【詩】満月にはお月見をしよう

どこか行くんですか？

車の整備をしていたら
通りすがりの人に聞かれた

ええ、まあ

当たり障りのない答えを返す
鼻の頭をこすったから
黒くなっているかもしれない

つなぎの作業着に軍手
ちょっと油くさいかな

どこに行くんですか？

そのへんをぐるっとドライブするだけですよ
やっぱり当たり障りのない答えを返す

その割には念入りに車を調べてる
この後、自分で洗車もする予定
だけど、そんなこと相手には言わない

良いご旅行を

やっと立ち去った相手を見送って
真昼の空を見上げる

「満月には間に合うぞ」

雲の向こうに青空
その向こうには漆黒の闇
あちこちに光る星たちの合間を走ろう

整備したばかりのこの車で
洗ってぴかぴかになったこの車で
光る星たちの合間を走ろう

誰も知らない小さな星
そこまで来たら
あなたが待ってる
お団子とススキを供えて

漆黒の闇
たまに流れる星
静かに暗い
またたく星たち

宇宙からお月見をするのだ

宇宙のあちこちを走り回って
夜明けには地球に戻ろう
夜明け前の空をドライブするのも良いかもね

「満月までに間に合うぞ」