[2デリ]8月9日(金)水産研究・教育機構 水産技術研究所八重山庁舎での研修
2023年8月から私たち地域活性化機構Diligentでは、石垣島にある、水産技術研究所で研修を行いました。
石垣島の水産技術研究所での研修体験
担当して下さったのは、東大OBである谷田さんです!石垣島で東大OBが研究なさっていることに驚きましたが、このようなご縁を頂きまして本当に有難いです。
水産研究所の説明
この水産技術研究所とは、国立研究開発法人であり、機構全体の研究としては
・水産資源 ・海洋環境 ・さけます ・気候変動 ・養殖 ・魚介類疫病
・水産工学 ・沿岸環境 生態系 ・内水面 ・食品衛生 ・水産加工
・海洋の環境保全 ・開発調査センターによる海洋水産資源の開発、利用
と多岐にわたります。
そして、この石垣島にある八重山庁舎では亜熱帯浅海海域の特性を生かして
・サンゴ再生技術 ・ナマコの生態飼育
・シャコガイ・アオウミガメによるウミショウブ(海藻)の食害対策
他には生産技術として
・スジアラという魚類の種苗、育種、出荷試験
などを行なっているそうです。
東大OBの谷田さんによる研究所の説明
谷田さんご自身の経歴は理科2類から農学部に進学し、大学院では農学部水圏生物環境学研究室に所属なさっていたそうです。その後、指導教官がかわったことから、博士課程では太平洋における窒素固定の栄養制限に関する研究を行なっていたとお聞きしました。
そして、現在は石垣島で、ナマコの研究を行なっていらっしゃいます。
ナマコとは?海の中にいる黒くてブヨブヨした大きなコッペパンのような生物という印象がありますが、ナマコについて詳しくご説明を頂けました。
ナマコについて
まず、ナマコは食べ物として利用されていて、卵巣は珍味だそうです。かつてはナマコチャンプルーという料理もレストランで提供されめいたり、ナマコを砕いた粉を沖縄そばに混ぜていたりしたそうです。他には、石鹸に加工をしたり、ポケモンにもなまこのキャラクターがいたり、季語をナマコとして俳句を詠んだ本などもあるそうです!
外国産のなまこは200円程度で売られていますが、国産のなまこは2275円と非常に高いことに驚きました。江戸時代は沖縄から中国に向けて重要な輸出品だったみたいで、俵物三品に
・ナマコ
・鮑
・フカヒレ
と記載がありました。ナマコがいかに貴重であったことがわかります。
現在もナマコは中国で高級食材として利用されていまして、マナマコ(とげがあり)という種類は中国の北の方で食べられ、上海〜広東方面では熱帯ナマコをたべる習慣があるそうです。勉強になります。
世界で見ると、熱帯域ではナマコが乱獲傾向にあり、世界で60種類のナマコが食用にされているそうです。その中でもマナマコは全体の90%捕獲、食用にされています。
沖縄県では2010年代前半にナマコ類が乱獲されていました。最近は資源低下により自主休漁する漁協も多いと聞きました。現在ら、漁獲や取引の規制強化がなされ、ナマコは特定水産動植物に指定されています。確かに、ダイビングでナマコを見つけても、持って帰らず、そのままにするようにアナウンスがありました。
ナマコの生物学的な説明
そもそもナマコ自体はどんな生物なのかも、説明をして下さりました!
ナマコはウニと同じ五放射相称であり、お腹側に3本、背中側に2本あるそうです。また、有性生殖と無性生殖両方行う生物らしいです。
生活環は、プランクトンの期間と終生プランクトンがあり、繊毛でくるくる回転しながら泳ぎます。ウニと同様、体の肉の中に骨片があり、肉を溶かすと骨片が綺麗に出てくるそうです。
また、ナマコはカニ、ヒトデ、フエダチ、ベラに食べられるとお聞き驚きました。魚がナマコを食べるなんて、なんとも不思議です。よって、ナマコには防御機構が備わっており、ナマコから糸を出して捕食者にくっつくと取れなくなるみたいです。
海中では、海藻が光合成を行いますが、死ぬと細かく裁断されます。それをナマコが食べる仕組みになっているので、ナマコがいることで、海草の成長が早くなると聞きました。濃密な植物プランクトンが多いところだと生育できるそうです。
石垣島の川平湾では、「アリー効果の推定モデル」という研究をなさっているそうですが、タグをナマコにつけて記録していると聞きました。どうして川平湾?と思い質問したところ、親のナマコがたくさんいるのが川平湾だそうです。他には、赤土が流れていて川平湾に溜まっているということも言われているらしいです。
研究施設での室内実験では、放卵放精による受精を調べているとお聞きしました。
海外研究も行っているそうで、ソロモン諸島のガダルカナル島ではナマコ資源管理プロジェクトが行われていることを教えて下さりました。
このような離島では、保存輸送のインフラが整っていないのですが、ナマコは取った後に茹でて保存がしやすいから重宝され、ナマコの経済的需要性が高いからだそうです。現地では天然採苗試験として、自然の天然ナマコを集めているらしく、集める手段として、ココナッツ繊維で作った網を使っていることも教えて下さりました、非常に興味深かったです。
どうしてナマコの研究を??
これは、世界や日本や乱獲が進んでいた中で、資源をどう管理していくか、という課題に対して取り組んで欲しいという要望があったからだそうです。地域のニーズを受けて行う研究もあるんですね。また、ナマコは集めやすいので研究に適しているそうです。
他方、研究者側から研究内容を提案もすることがあるそうで、研究内容を官公庁に応募し、その後採択されれば、水産省などからの依頼があるそうです。また、文科省の科研費採択にも応募しているそうで、私たちは研究者としての生き方を知らないことが多く、非常に参考になりました。
キャリアについての質問
東大OBの谷田さんに、研究者志望の学生から様々な質問が飛び交いました。(人生相談の場になっていました、谷田さんには本当に感謝です)
なぜ、博士課程の研究をずっと続けれらないのか?
博士をとっても、研究室に継続的にいられる人は本当に少ないらしく、ポスドクとして点々としながら職をみつけないといけないと聞きました。東大の研究室でそのまま残れている人は2名位らしく、都道府県にある水産研究場などで新たに研究をする進路があるそうです。しかし、大学では、先生は授業もあって忙しく、学生の面倒も見ないといけません。その点、国立の研究施設は個人で研究できるところが魅力的だと思いました。国の研究施設での研究は、テーマが決まっていて申し込むシステムだそうです。研究施設での採用は水産省の試験を受けるものと近く、面接を受けて何をしたいかを聞かれるそうです。その後採用され、谷田さんは八重山配属になったとお聞きしました(羨ましいです)。
進路選択について
谷田さんは理科二類での入学でしたが、農学部に入りたいという希望があったそうですが、駒場での水産のオムニバスの授業があって、現場の生産関係に行きたい気持ちがあり、水産系の学科に進んだそうです。(駒場のオムニバス授業は様々な学科が知れて楽しいですよね)
デリジェントでも、活動中にこうして様々な人々のお話を伺い、メンバー間で語り合うことで新たな進路選択の場に立ち会うことがよくあるので感慨深いです。
施設見学
会議室でお話をお聞きした後は、施設の見学をさせていただきました!
石垣島での研究施設を拝見することができ、谷田さんの研究内容やキャリアの相談にも乗ってくださり、本当に素晴らしい機会でした。
谷田さん、本当にありがとうございました!また石垣島に行きます!
文責 会長
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