違った販売戦略をとっていることも印象的でした。酒蔵と同様に、しなやかで強い戦略を駆使して海外で展開していく優花さんの話は、自分も頑張らないと!ととてもやる気になりましたし、ロールモデルとしての憧れにもなりました。そして現在されている企業を知り、家業を完全にそのまま継ぐ形ではなく、シナジーのあるところで独立してあらたに開拓していく姿勢に、とても魅力とロマンを感じました。

おわりに

今回は、歴史と伝統を背負う酒造りにおいて、クラフトマンシップと技術を論理でつなぐ、伝統産業のしなやかな時代適応という理想的な形を見ることができたこと、そして、あらたな世代が伝統を広げ、更新し、可能性を拡大していっているところを進行形で見ることができたこと、本当にありがたく良い研修でした。勝山酒造の皆様、繋いでくださった佐川先生、本当にありがとうございました。

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